朝日中央綜合法律経済事務所グループ

非上場会社株式換価・評価

1 あらまし
 非上場会社の株式を換価する場合、上場会社や店頭登録会社の株式のように公開マーケットの成立している株式と異なり、個別に買主を探し出す必要があります。この場合、非上場会社の株式の買手情報を広い角度で豊富に持っていること、あるいは、これを集めることができることが非常に重要です。朝日中央綜合法律経済事務所グループは、非上場会社株式の換価業務を多く取扱い、広い角度で多方面からの買手情報を保有し、また、これを集めることができます。また、非上場会社の大多数が、定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の規定を置いています。非上場会社のこのような譲渡制限付き株式は、取締役会の承認がなければ、自由に譲渡することが認められない一方、取締役会が承認しない場合には、取締役会が買受人を指定し、譲渡株主とその買受人との間で株式売買価格の折り合いがつかない場合には裁判所が商事非訟手続によって売買価格を決定するという手続が設けられています。
 このように、非上場会社の譲渡制限付き株式であっても、当該株式を適正価格で譲渡することが制度的に保障されています。以上でおわかりのように、非上場会社の株式の換価は、買手情報を広い角度で多方面から集めることが重要である一方、常に裁判所における商事非訟手続を念頭において進めることが必要な業務です。
 
〈非上場会社株式の換価の流れ〉

2 手続の全体の流れ
   
(1) 買受人の探査
 非上場会社株式には、公開マーケットが存在しませんので、適切な株式買受希望者を個別に探査する必要があり、広い角度で多方面から最適の買手情報を集めることが重要です。
 次に、買受希望者との売買交渉が必要となりますが、このような交渉の前提として秘密保持契約等を締結するのが一般です。
   
(2) 譲渡承認請求、買受人指定請求
 譲渡制限付き株式を譲渡しようとする株主は、会社に対し、特定の買受人への譲渡を承認するか、承認しない場合には他に買受人を指定するよう請求を行います。
   
(3) 会社が譲渡を承認する場合
 譲渡しようとする株主は、当初の買受人と株式売買手続をしていくことになります。この場合譲渡株式の価値を裏付ける説得力ある評価資料を迅速に作成することが有利に交渉をすすめるために不可欠です。売主が少数株主の場合、評価資料の入手のため法律手続を取る必要のある場合も少くありません。また会社の所有する特許権などの簿外資産の評価等各種資産の評価のノウハウも重要です。
   
(4) 会社が譲渡を承認しない場合
 株式の譲渡を承認しない場合、取締役会は他の買受人を指定し、会社は2週間以内に書面をもって、譲渡を承認しないこと及び指定買受人を譲渡しようとする株主に通知しなければなりません。取締役会は、会社自身を買受人に指定することも可能ですが、この場合、譲渡不承認の通知の日から30日以内に株主総会の特別決議による承認を得なければなりません。
 これらの手続を怠ると、譲渡を承認したものとみなされます。
   
(5) 指定買受人の売渡請求
 取締役会により指定された買受人は、譲渡不承認通知の日より10日以内に譲渡株主に対し、売渡請求をしなければなりませんが、売渡請求をする場合には、指定買受人は、その会社の帳簿上の純資産額を基にして計算した額を法務局に供託しなければなりません。
 一方、指定買受人から売渡請求を受けた譲渡株主は、遅滞なく株券を法務局に供託しなければなりません。
   
(6) 売買価格決定手続
 譲渡株主と指定買受人との間で、売買価格の協議が調わない場合、当事者は指定買受人がした売渡請求の日から20日以内に裁判所に対し、売買価格の決定を請求することができます。
 裁判所は、当事者双方の意見を聴取した上で、「会社の資産状態その他一切の事情」を考慮して、適正な譲渡価額を決定します。
 したがって、譲渡人は、自己の希望する価格での譲渡を実現するために自己の価額が理論上根拠のある金額であることを積極的に裁判所に立証していくことが必要となります。このためには、説得力のある正しい主張を行い、また権威ある株価鑑定書、意見書を作成し、資料として提出することなどが必要です。

3 株式の価格の算定方式

 株式の価格の算定方式として、純資産価額方式、収益方式、配当還元方式、類似会社(又は類似業種)比準方式、取引先例価格方式、併用方式などがあります。
   
(1) 純資産価額方式
   
(イ)   純資産価額方式は、企業のストックとしての純資産に着目して、企業の価値及び株価等を算定する方式です。この方式による評価は企業や株式の静的価値を表すものであるといえます。
  商法204条の4第2項は「前項の決定を為すには裁判所は第204条の3第1項の請求の時に於ける会社の資産状態其の他一切の事情を斟酌することを要す」と規定しており、譲渡制限株式の売買価格を決定するに当たっては第一に考慮されるべき方式であると考えられます。但し、この方式は、企業の静的評価であり、企業評価に重要な収益力が反映されないという欠点があります。
  純資産価額方式には、簿価純資産価額方式と時価純資産価額方式があり、後者はさらに、再調達時価純資産方式と、清算処分時価純資産方式とに区分されます。
   
(ロ)   簿価純資産価額方式は、時価の算出が困難な場合などにおいて、計算が簡便であるとの利点がありますが、簿価純資産が名目資産であるため、地価の高騰などによる名目資本と実質資本の乖離が大きい場合には、適正な株価算定を行うことはできないとされています。
   
(ハ)   清算処分時価純資産方式は、処分価額を用いる方式で清算処分することを前提としているので、解散を前提としている会社に適する算定方式であるといえます。
   
(ニ)   再調達時価純資産方式は、同一の事業の継続を前提としており、現時点で事業を開始した場合と同様の価値を算定する方式です。
   
  また、一般に支配株主等が取得する株式等の評価において考慮される方法です。
   
(2) 収益方式
   
(イ)   収益方式は、 企業 のフローとしての収益又は利益に着目して、企業の評価及び株価等を評価する方法です。この方式による評価は企業の動的価値を現し、継続企業を評価する場合、理論的には最も優れた方法であるといえます。その反面、鑑定評価額が将来収益に全面的に依存しており、その根拠が不確実となる欠点が指摘されています。
  収益方式は、収益を利益として展開する収益還元方式と収益を資金上の収入として展開するDCF法とに分類されます。
   
(ロ)   収益還元方式は、評価対象会社が将来生み出す収益の現在価値に着目した算定手法です。収益還元方式は、過去の決算数値等から評価対象会社の将来予想収益を推計し、その将来予想収益を資本還元率で現在価値に割り戻すことにより、価格算定を行います。
  この方式は、経営支配株主又は経営参加株主にとって適当な算定方式であるとされています。
   
(ハ)   DCF法は、企業が将来獲得するであろうキャッシュフロー(現金収支)を資本還元率で現在価値に還元する方式です。しかし、適正なDCF法に基づく評価を行うためには、その前提となる事業計画が合理的に算定され、客観的に検証可能であることが非常に重要な要素となります。したがって、事業計画が恣意的な要素や証明可能性の低い前提を含んでいる場合には、妥当な算定を行うことは困難であるといえます。
   
(3) 配当還元方式
  配当還元方式は、将来期待される配当金額に基づいて株価を算定する方式です。
  株式の価値を擬制資本と見る点において、基本的に収益還元法と同じ発想に立つと いえますが、収益還元方式が会社全体の利益を自己の所得と見る支配株主としての視点に立つのに対し、配当還元方式は、会社の利益ではなく、自己の受取る配当金だけを自己の所得と見る 少数 株主としての視点に立つ算定方式です。
  したがって、配当還元方式は、一般に売買当事者が配当のみを期待する一般投資家である場合に、最も理論的な方法であるとされています。
   
(4) 類似会社(又は類似業種)比準方式
 業種、規模等が類似する公開会社(類似会社)又は、同じ業種の公開会社の平均とを比較して、会社の価値及び株価を鑑定する方式です。しかし、類似性のある会社又は業種の選定が困難な場合が多く、また、類似性の検証が客観的に困難であるとの欠点があります。
   
(5) 取引先例価格方式
 取引先例価格は、過去の取引事例を基にして株価を算定する方法ですが、市場性のない株式の取引先例が株式の交換価値を適正に反映していることは稀であるとの指摘がなされています。
   
(6) 併用方式
  併用方式は、上述した各種方式を一定のルールで組み合わせて、会社の価値及び株価等を 鑑定 する方式です。株式の有する多面的要素を算定に取り入れるものであり、裁判実務上主流となっている方式です。
  支配株式の評価にあっては、時価純資産方式と収益還元方式を加重平均して株価を算定するのが一般的です。

4 裁判所による売買価格決定の実情
 商法においては、価額算定に関する具体的な規定はありませんので、会計理論上で公正妥当な金額として算定される金額をベースとして、案件の実情に応じて決定されています。
 会計理論上の株価算定方法には、主に時価純資産方式、収益還元方式、DCF方式、配当還元方式、比準方式(類似業種比準方式、類似会社比準方式、取引事例法)などがありますが、当該株式譲渡が経営権の移動を伴う場合には純資産方式、収益方式を単独又は併用して採用することが妥当とされています。一方、売買当事者が配当のみを期待する一般投資家である場合には、配当還元方式が妥当とされています。


5 朝日中央綜合法律経済事務所グループにおけるノウハウと実績
 近年、金庫株制度などの商法改正の流れを受け、非上場会社株式の換価・評価に関する事件は急激に増加しており、朝日中央綜合法律経済事務所グループにおいても毎年多数の事件を取扱っております。任意換価あるいは商事非訟のいずれの場合においても、この種の事件を解決するためには、豊富な経験とノウハウ、様々な分野へのネットワーク(株式買受人選定のための情報入手、株式評価額決定に関する各種専門分野の権威ある鑑定書、意見書の入手など)が必要不可欠となります。
 当グループは、広い角度で多方面から最適の買手情報を集めることができるとともに、この分野に関する高度なノウハウを蓄積しております。同時に今までに取扱った数多くの事件を通して、各分野における最も権威ある専門家、あるいは学者の方々との太いネットワークを構築しております。