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取引先の倒産と債権者としての初動

第1 はじめに

 昨今のコロナウイスル感染症の影響等により,取引先が突然倒産してしまう事態も十分に想定されます。債権者たる経営者の皆様は,取引先に対して有する未回収債権の回収の可否及び方法について強い関心があるかと思います。そこで本稿では,このような事態に直面した債権者が取るべき初動についてご説明いたします。
 なお,一口に倒産といっても,破産以外に特別清算,会社更生,民事再生などの手続があります(トピックス「会社の倒産・再建手続の選択に関する考慮要素」を参照ください)が,本稿では取引先が破産した場合を前提にご説明します。

第2 連帯保証人への請求

 連帯保証債務と主債務とは別個独立の債務であるため,主債務者が破産した場合でも,債権者は連帯保証人に対して取引先に対する未回収の債権の支払を請求することができます。
 また,仮に主債務について分割弁済の約定があった場合でも,主債務者の破産は期限の利益の喪失事由(民法137条1号)であり,附従性によりその効果は連帯保証人にも及ぶ(同法457条1項)ため,債権者は連帯保証人に対して一括返済を求めることができます。
 さらに,主債務者が免責許可決定を受け支払義務を免除された場合(破産法253条1項本文)でも,支払免除の効果は連帯保証人には影響しないため,債権者は連帯保証人に未回収債権の支払を求めることができます(同法253条2項)。

第3 担保権の実行

 

1 破産者所有の不動産に担保権を有している場合

  

 債権者が破産者所有の不動産に抵当権等の担保権を有している場合,当該担保権は破産手続上の別除権に該当するため,債権者は破産手続によることなく当該担保権を実行することができます(破産法65条1項)。
 具体的には,目的物である不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対し,当該目的物の競売の申立てを行うことになります(民事執行法44条1項)。
 ただし,債権者の有する担保権が後順位である場合,落札予定価格が低いことから先順位の担保権者への配分により後順位の債権者との関係では余剰がないと裁判所が判断した場合には,当該申立が取り消されてしまいます(民事執行法63条1項,同法129条)。
 なお,別除権者は,「その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の額についてのみ,破産債権者としてその権利を行使することができる」とされています(破産法108条1項本文)。

 

2 物上保証の設定を受けている場合

 債権者が,破産者以外の第三者が有する不動産に抵当権の設定をうけている場合(物上保証),当該債権者の有する担保権は破産手続上の別除権とは扱われません。なぜなら,当該第三者に対しては,破産手続とは無関係に当該不動産を競売に掛けて債権回収を図ることができるためです。
 したがって,この場合は単なる一般破産債権者として,破産手続開始決定時の債権額で債権届出をすることになります。

第4 相殺

 

1 一般論

  

 相殺とは,相互に同種の目的の債務を負担しており,双方の債務が弁済期にある場合に,当事者の一方が自己の相手方に対する債権と相手方に対して負担している債務とを対当額で消滅させることをいいます(民法505条1項本文)。
 そして,破産法においては,相殺の担保的機能を保護するという趣旨から,破産者に対し債務を有する破産債権者が,相殺手続を利用することで破産手続(配当手続)によらずに自己の債権を回収することを認めています(破産法67条1項)。
 相殺をすることができる債権・債務を有する破産債権者は,破産手続が終了するまで相殺をすることができ,相殺の結果,破産債権者の破産者に対する債権(自働債権)と破産者に対する債務(受働債権)は対当額で消滅することになります。
 ただ,自働債権が多額であれば差額分は破産債権として残りますので債権届出をする必要があり,反対に,受働債権が多額の場合であれば差額分は破産財団に対する債務として,破産管財人に支払う必要があります。

 

2 破産手続開始と自働債権の弁済期

 破産手続開始時に自働債権の弁済期が未到来であっても,破産手続が開始されると弁済期が到来したとみなされます(破産法103条3項)。ただ,自働債権が確定期限付自働債権である場合,相殺に供することができるのは額面額から破産手続開始時から本来の弁済期までの中間利息を控除した金額となります(破産法68条2項)。

 

3 破産手続開始と受働債権の弁済期

  

 破産手続開始時に受働債権の弁済期が未到来もしくは停止条件付債務であって当該条件が成就していない場合,期限の利益や条件不成就の利益を放棄して(民法136条2項本文)相殺をすることができます(破産法67条2項)。最高裁判例もこのような場合に「その債務が…期限付である場合には,特段の事情のない限り,期限の利益を放棄したときだけでなく,破産宣告後にその期限が到来したときも,…その債務に対応する債権を受働債権とし,破産債権を自動債権として相殺することができる。また,その債務が破産宣告の時において停止条件付である場合には,停止条件不成就の利益を放棄したときだけでなく,破産宣告後に停止条件が成就したときにも,同様に相殺することができる」と判示しています(最高裁平成17年1月17日)。

第5 結語

  

 以上のとおり,上記の方法により取引先に対する未回収債権を回収できる可能性があります。
 当グループでは,倒産に関する豊富な経験とノウハウを有しておりますので,最高の対策・解決策をご提供することができます。
 詳しいお話をお聞きになりたい方は,お気軽に弁護士法人朝日中央綜合法律事務所の弁護士にご相談下さい。

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