旧来の借地借家法の正当事由による解約制限は1941年戦時緊急立法として導入され、 戦時下及びこれに続く混乱の時代に一定の役割を果たしました。 しかし、 当時と住宅・経済事情が全く異なる今日においては、 借主の保護に傾きすぎており、 このことがむしろ健全な賃貸住宅の供給を阻害しています。 また、 借主にとってもライフスタイルに応じた円滑な借り替えを阻害し、 望む時に望むタイプの住居が得られることを阻害しています。 市場の機能を有効に働かせ、 それぞれに特徴があり、 ゆとりある賃貸物件が市場に豊富に供給されるよう、 供給阻害の要因を取り払う必要があります。 このような賃貸市場の歪みを是正するために、 定期借家法は立法化されましたが、 この定期借家権の成立により、 賃貸物件の供給、 需要の状況が正常化され、 賃貸物件の供給者や物件の多様化がすすむとともに、 需要者も多様化し、 賃貸物件に対する意識も大きく変化してきています。
貸主側の変化として、
などが挙げられます。
又、 借主側の変化として、
などがあります。 以下、 それぞれの項目について説明します。
定期借家権の対象となる借家の供給が増加すると予想され、 家賃は低下傾向になると予想されます。 貸主側としても、 明渡しコストや長期間の賃貸に伴う賃料抑制の心配がなくなりますので、 今までの賃貸物件より低賃料で貸して十分採算が合うことになります。 このため借主としては今までより良質の賃貸物件を割安の賃料で借りることができるというメリットが発生します。
定期借家権の対象となる借家の場合、 自由な市場競争が可能になるため様々な賃貸物件が供給され、 それぞれの借主のニーズに合わせた賃貸物件を選ぶことができるようになると予想されます。
例えば、
などです。
今後、 これ以外にも多くの特徴を持った住宅が供給されると予想されます。
旧来の借地借家法のもとでは、 例えばファミリー系のように10年を超えるような長期間、 特定の借主が借り続けることは、 貸主側としてデメリットが多く、 従ってそのような借主向けの住宅がほとんど民間で供給されていないということでしたが、 定期借家法の対象となる借家では、 一定の契約期間の終了する度に条件を決め直して再契約するか、 退去するかということになりましたので、 貸主側の供給意欲が高まり、 広い賃貸住宅の供給が増加すると予想されています。 また、 自宅を賃貸に出す人が増えるため、 広い一戸建て住宅が賃貸物件として供給されると予想されます。
以上のように借主にとっても自由な競争原理が賃貸市場に持ち込まれることにより、 広い住宅を安い賃料で借りることができるようになりますが、 貸主側はこれと引き換えに再契約を拒否する法的な根拠を手に入れたことになり、 再契約の時に家賃などの賃貸条件の交渉が厳しくなることが予想されます。 しかし、 契約期間の長短についても、 賃料の水準にしても、 これからは市場原理が働くことになり、 一方だけが不利になるのではなく、 双方対等な立場で契約を結んでいくことになるわけです。 旧来の借地借家法では借主はいわば何も考えなくても保護されていましたが、 これからは十分に経済的常識を持ち、 賃貸市場の情報にも敏感になる必要があります。 逆に過保護のもとで結果的に大きな不利益を受けていたのも借主であり、 十分な知識と情報を持てば、 今後は自分のニーズにあったより快適な借家を見つけることができるようになります。