住宅政策

定期借家実務マニュアル

第5

定期借家の各方面への影響

集合写真

住宅政策

(1)

規制緩和の一環

定期借家権は住宅に関する規制緩和推進計画の一つとして浮上してきました。
借地借家法という社会的規制を撤廃することにより、 自由に立ち退きを行える制度を確立することを目的としています。
旧来の借地借家法のもとでは、 借家は健全な市場とは言えず、 大変に片寄った需要供給の形になっています。 借家の供給拡大、 市場の活性化のためには、 契約自由、 自由な取引に公共が不必要に関与すべきでなく、 価格メカニズムに委ねることが必要です。 この点で定期借家権は住宅に関する規制緩和の重要なステップと言えます。
(2)

住宅政策の方向性

戦後日本の住宅政策は、 低所得者及び中堅勤労者を対象とし、 公団・公庫等により大きな財政支出が行われてきました。 定期借家権が導入されますと、 中堅勤労者でも良質なファミリー賃貸住宅に入居することが可能となり、 公団・公庫等による住宅対策による財政支出が節約される可能性があります。 その節約された財政支出が低所得者のための公共住宅の建設や家賃補助の財源をつくりだしていくと予想されます。
(3)

現在契約し、 入居されている方に対するセーフティネット

セーフティネットとは、 「弱者保護」 という意味ですが、 定期借家権という制度が過去50年以上続いた旧来の借家の制度と全く違ったものになるため、 いわゆる 「社会的弱者」 と、 「定期借家権の意味・影響を十分理解できない借主」、 そして 「貸主に対して力関係の劣る借主」 が不利益を受けないように配慮されています。 具体的には、 「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」 の第8条により、 現在入居中の方が賃貸借を合意により終了しても、 当面は同一の建物を目的とする賃貸借をするときは定期借家契約にはなり変わりません。 つまり、 契約を解消し、 明渡しをしない限り、 定期借家契約にはならないこととされています。 なお、 この規定は4年後に見直しされることとなっています。
(4)

住宅弱者保護に関する決議

参院国土・環境委員会で採択された 「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法に対する付帯決議」 の要旨は次の通りです。
(イ)
国は財政、 税制、 政策金融の分野で、 これまで以上に賃貸住宅に配慮した施策を展開する。
(ロ)
定期建物賃貸借の内容に関して、 十分な周知徹底を早急に実施する。
(ハ)
住宅建設五カ年計画の策定に当たって、 公共賃貸住宅などの具体的な居住水準目標を設定し、 その計画的な達成に努める。
(ニ)
賃貸建物の性能を宅地建物取引業法上、 説明すべき重要事項として追加することを検討する。
(ホ)
従前の賃貸借か定期賃貸借かの種別、 家賃情報などの提供、 各種の相談が可能となる体制を整備。
(ヘ)
国の主導で標準約款を作成。 賃借人に対する書面の交付・説明義務に関し、 その事実を証明する書類を契約書に添付することなどを検討し、 賃借人が不当な不利益を受けないよう万全の措置を講じる。
(ト)
賃貸借に伴う紛争の早期解決のため、 国民生活センター、 自治体の住宅相談窓口、 消費者センターでの対応を強化。 総合的な紛争処理機関の在り方について検討する。
(チ)
低所得高齢者、 障害者、 病気入院者などが、 定期賃貸借で不当な差別を受けることのないよう、 特段の配慮をする。 公共賃貸住宅では、 これらの者の入居がより容易になるような制度運用を図る。