ライフスタイル

定期借家実務マニュアル

第5

定期借家の各方面への影響

集合写真

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定期借家権制度の導入により、 賃貸住宅の数、 種類、 賃料は非常にバラエティに富んだものが供給されるようになりますので、 借主のそれぞれのライフステージに合致した賃貸物件の選択が可能となり、 借家に居住する人のライフスタイルは今後、 大幅に変わると予想されます。 具体的には、
(1)
持ち家重視から賃貸指向へ
(2)
自己の持ち家を賃貸物件に提供する動きの加速
(3)
自宅の買換えにおける定期借家権の活用

などがあります。
以下、 それぞれについて説明します。
(1)

持ち家重視から賃貸指向へ

1住宅の(1)貸主側の変化の(ヘ)で示したように、 持ち家は簡単に売却して新たな物件に買い換えることができないため、 どうしても居住者が不便・不利を承知の上で住み続けることになりますが、 定期借家の場合は、 住み替えが非常に簡単なためにその人のライフステージ、 ライフスタイルに合わせてどんどん住居を変えてゆくことができます。
例えば、
(イ)
転勤により一時的に家を借りたい人
(ロ)
家族に介護を必要とする人がいて、 より設備の整った家に住まなければならない人
(ハ)
高齢になったため 「駅近」 などの生活のし易い場所に移りたい人
(ニ)
自然豊かな郊外に一時的に住みたい人
(ホ)
多人数なので、 広い家に住みたい人

など、 それぞれの借主のニーズに合わせた賃貸住宅が供給されることになります。
このため、 持ち家のデメリットである多額の借入金を長期間負うことや、 簡単に転居できないことが問題となり、 賃貸指向が強くなると予想されます。
このように、 定期借家権が普及すると、 貸家市場は活発となり、 貸家の供給が増え、 借り手市場となることが予想され、 借り手のライフスタイルやニーズに合った物件が市場に出回り、 いわゆるコンセプトマンション (例えばペットが飼えたり、 防音設備のあるマンションや高齢者向けマンションなど) が増えることと予想されます。
(2)

自己の持ち家を賃貸物件に提供する動きの加速

現在までの持ち家重視の住宅事情が変化してゆく中で、 既存の持ち家の所有者もライフステージやライフスタイルの変化により、 その時々の状況に合わせた住居を求めるようになり、 自分が他の物件の借主となるとともに、 自己の持ち家を賃貸物件に提供する動きが加速されます。 具体的には、
(イ)
転勤により自宅を空けなければならない人
(ロ)
家族に介護を必要とする人がいて、 より設備の整った家に住まなければならない人
(ハ)
高齢になったため 「駅近」 など生活し易い場所に移りたい人
(ニ)
自然豊かな郊外に一時的に住みたい人
(ホ)
相続により親の自宅を取得したが、 自分にも持ち家があるため、 親の自宅が空屋になった人
(ヘ)
セカンドハウスや別荘を一時的に貸したい人

などが考えられます。
確かに、 自宅を売却してしまえば事は簡単ですが、 当然のこととして売却すればその家は手渡すことになります。 これは大切な財産を処分してしまうことになるわけです。
また、 親の自宅なども、 自分が生まれ育った家でもあり、 手渡すのは忍びない、 などの理由により、 自宅を売却することに踏みきれる人は少ないと思います。
このように、 「従来の借家法による契約で貸すのはダメ」 「売却するのもダメ」 という人が、 定期借家権制度に基づいて自宅やセカンドハウス、 別荘を積極的に貸し、 自分のライフスタイルに合った生活をする人が増えていくことが予想されます。
(3)

自宅の買換えにおける定期借家権の活用

定期借家権制度の導入は自宅の売り方、 買い方にも影響を与えると考えられます。 それは自宅の試用販売という方法が普及するのではないかということです。
特に自宅を買う側にとって、 仮に1年間試用期間を設けてもらって、 気に入れば買うということが出来れば、 自分にとって本当に必要なものを見極めて購入できますので、 メリットが大きいと言えます。 もちろん試用期間は家賃を支払うことになりますが、 それでも1年間試しに住めば、 そこの生活環境などが自分に合っているかどうかが確認でき、 納得のうえ購入できることになります。
また、 自宅を売却して、 次の住宅を買換える場合、 購入物件が先に見つかって、 売却先が見つからない場合がよく発生しますが、 この場合資金的な負担が厳しくなるため、 せっかく良い物件が見つかっても断念せざるを得ないということがあります。 ところが、 定期借家権制度のもとでは、 売却予定物件を限られた期間だけ運用できますので、 購入物件が見つかった時点で、 元の自宅は定期借家で短期間運用し、 最良のタイミングで売却をすることが可能となります。
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