⑴
文書管理と記録保存の目的は、次の2点にあります。
本項では、主に(ロ)の製造物責任訴訟対策の面から文書管理と記録保存について説明します。
(イ)
製品安全技術のノウハウの蓄積
(ロ)
製造物責任事故発生に当たっての訴訟対策
本項では、主に(ロ)の製造物責任訴訟対策の面から文書管理と記録保存について説明します。
⑵
文書管理と記録保存の必要性
製造業者が製造物責任の追及をうけたとき、製品の開発、設計、製造に関する記録はその製品に欠陥がないこと、製造業者に製造物責任が存しないことを証明する際、具体的には原告の欠陥の証明に対する反証を為すに当たり、重要な役割を果たします。もし、文書管理や記録の保存が適正になされていなければ、製造業者による反証は極めて困難なものとならざるをえません。また、これらの記録は原告による証拠保全や文書提出命令の対象となる可能性があります。この場合、もし文書相互間に矛盾があったり、保存されてしかるべき記録がなかったりすると、被告は訴訟上不利になる可能性があります。このため、文書管理と記録保存が適正になされていることが製造物責任訴訟対策の面から大変重要であるといえます。
⑶
保存記録の範囲
保存すべき記録は、製品の企画、開発、設計、試験、製造、販売といったすべての段階の記録に及びます。とりわけ、製品の企画、開発、設計段階で潜在していた危険を危険分析により顕在化させ、それを除去、軽減した記録や、危険を除去、軽減できない見返りに、安全装置を付加した経過の記録などは、保存すべき記録のなかでも、極めて重要な記録といえます。
⑷
文書記録の保存期間
製造後、相当古くなり老朽化した製品についても製造物責任訴訟を提起されることもあります。したがって、記録の保存期間は、製品の耐用年数だけでなく、過去の製造物責任訴訟例などを参考に、その重要度に応じて決める必要があります。設計承認書、法定確認試験記録等の重要記録は、永久保存が望ましいといえます。
⑸
製造物責任訴訟に備えた文書管理、記録保存上の留意点
(イ)
保存記録については、作成段階から製造物責任対策担当部門によるチェックを受けることが大切です。
各種文書記録類は、将来自己に有利な証拠として裁判所に提出するため保存するものですが、保存記録がその用を果たしうる内容となっているか、担当部門による法的視点からのチェックを必要とするからです。また、逆に裁判所に証拠として原告側から提出させられる可能性もあり、誤解を与えたり、製品の欠陥を推定させたりする不適切な文言を保存記録からなくす必要があるからです。
各種文書記録類は、将来自己に有利な証拠として裁判所に提出するため保存するものですが、保存記録がその用を果たしうる内容となっているか、担当部門による法的視点からのチェックを必要とするからです。また、逆に裁判所に証拠として原告側から提出させられる可能性もあり、誤解を与えたり、製品の欠陥を推定させたりする不適切な文言を保存記録からなくす必要があるからです。
(ロ)
社内文書と社外文書(官庁に対する報告書等)の内容が矛盾しないよう文書管理をする必要があります。
訴訟になりますと、右のような矛盾点があれば、これを追及されることは必至です。とりわけ、製品の安全に関し、社内文書と社外文書との間に不一致があれば、訴訟上大きな不利益を招きます。
訴訟になりますと、右のような矛盾点があれば、これを追及されることは必至です。とりわけ、製品の安全に関し、社内文書と社外文書との間に不一致があれば、訴訟上大きな不利益を招きます。
(ハ)
製品の開発段階で問題点を指摘した試験報告は、その問題点を解決したという記録と一体にして保存する必要があります。
(ニ)
取扱説明書が改定、変更された場合には、そのつど、改定変更の箇所、日付、改定変更理由を記録として残しておく必要があります。
(ホ)
事故発生後に設計変更がなされた場合には、設計変更の理由書を残す必要がありますが、そこでは変更前の製品に欠陥があったから変更したとの無用の疑義を生じないよう配慮する必要があります。
(ヘ)
製品の開発、設計段階で数種の安全装置があるなかから特定の安全装置が選択されたという場合には、その選択の理由を記録に残しておく必要があります。
(ト)
ある製品が、予見可能な使用法では危険発生率が極めて小さいことを確認するテストデータなどの記録は、必ず残しておく必要があります。
文書管理と記録保存の目的