文書管理と記録保存の目的は、次の2点にあります。
本項では、主に(ロ)の製造物責任訴訟対策の面から文書管理と記録保存について説明します。
製造業者が製造物責任の追及をうけたとき、製品の開発、設計、製造に関する記録はその製品に欠陥がないこと、製造業者に製造物責任が存しないことを証明する際、具体的には原告の欠陥の証明に対する反証を為すに当たり、重要な役割を果たします。もし、文書管理や記録の保存が適正になされていなければ、製造業者による反証は極めて困難なものとならざるをえません。また、これらの記録は原告による証拠保全や文書提出命令の対象となる可能性があります。この場合、もし文書相互間に矛盾があったり、保存されてしかるべき記録がなかったりすると、被告は訴訟上不利になる可能性があります。このため、文書管理と記録保存が適正になされていることが製造物責任訴訟対策の面から大変重要であるといえます。
保存すべき記録は、製品の企画、開発、設計、試験、製造、販売といったすべての段階の記録に及びます。とりわけ、製品の企画、開発、設計段階で潜在していた危険を危険分析により顕在化させ、それを除去、軽減した記録や、危険を除去、軽減できない見返りに、安全装置を付加した経過の記録などは、保存すべき記録のなかでも、極めて重要な記録といえます。
製造後、相当古くなり老朽化した製品についても製造物責任訴訟を提起されることもあります。したがって、記録の保存期間は、製品の耐用年数だけでなく、過去の製造物責任訴訟例などを参考に、その重要度に応じて決める必要があります。設計承認書、法定確認試験記録等の重要記録は、永久保存が望ましいといえます。