事業後継者が存在しない場合

事業承継マニュアル

第7章

M&Aと事業承継

集合写真
第2

事業承継におけるM&Aの活用

2

事業後継者が存在しない場合

(1)
MBO(マネジメント・バイ・アウト)
(イ)
概要
非上場会社のオーナーで事業後継者がいない場合、株式譲渡などの方法で外部の第三者に経営権を譲渡する方法があります。しかし、外部の第三者に経営を譲渡する場合、従業員や取引先などに与える影響は非常に大きく、スムーズに事業の承継を行うことは事実上困難と考えられます。このようなケースにおいて、会社の現経営陣(取締役等)に当該株式を譲渡し、経営を承継していく方法としてマネジメント・バイ・アウト(MBO)が考えられます。MBOの場合には、外部の第三者が経営を承継する場合と異なり、現経営陣が事業を承継することになることから、会社内部及び外部への影響も比較的少なく、スムースな事業承継が可能となります。
(ロ)
方法
通常の場合、現経営陣とベンチャーキャピタルが共同出資で持株会社を設立し、金融機関等からの借入等と合わせて株式の取得資金を調達します。オーナーから当該持株会社が株式を取得した後、当該非上場会社と持株会社を合併します。
(ハ)
留意点
現経営陣と共同で株式を取得するパートナーとして、信頼できるベンチャーキャピタルを選定する必要があります。
(2)
事業転換のためのM&A
(イ)
概要
経営者の相続人としての後継者は存在するものの、全く違った事業を行っていたり、あるいは全く事業を引き継ぐつもりはない場合など、いわゆる事業を承継する事業後継者が存在しないケースにおいては、今まで築いてきた事業を全て売却し現金化した後、不動産事業等に事業転換した上で後継者に承継していく場合があります。これが、事業承継を目的とした事業転換のためのM&Aであります。
(ロ)
方法
一般的な事業転換の方法としては、主に以下の2つの方法が考えられます。
(a)
会社はそのまま残し、営業譲渡等の方法で事業の全部を譲渡し、現金化する方法
(b)
会社そのものを売却(株式売却)し、現金化した後、改めて新たな事業目的の会社を設立する方法
(ハ)
留意点
上記(ロ)(a)の方法の場合、譲渡代金は当該法人に入り、当該事業の売却による含み益については、当該法人において法人税の課税が発生します。
一方、上記(ロ)(b)の方法の場合、譲渡代金は当該法人の株主に入り、当該法人の株主が経営者個人である場合には、株式の譲渡益課税として所得税が課税されることになります。
(3)
上場会社との株式交換・合併
(イ)
概要
非上場会社のオーナーで事業後継者がいない場合、当該非上場会社を継続して支配していくという目的が事実上困難となるため、当該非上場株式を出来る限り現金化し易い形態にしておくことを検討する必要があります。その一つの方法が株式公開です。株式公開については、第6章において詳しく説明しておりますが、非上場会社が単独で上場を目指すのは通常、多くの時間と労力を必要とします。単独では難しい株式公開を、出来る限り時間と労力をかけずに株式公開と同様の効果をもたらす方法として、上場会社との合併あるいは株式交換等のスキームが考えられます。
オーナーが経営する非上場会社を上場会社と合併あるいは株式交換等を行うことによりオーナーが持っている非上場株式を上場株式に転換することが可能となります。
また、当該非上場会社は、上場会社の一部あるいは子会社として安定的な経営が期待できます。
(ロ)
方法
(a)
上場会社との合併
オーナーが経営する非上場会社を被合併会社、上場会社を合併会社とする吸収合併を行います。当該非上場会社は上場会社に吸収合併され完全に消滅することになり、あわせてオーナーが所有していた非上場会社株式については合併比率に基づき、上場会社株式に転換されることになります。
(b)
上場会社との株式交換等
オーナーが所有する非上場会社の株式を上場会社に移転し、それと交換に上場会社の株式を取得する方法により当該非上場会社を上場会社の子会社化します。
上記(イ)合併の場合と異なり、当該非上場会社はそのまま上場会社の子会社として存続することになり、オーナーが所有していた非上場会社株式については交換比率に基づき、上場会社株式に転換されることになります。
(c)
留意点
上場会社の合併・株式交換等については、税法上の適格合併あるいは株式交換等の課税の繰延の特例要件に該当する場合には、含み益課税等の課税関係は発生いたしません。
また、商法、証券取引法等に定められた手続きに基づき実行する必要があります。

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