株式交換の知識9|株式交換の会計実務1

企業法務ガイド|株式交換

第2編

株式交換の会計実務

第1

株式交換の会計処理

1

株式交換完全子会社の会計処理

(1)
概要
株式交換においては、完全子会社となる会社が他の会社(完全親会社となる会社)に発行済株式の全部を取得させ、その対価として、完全親会社の株式その他の資産が完全親会社から完全子会社となる会社の株主に交付されます。
その交換対価の取得は、完全子会社ではなくその株主に生じた事象ですので、完全子会社の会計処理上は関係ありません。完全子会社側で必要となる会計処理は、発行していた新株予約権及び新株予約権付社債の消滅に関する処理、そして自己株に交換対価を割り当てられた場合の処理となります。
(2)
新株予約権の消滅
『完全子会社化』、つまり当該会社の全株式を親会社が保有するという株式交換の目的から、株式交換契約の中で「完全子会社が発行している新株予約権及び新株予約権付社債は消滅する」と定めるのが通常です。
新株予約権、及び新株予約権付社債が消滅することにより、当該会社はその負担を免れることになり、その帳簿価額を減額します。当該免除益は課税所得となるため、その税効果調整相当額を控除した部分が利益となります。
(3)
自己株式に交換対価を割り当てられた場合
株式交換により、当該自己株式が完全親会社に移転するので、それについて「自己株式処分」と同様の処理を行います。受け取った親会社株式の時価と、渡した自己株式の帳簿価額の差額を、その他資本剰余金に加減します。
2

株式交換完全親会社の会計処理

(1)
概要
企業会計上、企業の組織再編は、「取得」、「持分の結合」、「共同支配企業の形成」、「共通支配下の取引」のいずれかに分類され、適用すべき会計処理が決定されます。
企業の結合が「取得」と判定された場合は、パーチェス法が適用され、被結合企業の資産・負債を時価で引き継ぐとともに、完全親会社が計上する完全子会社株式の取得原価は、「取得の対価+直接要した費用」であり、取得の対価は、対価として交付される現金、株式等の公正価値で評価されます。
企業の結合が「持分の結合」と判定された場合は、持分プーリング法が適用され、すべての結合当事企業の資産・負債及び資本の適正な帳簿価額を引き継ぎます。
企業の結合が「共同支配企業の形成」(複数の独立企業が契約等に基づき、共同で支配する企業を形成する企業結合)と判定された場合には、持分プーリング法に準じた処理方法が適用されます。
親子会社間等、企業集団内における企業再編の会計処理は、「共通支配下の取引」と「少数株主との取引」に分けて処理されます。「共通支配下の取引」は、親会社からみれば内部取引と考えられるため、個別財務諸表上は適正な帳簿価額を基礎として処理され、連結上はすべて消去されます。「少数株主との取引」は、外部取引であるため、個別上も連結上も、時価を基礎として処理され、連結上はのれんが計上される場合があります。
(2)
株式交換完全親会社に生じる事象
株式交換に際して、完全親会社となる会社には、次の4つの事象が生じます。
(イ)
完全子会社となる会社の発行済株式の取得
(ロ)
交換対価の交付
(ハ)
完全子会社の新株予約権者に対する新株予約権の発行
(ニ)
完全子会社となる会社が発行していた新株予約権付社債について社債の承継
(3)
パーチェス法が適用される場合
(イ)
取得する子会社株式の計算
パーチェス法は、「取得する側」が「取得される側」を時価で買う、という考え方ですので、取得する子会社株式の取得価額は、交付される対価の時価で測定されます。具体的には、完全子会社となる会社の株主に交付される完全親会社の株式の時価、完全子会社となる会社の新株予約権者に交付された完全親会社の新株予約権の時価、株式交換費用等を合わせたものが取得原価となります。
(ロ)
交換対価に株式が含まれない場合の株主資本
いわば「現金で子会社株を買った」のと同じですので、株主資本の部に変動は生じません。また、その対価の時価が取得原価そのものとなりますので、のれんも生じません。
(ハ)
交換対価に株式が含まれる場合の株主資本
(a)
株主払込資本変動額
株式交換によって、完全親会社は新たに株式を発行し、資本の払込を受けると見た場合、その払込資本の額をいくらで評価するかが問題となります。基本的には株式を発行しているので、その時価がベースとなります。
その払込資本の額の計算は次式となります。
「株主払込資本変動額」=「交換対価として交付された完全親会社の株式の時価(A)」-「交換対価として交付された自己株式の帳簿価額(B)」 例えば、交付する完全親会社の株式の時価が1株10円で、新たに発行する株式が80株、自己株の処分により交付する株式が20株であれば、上記式の(A)は、10円×100株で1000円となります。
また、その処分により交付した自己株の帳簿価額が合計40円であれば、(B)は40円である。
従って、「株主払込資本変動額」=1000円-40円=960円です。
「自己株式の扱いについて」
一般に、会社が自己株を取得した場合、それはある種の「資本の払い戻し」であり、従って資産ではなく純資産の控除項目とされます。
その取得額(株主への払い戻し額)を直接資本から控除する代わりに、仮勘定的性格を有した「自己株式」として、純資産のマイナスとして表示しておき、その後、処分、消却等の確定的処置をした時に、(正式に)その価額をその他資本剰余金から落とすという扱いをします。取得する時が資本の払い戻しですので、自己株を処分する時には、流通する株式数をまた増やすことになりますので「新株の発行」と同じ扱いをすることになります。
上記式にこれを当てはめて考えると、交付する対価の側面では、新株の発行も自己株の処分も同じ「新株の発行」ですから、交付された100株を同じように構成します。また、帳簿価額40円に関しては、自己株を取得した時に、資本の控除として、暫定的にマイナスしていた価額が、今回「処分」という確定的処置をされたことにより、その株主との過去の資本取引の40円分について正式に決着を付けるということで、払込資本の額からその分を控除する、ということになります。
このように計算された「株主払込資本変動額」が、株式交換によって増加した払込資本とされます。会計上、元本たる「資本」と、その果実たる「利益」の峻別は重要ですが、「株主払込資本変動額」はその「資本」であり、資本金、資本準備金、その他資本剰余金の変動の合計となります。
(b)
各項目の増加額
1)
資本金の額
「株主払込資本変動額」の範囲内の金額で、完全親会社が株式交換契約の定めに従い定めた零以上の額です。
2)
資本準備金の額
「株主払込資本変動額-増加資本金の額」の範囲内の金額で、完全親会社が株式交換契約の定めに従い定めた零以上の額です。
イ.
債権者保護手続(会社法799条)をしている場合
零以上の額だから、増加させないことも可能です。
ロ.
債権者保護手続をしていない場合
「株主払込資本変動額」×株式発行割合-「増加する資本金の額」以上を資本準備金としなければなりません。
株式発行割合とは
交換対価として、完全親会社株式を例えば100株交付する場合に、通常の新株発行が80株で、20株を自己株式の処分で賄うとすれば、「株式発行割合」は8割ということになります。
要するに、債権者保護手続きをとってある場合には、株主払込資本変動額の全額を、その他資本剰余金にすることもできますが、そうでない場合には、株式発行部分に相当する部分は、法的により拘束性の高い資本金または資本準備金にしなければならない、ということです。上記、「自己株式の扱いについて」で説明したように自己株式の帳簿価額は最終的に、処分・消却等された時にその他資本剰余金から控除されます。従って、株主払込資本変動額のうち、自己株式に対応する部分をその他資本剰余金に計上することは許容されますが、新株を発行する部分は資本金・資本準備金にすべきである、ということと解されます。
3)
その他資本剰余金の額
「株主払込資本変動額」から「増加する資本金の額」と「増加する資本準備金の額」を控除した残額となります。
尚、株主払込資本変動額がマイナスの場合は、マイナス相当額だけその他資本剰余金が減少します。