離婚財産分与の知識3|離婚財産分与の手続、その他

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離婚財産分与の知識3|離婚財産分与の手続、その他

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財産分与を受けようとするとき、具体的にどのような手続きをすればいいのでしょうか。

夫婦の話し合いができる人は、それに越したことはありません。ただし年金分割については、前述の(3)(ロ)で述べた、公正証書作成、社会保険事務所等での手続が必要です。
夫婦の話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所での調停・審判、離婚の裁判にあわせて附帯処分の申立をすること等、裁判所の手を借りて解決することになります。
調停の申立は原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、審判の申立も相手方の住所地を管轄する家庭裁判所にすることになります。
離婚の裁判は、まず調停手続をとってからですが、調停で解決できなかった場合、原則として、夫または妻の住所地を管轄する裁判所に起こすことになります。
(9)

ところで、財産分与の具体的な額はどれくらいでしょうか。

財産分与の具体的な額は、二人で築き上げた財産の分配ですから、それこそそれぞれの夫婦によって千差万別です。
ただ、調停等の場合、婚姻期間と具体的な分与額についての統計はありますので、平成19年の統計で調停等の件数約25、200件のうち、財産分与の取決めがあるのは約6、900件で、そのうち、100万円あるいは200万円以下の例が約2、500件と結構あり、逆に1000万円あるいは2000万円を超える例は740件足らずとさほど多くないという感じです。要するに、2人で築き上げた財産の分配ですから、収入状況、支出状況、結婚期間などにより、それぞれ個別に見ていくしかないということになるでしょう。
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その他のことについて

(イ)

住宅ローンの残っている不動産の財産分与について

不動産の現在価値がローン残額を上回る場合は、通常、その差額が現在のその不動産の価値ということになります。
例えば、当該不動産を妻が取得するとした場合、残ローンを妻が支払っていける経済力のあるときは、ローンによるマイナスも含めて全体として2分の1ずつになるよう計算して、ローンは妻が支払っていくとする合意でもいいのですが、それだけの経済力がない場合、夫がローン負担をするとすれば、うまく全体として2分の1ずつになるような計算ができるかどうかといった問題がありますが、結局は話し合いでするしかないと思われます。もっとも夫がローン負担すると決めても、支払わなかったり支払えなくなった場合の問題は残りますが、もしそれがどうしても心配というのなら、不動産を処分してお金で分けるしかないでしょう。
逆に不動産の価値がローン残額を下回る、いわゆるオーバーローンの方がより問題です。 調停等では、上記同様、夫婦どちらかが不動産を取得してローンの支払いについても誰がどう負担するか合意する、処分して赤字分の支払い(負担)について合意するというような解決があり得ますが、審判(裁判)になった場合、住宅の価値はゼロであって、返済した住宅ローンの一部を財産分与の対象とすることはできないとして、清算の対象としなかった(負債の清算については触れなかった)例があります(東京高裁平成10年3月13日決定)。
(ロ)

債務の清算について

プラスとマイナスの財産があって、プラスマイナスするとプラスの財産が残るという場合、プラスの財産からマイナスの財産(負債)を差し引いた残額について分与額を決めた裁判例(名古屋家裁平成10年6月26日審判)、債務についても負担割合は、財産形成について寄与するのと同様、特段の事情のない限り平等と解すべきであるとした裁判例(東京地裁平成11年9月3日判決)などがあります。
負債が資産を上回る場合、債務は、債権者との関係もあり、夫婦二人だけでどちらが負担すると決められる問題でもなく(二人だけで合意した場合、二人の間だけでは有効でも、それをそのまま債権者に対しても主張できるとは限りません)、審判等になっても債務だけを財産分与として判断してもらうのは難しいように思われます。
ただ、二人で築き上げたプラス財産についても二人で分けるのが公平なら、夫婦二人のためにできたマイナス財産についてもできる限り二人で負担するよう協議するのが公平といえるでしょう。
(ハ)

分与する方に債権者がいる場合で、分与によりその人の資産が債権額に足りなくなってしまうような場合について

このようなことをされると分与する方の債権者としては困ってしまいます。しかし、分与を受けるほうからすると、二人で築き上げた財産なのに分与を受けられないというのもやはり困ったことになります。
このような場合、不動産の財産分与について、分与を受ける方が本来分与を受けることができるはずの分与前の財産の2分の1を超える部分については、金額に換算して分与を受けた者から債権者に返還させた(要するに本来の取り分である2分の1だけを残して債権者に返させた)裁判例(大阪高裁平成16年10月15日判決)もあります。最高裁昭和58年12月19日判決は、財産分与が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分行為であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、債権者による取消の対象とはなり得ないと解するを相当とするとしています。先ほどの大阪高裁の裁判例は、最高裁判決を前提としつつ、財産分与が不相当に過大と判断した例ですが、この事案の一審(高裁は二審)は不相当に過大とは言っていず、分与額が2分の1を超えるとそれだけですぐ不相当に過大とされるものでもありません。
上記裁判例からすると、分与者に債権者がいて、債務超過の状態であるにもかかわらず不相当に過大な財産分与をすると取り消されてしまうおそれはあるでしょう。
(ニ)

財産分与を受ける見込の自宅が処分されてしまいそうなときはどうしたらいいでしょうか。

裁判になった場合、財産分与で自分のものになる可能性がある程度あるものであれば、裁判を起こす前に民事保全として当該自宅の処分禁止等の措置をしてもらうことが可能です。
家庭裁判所に審判事件が係属しているときは、審判前の保全処分として、自宅について処分禁止の措置をしてもらうことが可能です。
ただ、いずれの措置も、ゆっくりしていると勝手に名義を変えられてしまうというように時間的に急ぐことや、法技術的な面があるため、司法書士、弁護士といった専門家の援助を受けてするのがいいと思います。