土地の明け渡しができる場合と明け渡しの方法5

貸地・貸家明け渡しガイド

土地の明け渡しができる場合と明け渡しの方法

(2)

借地法の適用がある貸地の明け渡しとその方法(続き)

(ロ)

借地契約の存続期間が満了した場合の貸地の明け渡しとその方法(続き)

(d)
明渡料の考え方
先に述べたイ.ないしホ.の正当事由要素があるものの、これだけでは正当事由が十分ではないという場合に、明渡料を提供することによって正当事由を具備させることができます。この意味で、明渡料の提供は、正当事由の補完事由という性格をもつわけです。
(e)
明渡料の算定方法
明渡料の算定方法は、事案ごとにかならずしも同じではありませんが、更地価格に借地権割合を乗じた借地権価格を基準に正当事由の充足割合を考慮して算定するという考え方が合理的です。
具体的設例で説明しますと、次のとおりです。
(具体的設例)
更地価格が25万円/㎡する100㎡の貸地の明け渡しを求めるにつき、貸主側の正当事由が70%備わっている場合の明渡料は、450万円と一応試算することができます。
(計算)
*1
借地権割合
*2
正当事由が不足している割合
その他、営業補償、建物価格、移転実費 (運送費、荷造費、動産損料、移転通知費等) なども明渡料算定に入れる場合もあります。
明渡訴訟になった場合、明渡しを求める側は、不動産鑑定士に私的に借地権価格の鑑定をしてもらい、この鑑定結果を基準に正当事由要素を考慮して明渡料を算定し、その額を明渡料として提供することが実務上多いといえます。
(f)
明渡手続の実際

貸地明け渡しの実際
1)
調査
対象貸地及び地上建物についての調査や契約関係の調査を行います。この調査により借地上の建物の老朽化や、土地の高度利用の必要性、契約関係における借主の不誠実な対応などの重要な基礎事実を採取します。これらの基礎事実は明け渡しを求める 「正当理由」 を構成する基礎事実となります。また、不動産鑑定士の意見を参考にしながら明渡料の算定の基礎となる土地・建物の価格の算定を行います。
2)
明渡料の算定
調査に基づき、明け渡しを求める 「正当事由」 を法律的に構成するとともに、 右正当事由によって明け渡しを求める際の法律上妥当な明渡料の額を算定します。 正当事由を構成する事実が多いほど明渡料は低額となります。
3)
明渡交渉
以上の手続を経て法律的な根拠、方針を明確にして借地人と明け渡しの交渉を行います。
4)
訴訟・調停
明け渡しの交渉により借地人の同意が得られない場合は、調停・訴訟等の手続をとります。
訴訟手続を採った場合でも、裁判所は必ず裁判をするというわけではありません。明渡訴訟の場合は、訴訟手続を経て、訴訟上の和解によって解決する場合が相当多いといえます。
(3)

借地法の適用がない貸地の明け渡しとその方法

(イ)

賃借人に賃貸借契約上の義務違反がある場合の明け渡しとその方法

これについては、「土地の明け渡しができる場合と明け渡しの方法2」(2)(イ)(a)ないし(f)に述べたことと基本的には同じですので、 上記記述を参照して下さい。
(ロ)

賃貸借契約の存続期間が満了した場合又は期間の定めがない場合の明け渡しとその方法

(a)
賃貸借契約の存続期間の定めがある場合
この場合は、存続期間の満了とともに賃貸借契約は終了します。貸主は上記存続期間の満了と同時に賃借人に対し法的に貸地の明渡請求をすることができます。 この場合、明渡料等は必要ありません。
なお、民法604条1項には、借地借家法の適用のない貸地については、
「賃貸借ノ存続期間ハ20年ヲ超ユルコトヲ得ス若シ之ヨリ長キ期間ヲ以テ賃貸借ヲ為シタルトキハ其期間ハ之ヲ20年ニ短縮ス」 との規定があります.。
(b)
賃貸借契約の存続期間の定めがない場合
民法617条によると、賃貸借の存続期間の定めのない貸地の場合は、 貸主は、 いつでも解約の申入れができ、解約申入れの意思表示が賃借人に到達してから1年経過した時に賃貸借契約は終了します。したがって、貸主はその時点で借主に明渡請求をすることができます。この場合、明渡料等は必要ありません。
解約の申入れとは、契約を将来に向って終了させる意思表示のことをいいます。