後遺症が生じた場合3

交通事故損害賠償請求ガイド

第1

交通事故の被害者の損害賠償請求

3

損害賠償請求の内容

(2)

後遺症が生じた場合3

(二)
後遺症慰謝料
後遺症がある場合は、傷害による慰謝料とは別に後遺症慰謝料を請求することができます。交通事故の慰謝料額は被害者相互の公平性の観点から定額化、定型化が進んでいます。そこで、後遺症慰謝料についても、一定の幅こそありますが、原則として後遺症等級に応じて策定された日弁連交通事故相談センターの基準などが用いられています。ここでも、自賠責保険の算定基準と上記日弁連の基準では賠償額に大きな隔たりがあります(下記の後遺症の慰謝料額比較表をご参照下さい)。例えば、交通事故相談センターの算定基準20訂版によれば、下記の表のとおり、1級の場合で2600万円から3000万円、14級の場合で90万円から120万円となっています。
もっとも、この額もあくまでおおよその基準であり、絶対的なものではありません。
後遺症の慰謝料額比較表は次の文字をクリックしてご覧下さい。
後遺症の慰謝料額比較表
(ホ)
将来の介護費用
後遺症の症状固定後の将来の介護費用につき、職業付添人の場合は実際に支払った介護料全額、親子や配偶者等の近親者の場合は、常時介護か随時介護か等の具体的状況に応じて金額が増減しますが、1日あたり6500円~8500円が賠償すべき損害として認められています。
介護を要する期間は、原則として、被害者の生存期間であり、厚生労働省が作成している簡易生命表の平均余命により算定するのが実務の大勢です。
簡易生命表は次の文字をクリックしてご覧下さい。
簡易生命表
介護費の支払いにつき、一括で賠償する方式でなく、定期的に賠償する方式を認めた裁判例もあります。ただし、被害者側が一括での賠償を求めている場合には、裁判所が定期的に賠償するよう加害者に命ずる判決をすることはできません。
将来の介護費用について次のような裁判例があります。
(a)
脊髄を損傷し、四肢麻痺の後遺症を残した26歳の男性について、2人分の職業付添人による介護費として1日あたり1万8300円、合計約1億2302万円を認めた裁判例
(b)
植物状態となった11歳の男児について、職業付添人1名と近親者の合計3名の介護が必要であるとして平均余命まで1日あたり2万円、合計1億3375万円を認めた裁判例
(c)
高次脳機能障害となった23歳の女性につき、母親が67歳になるまでの10年間は母親による介護費として1日あたり8000円と、職業付添人による介護費として1日あたり3692円、10年経過後平均余命までの52年間は職業付添人のみによる介護費として1日あたり2万4000円、合計1億3200万円を認めた裁判例
(d)
後遺症等級1級の71歳の男性につき、特別養護老人ホームへの入所金2300万円のうち返還を受けられない償却分(1894万円)と施設利用料1月あたり25万円の平均余命11年分の合計2478万円の合計4373万円を認めた裁判例
等があります。
(へ)
器具代や住宅の改造費
自動車事故により後遺症が残った場合、日常生活に支障が生じることから、身体機能を補うための器具や、住宅の改造が必要となる場合があります。このような器具の購入や、住宅改造に要した費用は、後遺症の程度や生活環境等を考慮して、身体機能を補うために必要かつ相当な限度で、賠償が認められます。
裁判例としては次のようなものがあります。
(a)
右目を失明した男子の将来の義眼代として、平均余命58年の間、4年に1度交換する必要があるとして、約99万円の賠償を認めた裁判例
(b)
失明した場合に、盲導犬関係費用として544万円の賠償を認めた裁判例
(c)
右下腿部を切断した4歳の男児に将来の義足代として53年間分の合計37万円の賠償を認めた裁判例
(d)
四肢麻痺等の後遺症を残した17歳の男子に、平均余命58年間に少なくとも11台の車椅子を購入する必要があるとして約144万円の賠償を認めた裁判例
(e)
その他コンタクトレンズ、足底板装具、下腿免荷装具、義歯、コルセット、カツラ等の器具の購入費の賠償を認めた裁判例(f)脊椎損傷による両下肢完全麻痺等の後遺症を残した被害者につき、車椅子で動きやすいよう部屋を広くし、段差をなくし、浴室・洗面所を改造し、屋外のテラスをスロープにする等の改造費用の賠償を認めた裁判例
等があります。
(ト)
後遺症による逸失利益と事故後の死亡
自動車事故により被害者に後遺症が残り、その後、加害者に賠償請求しない間に、被害者がその事故とは別の原因により死亡した場合、被害者の遺族が加害者に賠償を請求できる逸失利益の額の算定に際しては、最初の事故の時点で、死亡の具体的な原因が存在し、近い将来に死亡することが客観的に予測されていた等の特段の事情がない限り、死亡の事実を考慮せず、生存している場合と同様に算定することとされています。
なお、被害者が死亡した場合でも、逸失利益の算定にあたって、死亡後の生活費が控除されることはありません。
他方、後遺症のために介護を受けていた被害者が死亡した場合、死亡後の介護費用を請求することはできません。
(チ)
示談後に後遺症があることが判明した場合
そもそも、交通事故に伴う示談、和解は、症状固定を待って行います。症状が固まってこれ以上良くならないという段階で、初めて後遺症という認定が可能になり、一応の損害額の算定も可能になるからです。
ところが、後遺症としてはこの程度だろうと思われて、示談や和解の時点では、損害はその範囲と考えていたものの、希に、後になってその事故が原因となった予想外の後遺症が発生した場合に、どうするのかが問題となることがあります。
この問題については、確定した判例があります。すなわち、「示談当時予想しなかった後遺症が発生した場合、右示談の効力は右後遺症等による損害には及ばない」とされています。
つまり、示談して、調印した示談書の中に、「以後一切請求しない」というような内容の文言があっても、示談当時予想していないかった後遺症が出た場合には、その損害を別途請求できるということになります。

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