民事訴訟の専門知識

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4 訴の類型

民事訴訟においては、原告が裁判所に対してどのような判断を求めるのかによって、訴えはいくつかの類型に分けられます。これを「訴の類型」といい、代表的なものとして、給付の訴、確認の訴、形成の訴が挙げられます。これらは、民事訴訟制度の基本構造を理解するうえで重要な分類です。

訴の類型は、単なる学術的な整理にとどまらず、どのような請求が認められるのか、判決によってどのような効果が生じるのかを考える際の基礎となります。実務においても、当事者が何を求めて訴えを提起しているのかを明確にするために、この分類が意識されます。

もっとも、一般の紛争解決の場面では、当事者が「自分の訴えがどの類型に当たるのか」を強く意識することは多くありません。多くの場合は、金銭の支払いを求めたい、権利関係をはっきりさせたい、といった実質的な目的から訴えが選択されます。しかし、その背後では、裁判所がどのような判断を行うのかを整理するために、訴の類型という枠組みが用いられています。

以下では、民事訴訟における代表的な三つの訴の類型について、それぞれの基本的な考え方を簡潔に説明します。制度の全体像を理解するための整理として位置づけるとよいでしょう。

(1)給付の訴

給付の訴とは、原告が被告に対して、一定の行為をすること、またはしないことを求める訴えをいいます。民事訴訟において最も典型的な類型であり、実務上も数多く見られるのが給付の訴です。具体的には、金銭の支払いを求める訴えや、物の引渡しを求める訴えなどがこれに該当します。

給付の訴の特徴は、裁判所が被告に対して具体的な給付義務の履行を命じる判決を下す点にあります。たとえば、一定額の金銭を支払うこと、契約に基づいて物を引き渡すこと、ある行為を差し止めることなど、判決の内容は明確な行為義務として示されます。この点で、給付の訴は、権利関係を抽象的に確認する訴えとは性格を異にします。

実務上、給付の訴が多く利用される理由の一つは、判決によって得られる効果が分かりやすい点にあります。給付の訴で勝訴判決を得た場合、被告が任意に義務を履行しないときには、一定の手続を経て強制執行を行うことが可能となります。金銭の支払いを命じる判決であれば、被告の財産に対して強制的に権利を実現する道が開かれます。

また、給付の訴は、その内容によってさらに細かく分類されることがあります。代表的なものとしては、金銭給付請求、物の引渡請求、作為請求、不作為請求などが挙げられます。ただし、一般の紛争解決においては、これらの分類を厳密に意識する場面は多くなく、当事者としては「何をしてほしいのか」という実質的な請求内容が重視されます。

もっとも、給付の訴を提起するにあたっては、原告がどのような権利に基づいて給付を求めているのかを明確にする必要があります。契約に基づく請求なのか、不法行為に基づく損害賠償請求なのかによって、立証すべき事実や法的構成は異なります。この点は、訴の類型というよりも、請求原因の問題として整理されます。

このように、給付の訴は、民事訴訟において最も基本的かつ実務的な訴の類型であり、具体的な権利の実現を目的とする点にその特徴があります。民事訴訟の全体像を理解するうえでも、まず押さえておくべき類型といえるでしょう。 

(2)確認の訴

確認の訴とは、原告と被告との間に存在する権利関係や法律関係について、その存否を裁判所に確認してもらうことを求める訴えをいいます。給付の訴のように、被告に具体的な行為を命じるものではなく、法律関係が「あるか、ないか」を明らかにする点に特徴があります。

代表的な例としては、ある契約が有効に成立しているかどうかの確認や、特定の地位や権利が存在するかどうかの確認を求める訴えが挙げられます。確認の訴は、将来の紛争を予防したり、当事者間の法律関係を安定させたりする目的で利用されます。

もっとも、確認の訴は、いつでも自由に提起できるわけではありません。実務上は、原告に確認の利益があることが必要とされます。確認の利益とは、裁判によって法律関係を明らかにする必要性が、現実的かつ具体的に存在することを意味します。すでに給付を求めることが可能な場合には、原則として給付の訴によるべきであり、確認の訴は補充的な位置づけにあると理解されています。

この点で、確認の訴は、給付の訴と密接な関係を持っています。たとえば、将来給付を求める前提として、まず権利関係の存否を明らかにする必要がある場合には、確認の訴が意味を持ちます。一方で、すでに給付請求が可能な段階にあるにもかかわらず、確認の訴を選択すると、訴えが不適法と判断されるおそれもあります。

このように、確認の訴は、直接的な権利実現を目的とするものではなく、法律関係を明確にするための訴えとして位置づけられます。民事訴訟における訴の類型の中では、補充的・整理的な役割を担うものと理解しておくとよいでしょう。

(3)形成の訴

形成の訴とは、裁判所の判決によって、当事者間の法律関係を新たに発生させ、変更し、または消滅させることを求める訴えをいいます。給付の訴や確認の訴が、既存の権利関係を前提とするのに対し、形成の訴は、判決そのものによって法律関係に変動を生じさせる点に特徴があります。

代表的な例としては、契約の解除や取消し、婚姻関係の解消などが挙げられます。これらの場合、裁判所の判決が確定することによって、当事者間の法律関係が当然に変動し、別途の給付命令を要しません。この点で、形成の訴は、給付の訴とは異なる性質を持つ訴の類型といえます。

形成の訴においては、原告が主張する形成原因が法的に認められるかどうかが重要となります。たとえば、解除権や取消権が適法に行使されているか、要件を満たしているかが審理の中心となります。裁判所は、その要件が充足していると判断した場合に、形成判決を下します。

また、形成の訴による判決は、原則として将来に向かって効力を生じます。もっとも、具体的な効果の範囲や時点については、個別の制度ごとに整理されるため、常に同一とは限りません。この点は、給付の訴や確認の訴と異なり、制度ごとの理解が必要となる部分です。

このように、形成の訴は、裁判所の判断によって法律関係そのものを変動させる訴えとして、民事訴訟における独自の位置づけを持ちます。実務上は利用場面が限定されますが、訴の類型を理解するうえでは欠かせない整理といえるでしょう。

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この記事の監修
弁護士法人朝日中央総合法律事務所
弁護士法人朝日中央綜合法律事務所は、民事訴訟、人事訴訟、家事審判、商事非訟、家事非訟等の民事裁判業務において累計1,448件(平成27年~令和7年)の取扱実績を有し、豊富な経験と高度な訴訟ノウハウを蓄積してまいりました。
また、民事調停、家事調停、民事保全、民事執行、示談交渉等の隣接業務においても累計2,586件(平成27年~令和7年)の取扱実績を重ね、多くの依頼者の皆様から厚い信頼を獲得しています。