判例

非上場株式換価、評価マニュアル

4

判例

集合写真
(1)

東京高裁 昭46.1.19決定   ( 事件番号:昭45(ラ)120号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の株式の価格について、原審静岡地裁がA鑑定(498円20銭)とB鑑定(1,068円41銭)の間をとり750円と定めたのに対し、当事者双方が抗告した事案
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
我国有数の大手自動車メーカーの静岡県下全域を販売区域とする販売会社
(規模)
資本金450万円
赤字が続いており、累積赤字は約1億1,300万円
(その他)
赤字続きといいながらも経営首脳部に会社解散の意向は全くなく、メーカーからの要請もあって、10%の配当を実現する五ヶ年計画を建てている。
(ハ)

株主構成

発行済株式総数9万株
うち3000株(全体の3.3%)の譲渡
(ニ)

採用された算定方式

類似会社比較による収益還元法
(A鑑定を採用し、1株498円20銭)
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

会社の資産については、貸借対照表上の評価額だけでなく、清算価値をも斟酌すべきであるが、このことから解散価値法による評価方法を常に至当するものと解すべきではない。
会社解散の意向がなく、会社再建の5ヶ年計画を建てている事実が窺われるので、会社の解散を想定して解散価値法によって株価を算定するのは妥当ではない。
会社の営業状態及び5ヶ年計画等を斟酌すると、A鑑定のとった類似会社比較による収益還元法を採用するのが最も合理的である。
(2)

東京高裁 昭47.4.13決定   ( 事件番号:昭45(ラ)488号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の株式の売買価格につき、原審が1株2,500円と決定したのに対し、指定買受人が抗告した事案
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
製品梱包作業請負業
(規模)
資本金1,000万円
純資産5,412万5,318円
(ハ)

株主構成

対象株式は1000株(全体の5%)
譲渡人は、対象会社を社長とともに設立した原始株主
(ニ)

採用された算定方式

純資産価額方式を重視(同方式による算定価額は、1株2,706円であるが、結論として2,500円とした)。
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

過去の取引事例は偶然の場合であってかつその価格(500円)が券面額と同一であることの合理性を認めるべきものはなく、また、一般利子率による逆算は抽象的に過ぎて適当でない。
類似業種比較の方法はよるべき資料はない。
本件の如き閉鎖的会社の株式価格においては端的に会社の資産状態そのものを最も重視すべきであって、各株式の化体する会社資産の割合が基本となる。
相手方(譲渡人)は、もと申請外会社にて対象会社甲社の社長のもとで部長として従事していたが、社長兄弟間の内紛の結果甲社が設立された際も、社長に従って常務取締役をしていたが、会社が一応の軌道にのるとともに次第に疎んぜられ、不本意ながら辞任せざるを得なくなった。この点も本件株式の価格を決定するについて事情として相手方に有利に加味さるべきである。
(3)

東京高裁 昭51.12.24決定   ( 事件番号:昭51(ラ)831号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の株式の売買価格につき、指定買受人から抗告がなされた事実(1株647円が相当と主張)
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
輸送用機器のオイルフィルター及びエアクリーナー製造業
(規模)
資本金1,500万円
従業員53名
(業績)
昭和49年3月末までの業績は悪く、繰越欠損金が多額、無配状態だが、最近の業績は著しく改善している。
(ハ)

株主構成

相手方(譲渡人)
Y1 5000株(全体の16.66%)
Y2 4000株(全体の13.33%)
抗告人(指定買受人)
X 2万1000株(全体の70%)
設立当時の株主はY1 Y2のみ。その後X会社が資本参加。
甲社は、X会社の全面的協力工場。
(ニ)

採用された算定方式

再調達時価純資産方式:収益還元方式=1:1
(1株1,410円)
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

甲社は、全く配当が実施されていない会社で、配当の予想は困難であり、本件株式の売買当事者が一般投資家でないことからいって配当還元方式を採ることは相当でない。
甲社の業態では適切な類似会社を選定することが困難であることから類似会社比準方式を採用することもできない。
本件は事業継続を前提とする株式の評価をするものであるので、特段の事情のない限り単純に時価純資産方式によることは相当でなく最近の業績が著しく改善しているので、簿価純資産方式も相当でない。
本件株式の評価は、売買当事者が経営支配を目的としており、配当額よりも企業利益そのものに関心をもっているといえるので、収益還元方式は本件株式の評価に適する。しかし、抗告人は甲社の全株式を取得することになり一切の企業利益は勿論、会社財産も抗告人に帰属するので収益還元方式だけによるのは妥当性を欠き、会社財産の実質的取得の側面から時価純資産価額方式にも相当のウェイトを置き、複合して適用するのが適切である。
時価純資産方式の採用にあたっては、解散を前提とする処分可能価格によるのではなく、最有効利用を前提とした再調達価格によるのが相当といえる。
(4)

名古屋高裁 昭54.10.4決定   ( 事件番号:昭54(ラ)109号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の株式の売買価格につき、原審が1株845円と決定したのに対し、譲渡人が抗告した事案(1株純資産価格6,409円が相当と主張)
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
演芸の公開、不動産の賃貸業
(ハ)

株主構成

株主は、現に稼業する芸妓または芸妓寮主に限定されている。
譲渡人Xの持株93株。 指定買受人Y組合は、現に稼業する芸妓または芸妓寮主をもって組織された甲社と密接な関係にある団体。
(ニ)

採用された算定方式

{(配当還元方式+取引先例)+(時価純資産方式+類似業種比準方式) × (1/2) ×0.5} × (1/3)
(1株845円)
配当還元方式    250円
取引先例      500円
時価純資産方式   6,409円
類似業種比準方式  737円
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

本件は営業の継続を前提として、その売買価格を決定するものであるから、破産や清算の場合の売却価格(清算価格)によるべきでないことは明らかである。
時価による財産評価のみによることは本件のような物的会社たる株式会社についてしかもその営業の存続を前提とした場合は、客観的交換価値より遊離し、著しく高価なものとなり相当でない。
商法204条の2(注:会社法136条、138条等に相当)に規定する株式買取請求は、営業の継続を前提とした投下資本の回収方法であり、その価格は会社の現有純資産、営業成績及び流通価格等に由来する。この観点から株価算定の基礎として一株当りの純資産価格、営業成績(会社の安定性、将来性、収益力、配当率等)、流通価格(類似業種の市場価格、取引先例価格等)を併用するのが妥当。
相続税財産評価基本通達によれば配当還元方式によることになり、これのみによる評価は相当でないが、無視しえない。
本件株式は非上場で市場性に欠け、市場性に欠ける株式では評価の5割控除を行うのが取扱慣行とされている。
これまで芸妓が廃業して脱退する際は例外なく相手方組合において1株500円で買取ってきており、取引慣行として無視できない。
(5)

広島高裁 昭55.3.28決定   ( 事件番号:昭51(ラ)5号、6号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の株式の売買に関する原審の決定に対し、当事者双方から抗告された事案
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
清酒製造業
(規模)
資本金     500万円
純資産額 約4億4,500万円
清酒業界では企業規模が大きく、全国的に知名度が高い。
(ハ)

株主構成

譲渡人8名の持株比率は5.73%で経営に関与していない株主(非常勤取締役に就任していた被相続人から相続により取得)。
指定買受人は、甲社の代表取締役で9.18%の株式を所有する筆頭株主。
取締役12名の合計持株比率は44.68%、監査役2名を加えると46.63%となり、右以外の株主は一審申請人らのグループ(譲渡人)を除き、零細株主で、同族株主は存在しない。
株主数237名
(ニ)

採用された算定方式

類似業種比準方式(但し、比準価額の85%に減額)
(1株1万6,256円)
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

純資産価額方式は、会社といっても個人企業とあまり変らない小規模の会社の場合、会社を解散して清算する場合または企業支配を目的として株式を取得する場合(いわば企業譲渡にも比すべき場合)には妥当するが、本件はいずれにも該当しない。
収益還元方式は、会社の収益がすべて株主への配当にまわされるものではないこと、利子率(割引率)を決定することが困難であること、将来各期の利益を現在または過去の利益におきかえ、しかもそれが永久に続くものと仮定していることから株価算定方式としては妥当ではない。
会社はかなり高い利益を上げながら増資もせず、資本金を事業規模に比し著しく低額にとどめ配当を一定に抑えて利益の大部分を保留しており、被申請人自身配当を多くしたいと考えており、(配当還元法による)1株200円の価額は各鑑定結果と比較して極端に低く、算定方式として妥当ではない。
客観的交換価値を適正に反映した取引事例はない。
山一方式が国税庁方式よりも合理性があると認められるべき資料はない。
山一方式の市場性の欠如を理由とする50%のディスカウントはいかにも高率にすぎる。
国税庁方式は、①係数化が困難であるため比準要素とすることができない株価構成要素があること、②現実に取引の市場をもたない株式を上場株式と全く同一視した評価を行なうことは妥当ではなく、評価の安全性を図るため、70%相当額により評価しているが、比準価額に乗ずべき係数が一未満になる可能性と一以上になる可能性があり、国税庁方式においては過大評価となることを避けるため、右係数を一未満にしたと解され、前者(①)は合理性がなく②のみが考慮されるべきである。
(6)

京都地裁 昭56.7.24決定   ( 事件番号:昭54(ヒ)53号、昭55(ヒ)2号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の元社長らが持株の譲渡承認(1株当たり9,450円の買受希望者あり)を求めたところ、会社側が第三者を指定した事案
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
業務用化粧品メーカー
(規模)
資本金1億9,200万円
昭和34年設立
借入金がなく、内部留保が多い健全優良企業。
(ハ)

株主構成

創業者の親族5名が全体の53.9%を保有。売主は2名で全体の7.8%を保有。
売主2名はかつて対象企業甲社の社長、総務部長であったが、創業家一族との経営方針の対立から昭和54年4月に退社。
買主は対象企業との間にこれまで営業上の関係がなく、経営に関与する意思もないとされる。
(ニ)

採用された算定方式

鑑定意見に依拠
イ.
配当還元方式      9,405円
ロ.
ゴードン・モデル     9,091円
ハ.
純資産方式(再調達時価。 7,853円)
ニ.
類似業種比準方式 (国税庁方式の10%減の価格。 10,394円)
ホ.
類似業種比準方式(同)の20%の価格(9,239円)の平均9,196円と理論的に最も適するイ.とロ.の平均9,248円とを勘案して  9,200円
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

売主側が経営に関与していた事実及び売主の持株について1株当たり9,450円での買受希望者がある事情を、売主に有利に加味し、対象企業の資産状態、収益状況、収益力、将来の事業の見通し等を総合的に判断すると、配当還元方式を中心とする算定方法が最も合理的。
(7)

大阪高裁 昭58.1.28決定   ( 事件番号:昭56(ラ)360号 )

(イ)

事案の概要

上記(6)事件の抗告審
買主側が抗告
(ロ)

対象企業の特性

上記(6)事件と同じ
(ハ)

株主構成

上記(6)事件と同じ
(ニ)

採用された算定方式

イ.
配当還元方式:ロ.純資産方式:ハ.類似業種比準方式=2:1:1
尚、イ.はゴードン・モデル6,451円、ロ.は再調達時価7,853円、ハ.は国税庁方式の20%減の価格。9,239円。
結論として1株当たり7,498円。
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

本件株式の譲渡は、対象会社の支配、経営を目的としない一般投資家間の譲渡であるから、ゴードン・モデル式による配当還元方式による算定が最適。
買受希望者Aが、売主との間で1株当たり9,450円で買い受ける合意をした事実、また同Bが1株当たり8,449円で買受ける意向を示した事情も株価算定の一つの資料としうる。
ゴードン・モデル方式に基づく配当還元方式が最適であり、最重要視すべきとはいえ、一つの理論上の数値にすぎないことも考慮すると、鑑定人Cの鑑定による純資産方式及び類似業種比準方式(20%減価)も斟酌すべき。
(8)

東京高裁 昭59.6.14決定   ( 事件番号:昭59(ラ)31号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の取締役ら3名が従業員を引き抜いて独立開業。その後、株式譲渡の承認を甲社に求めたところ、甲社は同社の代表取締役を買受人に指定。
原決定(簿価)純資産方式を採用。買受人が抗告。
(ロ)
対象企業の特性
(規模)
資本金200万円
発行済株式総数4000株
2店舗を有するが、1店舗につき従業員3名程度。
(ハ)

株主構成

売主3名で全体の42.5%。
買主(同社の代表取締役)の持株数は不明。
(ニ)

採用された算定方式

簿価純資産方式(但し、簿価より返還を求め得ない敷金150万円を控除している。)
売渡請求直近の決算期の簿価を採用。
結論として1株3,933円
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

純資産方式は取引相場のない株式価格算定のための一方式にすぎないが、本件ではその他の方式採用のための基礎的事実関係を認めるべき資料がない。
対象企業の業種、規模、人的構成、株式の支配状況等の事情からも、純資産方式の具体的合理性は肯認できる。
なお、対象企業所有の不動産の簿価額が時価額を超えると認めるに足りる証拠はない。
(9)

東京高裁 昭59.10.30決定   ( 事件番号:昭59(ラ)399号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社と売主との間で貸金返還訴訟が係属しているところ、売主は自己の持株のうち20万2,334株を同社に代物弁済として提供し、右事件を和解で解決する前提として別に所有する2000株につき本商事非訟を申請し、株価の決定を求める。
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
印刷業
(規模)
昭和24年設立
資本金1億2,000万円
昭和57年12月31日現在の資産(簿価)は、23億4,651万円、負債(同)は21億4,163万円。
(その他)
昭和55年から57年にかけて毎年675万円から904万円の利益が計上されている。
設立以来配当は全くなし。
(ハ)

株主構成

売主は少なくとも20万4334株(8.5%)を所有しているようであるが、本件で売買の対象となる株式は2000株(0.08%)。
(ニ)

採用された算定方式

イ.
純資産方式:ロ.類似業種比準方式=1:1 尚、イ.は保有関係会社株式は簿価で、不動産は時価で評価。
ロ.
は類似業種比準方式については、財産評価基本通達に基づき指定係数70%を採用。
上記の観点から算定した価格はイ.266円、ロ.41円となり、結論として両者の平均額の153円
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

対象会社の資本金、資産額、負債額、売主が価格決定を求める動機等の事情から純資産方式と類似業種比準方式の併用とした原決定は、対象会社が事業継続をする会社であるから、単純に純資産方式に拠ることは相当でないことからも相当。
対象企業が有する関連会社株式は、同会社の業績が必ずしも良好でなく、同社株式の時価について簿価純資産方式で評価したからといって不当ではない。
対象企業の配当が零であり、将来の配当の予測も困難であるから、本件株式の評価に当たり類似業種比準方式における配当額を零としたものを基準の一つとすることは不当とは言えない。
類似業種比準方式における通達の指定係数70%は適当。本件においてこれを85%に変更すべき特段の事情はない。売主と当初の買受希望者との間で1株当たり500円の売買予約が成立していたとしても、非上場株式については取引市場における需要供給の関係は考慮することができず、偶然の事例にすぎないのであって、本件株式の価格の算定に当たり考慮することはできない。
(10)

京都地裁 昭62.5.18決定   ( 事件番号:昭60(ヒ)62号 )

(イ)

事案の概要

創業家間の内紛に伴い、対象会社甲社及び指定買受人(対象企業の関連会社かつ株主)の元取締役であり、両社代表取締役の実子である売主が持株110株の譲渡承認請求。なお、売主は右請求の約4か月にも買受人に対しその所有する115株を売却している(1株43万5,225円)。
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
各種織物製造販売
(規模)
最終貸借対照表による純資産額は5億245万円。 発行済株式総数1000株。
(その他)
京都西陣織物業界の業況が長期低落傾向にある中で昭和59年7月までは独自の好業績を挙げる。しかし、その後の内紛により業績に顕著な影響(但し、立直りが困難と断ずる程、深刻ではない)。
(ハ)

株主構成

創業一族及び指定買受人(関連会社)で100%を有する。
売主は対象企業及び指定買受人の元取締役で対象企業の株式22.5%を所有していたが、うち11.5%は既に指定買受人に任意で譲渡済み。本件売買価格の決定の対象となる株式は11%。
(ニ)

採用された算定方式

イ.
簿価)純資産方式:ロ.類似業種比準方式:ハ.収益還元方式:ニ.配当還元方式=2:1:1:1
尚、イ.は51万8,388円、ロ.は41万7,140円、ハ.は34万8,286円、ニ.は14万186円で結論は38万8,500円
対象企業は同族閉鎖会社であり、当事者双方は経営支配株主といえること、昭和60年5月に当事者間で1株43万5,225円とする売買が成立したことがあることからすると、純:類:収:配の割合を2:1:1:1とした加重平均値を基準とするのが相当。
鑑定人は本件株式の価格は営業の一部の譲渡と考えられ、帳簿価格による純資産方式のみが適当とし、かつ市場性欠如による減価率20%を減ずべきとするが、継続中の企業の資産の価額は必ずしも企業価値を表示するものではないから、本件において他の方式を排斥するのは適切でなく、また市場性がないとして算定した価額から更に減価するのは、もともと市場価格のない株式の評価をするに当たっては理由がないし、減価率の数値の根拠も不明というほかない。
(11)

福岡高裁 昭63.1.21決定   ( 事件番号:昭62(ラ)93号、95号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の元従業員が持株を売却した例
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
鮮魚卸売業
(規模)
創業明治26年(昭和38年株式会社化)
資本金1億7,600万円
従業員 185名
重要な子会社2社(資本金1,000万円及び2,000万円)
発行済株式総数35万2000株
株主数329名
(その他)
概ね順調な営業成績を挙げており(昭和56年以降4年間の売上高は661億円、698億円、641億円、672億円)、今後とも継続営業を長期にわたって期待できる。1株当たりの利益配当性向は11.9%。
(ハ)

株主構成

売主(対象企業に25年間勤務)が3.3%。その余は不明
(ニ)

採用された算定方式

配当還元方式を基礎に、類似業種比準方式及び収益還元方式において検討した要素のうち配当性向の開きを修正要素として考慮(鑑定額を採用し、1株当り2,325円)
尚、鑑定書によればイ.類似業種比準方式4,547円、ロ.純資産方式3,000円弱、ハ.配当還元方式2,325円、ニ.収益還元方式4,600円ないし6,900円
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

売主は非支配株主。
営業継続が前提となる本件の場合、純資産方式は適当でなく、配当のみに期待する非支配的一般投資家にふさわしい配当還元方式を基礎にその余の方式を修正要素として考慮すべき。
(12)

仙台高裁 昭63.2.8決定   ( 事件番号:昭62(ラ)59号 )

(イ)

事案の概要

譲渡制限株式譲渡の売買価格決定に対し抗告された事案
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
食品関係
(規模)
発行済株式総数18万株
昭和53年以降は配当なし。
(ハ)

株主構成

売主は30575株(約17%)保有。
その余の株主構成、買主の属性等は不明
(ニ)

採用された算定方式

純資産価額方式
算定の詳しいプロセスは不明
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

原決定を支持。抗告審では売渡請求の撤回の可否のみが争点となっており、価格については争点となっていない。

(原決定の理由)
利益配当は不確定な要素が多く、これをもって株式の評価額を決定することは困難かつ確実性に欠けるが、残余財産分配はその範囲が明確である以上は評価が可能。対象会社は無配会社であるから配当還元は適切でなく、また、対象会社の特殊性から同種会社を抽出することも容易でなく、これらの点から鑑定結果が純資産価額方式を採用したことは相当。
(13)

東京高裁 昭63.12.12決定   ( 事件番号:昭63(ラ)370号 )

(イ)

事案の概要

同族会社甲社における買取請求の事案。売主は父、買受人は長男。
売主は純資産価額方式のみによって価格を算定すべきと主張して抗告(抗告棄却)
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
不動産賃貸及び管理業
(規模)
昭和44年設立
資本金500万円
発行済株式総数1万株
資産は建物とその敷地の借地権(価格の合計29億1,970万2,000円)がほとんどで、その営業は右建物を第三者に賃貸するのみ。
(その他)
買主の妻が代表取締役、買主及び買主の長男が取締役、買主の二男が監査役で従業員はいない。
直近2年間の年間平均利益額は92万6,000円。利益配当なし。
(ハ)

株主構成

売主(買主の父)30%
買主(売主の長男。対象企業の取締役)60%
買主の妻(対象企業の代表取締役)10%
(ニ)

採用された算定方式

イ.
純資産方式:ロ.収益還元方式=7:3
尚イ.は法人税相当額を控除
ロ.
は収益還元方式において利益率として10%を採用
イ.12万2,812円、ロ.926円であり、これを上記の割合で斟酌すると8万6,246円となるが、最後にこの価格から市場性の欠如を理由に30%減価し、結論として6万372円。
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

対象会社甲社は、営業利益を確保して株主に配当することよりはむしろ資産の保有を目的とする色彩が濃いものであるが、ともかくも19年間営業を続けており、今後直ちに解散して清算するものではないから清算を擬制した純資産の価額方式のみでなく、会社の存続を前提とした算定方式も斟酌すべき。
本件売買価格は、会社が指定した買主が誰であるかといった主観的事情により左右されるべきものではない。
売主が申請外Aとの間で1株15万円での売買を合意していたとしても、その合意価格が客観的、合理的なものと認め得る資料は何もない。
本件の場合、類似会社が存在せず、しかも無配であるから、類似業種比準方式、配当還元方式はいずれも採用し難い。
純資産方式と収益還元方式のうち、本件会社の実態からは会社資産に対する持分の評価として純資産方式を重視するのが相当。
算定された価格から、市場性がなく、譲渡制限があることに鑑み、3割を控除すべきである。
(14)

大阪高裁 平1.3.28決定   ( 事件番号:昭61(ラ)407号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の元顧問会計士らが株式の譲渡承認を求める。原決定はゴードン・モデルによる配当還元方式のみを採用して1株2,754円とした。売主は対象企業が上場基準を満す大会社であるから類似会社または類似業種比準方式を採用すべき、仮にゴードン・モデルを採用するとしてもパラメータの採用が誤りであるなどとして抗告。
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
掃除用具レンタル販売等
(規模)
昭和38年設立
資本金18億7,852万5,000円
発行済株式総数375万7050株
株主総数2069名
昭和60年3月31日現在の帳簿上の資産合計457億7,300万円
(その他)
直近3年間の利益は年間約21億~25億円であり、経常利益は年間約47億~55億円。
(ハ)

株主構成

株主数2069名
対象会社の関係会社2社(うち1社は本件株式の買主)で計21.07%を有し、元役員1名が約5%であるほかは全員1%以下の零細株主。
その内訳は役員合計8.43%、従業員合計24.81%、元従業員合計12.74%、加盟店合計23.63%等である。
本件事件の売主は0.55%。
対象会社において株式は祈りの経営の福利厚生的機能をもつものと位置付けられ、頻繁な小刻み増資により株主が増えている。
(ニ)

採用された算定方式

配当還元方式のみ(ゴードン・モデル)
尚、原決定とは異なるパラメータを採用したため、株価は原決定から70%増の4,687円
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

少なくとも会社の経営支配力を有しない(買主にとって)株式の評価は将来の配当利益を株価決定の原則的要素とすべきである。
他方、配当金の決定が多数者の配当政策に偏ってなされるおそれがあり、右配当利益により算出される株価が一株当りの会社資産の解体価値に満たないこともありうるので、多数者と少数者の利害を調整して公正を期するため、右解体価値に基づき算出される株式価格は株価の最低限を画する意義を有する。
類似業種比準方式は、課税技術上の観点から考案された方式にすぎず、私人間の具体的個別的利害対立下で公正適正な経済的利益を当事者に享受させようとする商法204条の4第2項(注:会社法144条3項に相当)の理念とは異なるし、類似性の検証が不可能で、利益の成長要素が考慮されず、減価率の合理性も疑わしい。
収益還元方式は少なくとも配当政策等企業経営を自由になしえない非支配株主の株価算定には不適切。
本件においては、単純な配当方式は企業の成長予測が反映されず、結局、右利益及び配当の増加傾向を予測するゴードン・モデルが適当。
(15)

東京高裁 平1.5.23決定   ( 事件番号:昭63(ラ)726号、728号)

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の原始株主であり、専務取締役であった者が株式の譲渡承認を求めた事例。なお、対象企業が指定した買主3名はいずれも対象企業の下請企業の代表取締役であり、対象企業に依存して経営を維持している。本件売買にかかる供託金約1.6億円も全額対象企業から借り受けたもの。
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
紳士用装身具卸売業
(規模)
昭和47年設立
資本金1億500万円
発行済株式総数21万株
(その他)
昭和57年から61年まで毎期約63億円から74億円の売上を有し、約5,000万円から2億9,000万円の税引後当期利益を得た。純資産額も年々上昇し、直近年度で17.9億。売上高の半分以上を占める紳士用装身具の卸売業界では売上高第1位で安定した経営状態。昭和47年から51年までは年3割、同58年までは年2割、同61年までは年1割5分の配当実施。
(ハ)

株主構成

対象会社甲社の代表取締役A及びその一族が80%以上を所有。
売主は1万9000株(9%)所有。
買主らはかつて各1250株を保有していたが、昭和59年にAが代表取締役を務める株式会社乙社に1株1,000円で全て売却している。
(ニ)

採用された算定方式

イ.
配当還元方式:ロ.(簿価)純資産方式:ハ.収益還元方式=6:2:2
尚、イ.924円、ロ.8,284円、ハ.2,818円であり、結論として株価は2,775円。
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

対象企業の経営は順調で、近い将来における解散は予想されないこと、買主らが取得する株式が9%に過ぎないことから買主が対象企業の経営を支配できないことが明らか。本件株式の取得者は配当金の取得を主たる利益ないし目的とせざるを得ないから、基本的には配当還元方式が相当。
しかしながら、将来の配当額の予測は困難であり、しかも対象企業は収益の相当割合を内部に留保している。支配株主が全く恣意的に配当額を定めることは、会社経営の継続を前提とする以上許されず、会社の資産、収益の内容、程度を勘案せざるを得ない。
株式の譲渡制限の定めは会社の利益のため、その限度で株主の自由に制限を加えるものであるから、自由に譲渡した場合に比して不利益を与えることを避けなければならない。
株式を自由譲渡するにあたっては、譲受人の意思がその価格の決定に大きく影響するところ、本件株式数は少数株主権の行使が可能であるし、対象企業が売主の譲渡予定者を忌避したことは右譲渡予定者が単に配当利益のみに関心を抱くものでないこと、また、買主とAの関係からは、Aが将来本件株式を取得する可能性が少なくないことが推認される。
(16)

東京高裁 平2.6.15決定   ( 事件番号:平1(ラ)126号 )

(イ)

事案の概要

譲渡制限株式譲渡の売買価格決定に対し抗告された事案
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
不明
(規模)
発行済株式総数18万4800株
(ハ)

株主構成

売主は300株(全体の0.16%)保有
その余の株主構成、買主の属性等は不明
(ニ)

採用された算定方式

イ.
配当還元方式:ロ.純資産方式=7:3
尚、イ.は法人税相当額を控除
各方式による個別の評価額は不明
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

本件譲渡によって対象企業の経営権に消長はないから収益還元方式をとることはできず、名目資産と実質資本との乖離が著しいから簿価純資産方式は妥当ではない。
売買当事者が配当のみを期待する一般投資家である場合には配当還元方式が最も合理的な算定方式だが、株式価格の算定に当たっては、株式が会社の資産を化体したものとの見方に立って算定することが妥当であるから、時価純資産方式を加味して株式の価格を算定すべき。
(17)

千葉地裁 平3.9.26決定   ( 事件番号:平2(ヒ)3号 )

(イ)

事案の概要

対象会社甲社の元専務取締役が持株を譲渡した事案。
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
空港関係の貨物運送業
(規模)
昭和48年設立
資本金額不明
従業員数約300名
発行済株式総数10万4000株
(その他)
昭和61~63年の年間売上高はそれぞれ17.4億、21.75億、30.5億円で、税込み利益はそれぞれ4,300万、6,000万、8,100万円。
配当率はいずれも15%
設備を拡張して増収を続けており、営業基盤も固い。
(ハ)

株主構成

売主は全体の10%の持分比率を有する原始株主。会社設立以来14年にわたり常務取締役又は専務取締役。
その余の株主構成、買主の属性等は不明。
(ニ)

採用された算定方式

イ.
配当還元方式:ロ.純資産方式=1:1
尚、イ.は売主が支払を受けた役員報酬をも配当金の変形として考慮。
ロ.
は法人税相当額を控除せず、土地の価格のみ簿価と時価の乖離が著しいとして鑑定価額に拠った。
イ.4,196円、ロ.5,937円となり結論として5,066円
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

発行済株式総数の10%では会社経営を支配するに足りるものではないが、譲受人において会社の役員として経営に参加できる可能性もあり、配当のみを期待する一般投資家とはやや異なる面がある。
対象会社甲社の株式については額面金額での売買実例があるが、適切な取引先例であるかは疑わしい。
純資産方式は株式の客観的価値を算定する方法として一定の合理性をもち、買取価額の決定は会社の資産状態その他一切の事情を斟酌して決定すべき(商法204条ノ4第4項、注:会社法144条3項に相当)ものとされることからも、買取価格の決定に当たり第一に考慮されるべき方式であると言える。
時価純資産方式による場合にも、事業継続を前提とする評価であるから、会社の解散を想定して全資産を換価した額から清算所得に対する法人税を控除した額に基づく残余財産分配額によるのは相当ではなく、全資産の評価時点における市場価額によるのが相当である。
売主が本件株式を純資産価額で売却できた可能性を認めるに足りる資料もなく、更に本件会社が近い将来解散して解散価値を現実化する可能性は乏しい。
(18)

札幌高裁 平17.4.26決定   ( 事件番号:平16(ラ)88号 )

(イ)

事案の概要

対象企業が、株式の譲渡を承認せず、自社が当該株式を買い受ける旨通知した事案
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
酸素ガス製造等の高圧ガスを中心とした製造販売等
(規模)
昭和4年設立→昭和34年に組織変更
資本金8000万0000円
発行済株式総数16万0000株
(その他)
対象会社は、株主に対し、ここ十数期の毎期、12パーセント(1株当たり60円)の安定した(定額の)利益配当を継続している。
(ハ)

株主構成

対象会社の代表者が、同族関係者及び自己が支配する会社を通じて54.4パーセントの株式を保有
被申請人の保有株式数は第3位(6.56パーセント)
(ニ)

採用された算定方式

配当方式:純資産方式:収益方式=0.25:0.25:0.5
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

対象会社は、自己株式の取得により当該株式についての配当を免れる立場にあり(商法293条、注:会社法453条に相当)、将来配当利益を受けることを目的として自己株式を取得するということはあり得ないから、株式の価格決定に際し、株主が将来受けるであろう配当利益を基礎とする配当還元方式に重きを置くことはできない。
本件株式の買手である抗告人の立場からすれば、本件株式の取得により配当を免れた利益を内部に留保し得るだけでなく、これを活用して更なる利益を直接に受けることもできるのであるから、収益方式を基準として本件株式の価格を評価するのが合理的。
本件株式の売手である相手方の立場からすれば、もともと本件株式を保有していても、配当利益と万が一抗告人が清算段階に至った場合には残余財産の分配を受け得るにすぎないから、配当方式と純資産方式を基準として本件株式の価格を評価するのが合理的。
抗告人がこれまで高い利益率を確保しながら、利益配当を定額に抑えてきたことなどを考慮すれば、売手である相手方の立場からする本件株式の価格の評価は、配当還元法による配当方式と純資産方式の中間値を採用するのが相当。
上記のとおりの買手の立場からの評価と売手の立場からの評価のいずれかを重視するのが相当であるといえるような事情が見当たらないことからすれば、本件株式については、原決定のとおり、上記の割合での併用方式が相当。
(19)

大阪高裁 平20.4.4決定   ( 事件番号:平20(ラ)301号 )

(イ)

事案の概要

ベンチャー企業であるデジタルコンテンツ配信事業を営む対象企業が発行する譲渡制限株式をめぐる事例
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
デジタルコンテンツ配信事業
(規模)
平成12年に設立
発行済株式総数6000株
(ハ)

株主構成

一時は、譲渡承認を行った会社が全株式を有していた。
譲渡承認請求時点においては、申立人40%、指定買受人60%
(ニ)

採用された算定方式

収益還元方式のみ
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

本件株式は2400株で発行済株式総数の40パーセントに当たり、その株主は株主総会の特別決議を拒否できるから、対象企業の経営に一定程度の影響を及ぼすことができ、しかも、申立人から相手方に本件株式が移動することによって、相手方は対象企業を完全に支配することができることになる。したがって、本件株式については、経営権の移動に準じて取り扱い、この場合に用いられる評価方式である純資産方式、収益還元方式を検討すべき。
対象企業は、創業してさほど年月が経過しておらず、資産に含み益がある不動産等は存在しないこと、ベンチャー企業として成長力が大きく、売上は順調に推移しており、その事業の進展の経緯からすれば、平成18年3月期、平成19年3月期と同様に、その後も同程度の利益が確実に見込まれるものであることを考慮すると、純資産方式を採用すると株式価値を過小に評価するおそれがあり、純資産方式は併用することを含め採用するのは相当ではなく、収益還元方式によって評価するのが相当。
(20)

福岡高裁 平21.5.15決定   ( 事件番号:平20(ラ)145号 )

(イ)

事案の概要

譲渡制限株式の譲受人から、対象企業に対し、譲渡承認請求がなされたが、  対象企業がこれを承認しなかった事案
(ロ)

対象企業の特性

(業種)
訪問介護、通所介護等
(規模)
平成10年に設立
発行済株式総数200株
資本金1000万円
(ハ)

株主構成

一時は譲渡承認を行った会社が全株式を有していた。
譲渡承認請求時点においては、申立人40%、指定買受人60%
(ニ)

採用された算定方式

DCF法:純資産価額法=3:7
(ホ)

算定方式採用理由・要旨

非上場株式の評価方法としては、(本事件での鑑定書の分類に従うと、)①インカムアプローチ(、DCF法、収益還元法、配当還元法)、②マーケットアプローチ(類似業種比準方式と類似会社比準方式)、③ネットアセットアプローチ(簿価純資産法、時価純資産法)の3つに分類されるが、それぞれ一長一短があり、結局は、対象会社の特性に応じた株価算定をするしかない。
ひとつの評価方法だけを選択して算出した場合、当該評価方法の短所が増幅される危険があるので、対象会社に適合すると思われる複数の算定方式を適切な割合で併用することが相当。
対象企業と類似する適切な会社を上場企業の中から見出すことはできないので、マーケットアプローチを採用することは相当でない。
対象企業は、介護事業を営むことを目的とする会社であり、急増する高齢者と高齢者社会の到来とともに、今後介護を必要とする人の数は確実に増加することが見込まれるから、今後の営業継続には特に問題はなく、指定買取人による本件株式の追加取得により、対象企業をほぼ完全子会社とすることができ、同社の有用性は高まりこそすれ低くなることは考えられないから、近い将来における解散等清算を余儀なくされる事態は予想されず、本件株式価格の算定に当たっては、インカムアプローチの手法を重視する必要があるといわなければならない。
(本件鑑定書及び抗告人提出の鑑定書はいずれもDCF法を採用しているにもかかわらず、10倍近い乖離が見られており、事業収支計画の予測や投資利益率の決定の困難さが現実に露呈しているが)DCF法は、継続企業価値の把握という面では正しいものを含んでいることは明らかであって、本件株価の算定にあたって、これを全面的に無視することは許されない。
特定の一時点における個々の資産価値に基礎を置く静的な評価方法であって、一般には、会社が近い将来解散する可能性が高いなどの特段の事情のない限り採用すべきではないとはいわれるものの、一口に高齢化社会の到来といっても介護事業のあり様はさまざまであるうえ、介護保険制度の見直し等によっては必ずしも楽観視できない状況等に鑑みると、当該時点において、客観的資料である貸借対照表上の純資産に着目して、会社価値を算定することは無意味でないし、他の評価方式に依存することに少なくない危険性が認められる場合には、むしろ、同方法を基本にして算定するのが相当であるといわなければならない。
総合考慮すると、DCF法と純資産価額法の併用方式を採用し、上記の割合を用いるのが相当。