非上場株式の譲渡手続と株式の評価の知識6|判例集3

非上場株式売却・評価ガイド

第1

非上場株式の譲渡手続と株式の評価

4

判例

(6)

京都地裁 昭56.7.24決定( 事件番号:昭54(ヒ)53号、昭55(ヒ)2号 )

(イ)
事案の概要
対象会社甲社の元社長らが持株の譲渡承認(1株当たり9,450円の買受希望者あり)を求めたところ、会社側が第三者を指定した事案
(ロ)
対象企業の特性
(業種)
業務用化粧品メーカー
(規模)
資本金1億9,200万円
昭和34年設立
借入金がなく、内部留保が多い健全優良企業。
(ハ)
株主構成
創業者の親族5名が全体の53.9%を保有。売主は2名で全体の7.8%を保有。売主2名はかつて対象企業甲社の社長、総務部長であったが、創業家一族との経営方針の対立から昭和54年4月に退社。
買主は対象企業との間にこれまで営業上の関係がなく、経営に関与する意思もないとされる。
(ニ)
採用された算定方式
鑑定意見に依拠
イ.
配当還元方式
9,405円
ロ.
ゴードン・モデル
9,091円
ハ.
純資産方式(再調達時価。 7,853円)
ニ.
類似業種比準方式 (国税庁方式の10%減の価格。 10,394円)
ホ.
類似業種比準方式(同)の20%の価格(9,239円)の平均9,196円と理論的に最も適するイ.とロ.の平均9,248円とを勘案して  9,200円
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
売主側が経営に関与していた事実及び売主の持株について1株当たり9,450円での買受希望者がある事情を、売主に有利に加味し、対象企業の資産状態、収益状況、収益力、将来の事業の見通し等を総合的に判断すると、配当還元方式を中心とする算定方法が最も合理的。
(7)

大阪高裁 昭58.1.28決定( 事件番号:昭56(ラ)360号 )

(イ)
事案の概要
上記(6)事件の抗告審
買主側が抗告
(ロ)
対象企業の特性
上記(6)事件と同じ
(ハ)
株主構成
上記(6)事件と同じ
(ニ)
採用された算定方式
イ.配当還元方式:ロ.純資産方式:ハ.類似業種比準方式=2:1:1
尚、イ.はゴードン・モデル6,451円、ロ.は再調達時価7,853円、ハ.は国税庁方式の20%減の価格。9,239円。
結論として1株当たり7,498円。
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
本件株式の譲渡は、対象会社の支配、経営を目的としない一般投資家間の譲渡であるから、ゴードン・モデル式による配当還元方式による算定が最適。
買受希望者Aが、売主との間で1株当たり9,450円で買い受ける合意をした事実、また同Bが1株当たり8,449円で買受ける意向を示した事情も株価算定の一つの資料としうる。
ゴードン・モデル方式に基づく配当還元方式が最適であり、最重要視すべきとはいえ、一つの理論上の数値にすぎないことも考慮すると、鑑定人Cの鑑定による純資産方式及び類似業種比準方式(20%減価)も斟酌すべき。
(8)
東京高裁 昭59.6.14決定( 事件番号:昭59(ラ)31号 )
(イ)
事案の概要
対象会社甲社の取締役ら3名が従業員を引き抜いて独立開業。その後、株式譲渡の承認を甲社に求めたところ、甲社は同社の代表取締役を買受人に指定。
原決定(簿価)純資産方式を採用。買受人が抗告。
(ロ)
対象企業の特性
(規模)
資本金200万円
発行済株式総数4000株
2店舗を有するが、1店舗につき従業員3名程度。
(ハ)
株主構成
売主3名で全体の42.5%。
買主(同社の代表取締役)の持株数は不明。
(ニ)
採用された算定方式
簿価純資産方式(但し、簿価より返還を求め得ない敷金150万円を控除している。)
売渡請求直近の決算期の簿価を採用。
結論として1株3,933円
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
純資産方式は取引相場のない株式価格算定のための一方式にすぎないが、本件ではその他の方式採用のための基礎的事実関係を認めるべき資料がない。
対象企業の業種、規模、人的構成、株式の支配状況等の事情からも、純資産方式の具体的合理性は肯認できる。
なお、対象企業所有の不動産の簿価額が時価額を超えると認めるに足りる証拠はない。

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