非上場株式の譲渡手続と株式の評価の知識9|判例集6

非上場株式売却・評価ガイド

第1

非上場株式の譲渡手続と株式の評価

4

判例

(14)

大阪高裁 平1.3.28決定( 事件番号:昭61(ラ)407号 )

(イ)
事案の概要
対象会社甲社の元顧問会計士らが株式の譲渡承認を求める。原決定はゴードン・モデルによる配当還元方式のみを採用して1株2,754円とした。売主は対象企業が上場基準を満す大会社であるから類似会社または類似業種比準方式を採用すべき、仮にゴードン・モデルを採用するとしてもパラメータの採用が誤りであるなどとして抗告。
(ロ)
対象企業の特性
(業種)
掃除用具レンタル販売等
(規模)
昭和38年設立
資本金18億7,852万5,000円
発行済株式総数375万7050株
株主総数2069名
昭和60年3月31日現在の帳簿上の資産合計457億7,300万円
(その他)
直近3年間の利益は年間約21億~25億円であり、経常利益は年間約47億~55億円。
(ハ)
株主構成
株主数2069名
対象会社の関係会社2社(うち1社は本件株式の買主)で計21.07%を有し、元役員1名が約5%であるほかは全員1%以下の零細株主。
その内訳は役員合計8.43%、従業員合計24.81%、元従業員合計12.74%、加盟店合計23.63%等である。
本件事件の売主は0.55%。
対象会社において株式は祈りの経営の福利厚生的機能をもつものと位置付けられ、頻繁な小刻み増資により株主が増えている。
(ニ)
採用された算定方式
配当還元方式のみ(ゴードン・モデル)
尚、原決定とは異なるパラメータを採用したため、株価は原決定から70%増の4,687円
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
少なくとも会社の経営支配力を有しない(買主にとって)株式の評価は将来の配当利益を株価決定の原則的要素とすべきである。
他方、配当金の決定が多数者の配当政策に偏ってなされるおそれがあり、右配当利益により算出される株価が一株当りの会社資産の解体価値に満たないこともありうるので、多数者と少数者の利害を調整して公正を期するため、右解体価値に基づき算出される株式価格は株価の最低限を画する意義を有する。
類似業種比準方式は、課税技術上の観点から考案された方式にすぎず、私人間の具体的個別的利害対立下で公正適正な経済的利益を当事者に享受させようとする商法204条の4第2項(注:会社法144条3項に相当)の理念とは異なるし、類似性の検証が不可能で、利益の成長要素が考慮されず、減価率の合理性も疑わしい。
収益還元方式は少なくとも配当政策等企業経営を自由になしえない非支配株主の株価算定には不適切。
本件においては、単純な配当方式は企業の成長予測が反映されず、結局、右利益及び配当の増加傾向を予測するゴードン・モデルが適当。
(15)

東京高裁 平1.5.23決定( 事件番号:昭63(ラ)726号、728号)

(イ)
事案の概要
対象会社甲社の原始株主であり、専務取締役であった者が株式の譲渡承認を求めた事例。なお、対象企業が指定した買主3名はいずれも対象企業の下請企業の代表取締役であり、対象企業に依存して経営を維持している。本件売買にかかる供託金約1.6億円も全額対象企業から借り受けたもの。
(ロ)
対象企業の特性
(業種)
紳士用装身具卸売業
(規模)
昭和47年設立
資本金1億500万円
発行済株式総数21万株
(その他)
昭和57年から61年まで毎期約63億円から74億円の売上を有し、約5,000万円から2億9,000万円の税引後当期利益を得た。純資産額も年々上昇し、直近年度で17.9億。
売上高の半分以上を占める紳士用装身具の卸売業界では売上高第1位で安定した経営状態。昭和47年から51年までは年3割、同58年までは年2割、同61年までは年1割5分の配当実施。
(ハ)
株主構成
対象会社甲社の代表取締役A及びその一族が80%以上を所有。
売主は1万9000株(9%)所有。
買主らはかつて各1250株を保有していたが、昭和59年にAが代表取締役を務める株式会社乙社に1株1,000円で全て売却している。
(ニ)
採用された算定方式
イ.配当還元方式:ロ.(簿価)純資産方式:ハ.収益還元方式=6:2:2
尚、イ.924円、ロ.8,284円、ハ.2,818円であり、結論として株価は2,775円。
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
対象企業の経営は順調で、近い将来における解散は予想されないこと、買主らが取得する株式が9%に過ぎないことから買主が対象企業の経営を支配できないことが明らか。本件株式の取得者は配当金の取得を主たる利益ないし目的とせざるを得ないから、基本的には配当還元方式が相当。
しかしながら、将来の配当額の予測は困難であり、しかも対象企業は収益の相当割合を内部に留保している。支配株主が全く恣意的に配当額を定めることは、会社経営の継続を前提とする以上許されず、会社の資産、収益の内容、程度を勘案せざるを得ない。
株式の譲渡制限の定めは会社の利益のため、その限度で株主の自由に制限を加えるものであるから、自由に譲渡した場合に比して不利益を与えることを避けなければならない。
株式を自由譲渡するにあたっては、譲受人の意思がその価格の決定に大きく影響するところ、本件株式数は少数株主権の行使が可能であるし、対象企業が売主の譲渡予定者を忌避したことは右譲渡予定者が単に配当利益のみに関心を抱くものでないこと、また、買主とAの関係からは、Aが将来本件株式を取得する可能性が少なくないことが推認される。

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