損害賠償

法的に請求できる損害とはどのようなものか

第1 はじめに

損害賠償を請求する場合、「損害」とはどのようなものを指すのでしょうか。損害にも様々な種類があるため、ご紹介します。

第2 損害とは

損害賠償における「損害」とは、損害の原因となる事実が「ない場合の財産額」と「あった場合の財産額」との差額を指すと言われております(この考えを差額説といいます)。
例えば、あなたがホテルに宝石(100万円)を預けていたところ、ホテル職員のミスで壊されてしまった場合を考えてみましょう。差額説によれば、壊した事実がない場合の価値100万円からあった場合の価値0円の差額である100万円が損害となります。

第3 債務不履行の場合

1.財産的損害と精神的損害

一つの区分として、財産的損害と精神的損害に分けられます。
財産的損害はその債務不履行により生じた財産上の損害であり、上記の例における宝石が滅失したことによる損害は財産的損害にあたります。
他方、精神的損害については、医療過誤による後遺症等、人格権の侵害がある場合に精神的損害の賠償(いわゆる慰謝料)が認められます。
また、人格権の侵害ではない、財産権の侵害でも、ペットの医療過誤の場合などには、例外的に精神的損害の賠償が認められる場合があります。

2.積極損害と消極損害

さらに、財産的損害には、積極損害と消極損害があります。積極損害とは債権者が現に受けた損失で、消極損害は債権者が得られるはずであった利益の損失を指します。
積極損害の例としては上記の宝石の事例が考えられます。消極損害の例としては、タクシー運転手による事故が原因で、乗客が怪我をして働けなくなった場合の、給料相当額が考えられます。

3.履行利益、信頼利益

履行利益とは、履行がされていれば、債権者が得られるはずであった利益を指します。
例えば、宝石を転売目的で購入したところ、売主のミスで壊されてしまい、転売できなかった場合、転売利益が履行利益となります。
信頼利益とは、本来不成立、無効の契約を有効に成立したと信じたことによって債権者に生じた損害の賠償を指します。
例えば、上記の例で、買主が宝石の購入代金として借入れをしていた場合、その借入利息は信頼利益となります。

第1 不法行為の場合

不法行為の場合も、財産的損害は、積極損害、消極損害に分けられます。
例えば、傷害事件での入院費用は積極損害となり、入院により得られなかった給料相当額は消極損害となります。
精神的損害については、債務不履行と異なり、明文の規定で認められています(民法710条)。
但し、慰謝料が認められるといっても、個々の裁判官の自由裁量により決定されるものではなく、権利侵害の内容、重大性等を考慮要素として、類似裁判例と比較して判断することになります。
具体的には、不貞慰謝料の場合、夫婦の関係、婚姻期間等を考慮要素とした上で、100万~500万円の賠償額となることが一般的な相場と言われております。
一方、裁判で1,000万円を超える不貞慰謝料が取得できる事例とほとんど存在しないといわれています(不貞をした側が相当の資産家で、面目を保つために、高額の慰謝料で和解するというケースはあるそうです)。

第2 まとめ

相手の行為により被害を受けた場合にその被害がどの損害類型に当たるかによって、立証方法が変わります。
例えば、積極損害の場合は、現に被害を受けているため、入院領収書等の証拠が多いことが多く、損害の事実を立証することが比較的容易です。
他方、消極損害の場合、将来得られた利益の損失であるため、領収書といった明確な証拠はないことが多く、積極損害より多くの証拠が必要となることもあります。
ご自身が請求しようとしている損害が立証できるのか、または請求を受けている損害を争えるのかについて、弁護士に相談されることをお勧めします。

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