買主の採りうる法律的手段について

土壌汚染対策マニュアル

第2

土壌汚染の実務

集合写真
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買主の採りうる法律的手段について

汚染事実の特定

土壌汚染を理由に売主等に対して法律的な責任を追及していく場合、まずその土地がどの程度汚染されているのかを特定することが前提になります。汚染土壌(水質)の有害物質に関する法律上の規制としては、前記の土壌汚染対策法、環境基本法、水質汚濁防止法、下水道法などが具体的な基準を数値化していますので、汚染土壌に含まれる有害物質がこの数字を超えているかどうかが、一つの目安になると考えられます。

売買代金の返還

買主にとって最も強力な手段は、売買契約を無かったことにして、売買代金の返還を求めるということになります。
(イ)
契約不適合責任
売買の目的物に、「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものがある」場合で、契約をした目的を達成できないときは解除をすることができます。すなわち、土壌汚染の存在を「契約不適合」と構成します。
ただし、当事者間の特約で契約不適合責任を排除できるため、売買契約書の内容をよく確認することが必要です。
(ロ)
錯誤無効
売買に際して「錯誤」(勘違い)がある場合、契約の無効を主張することができます。すなわち、買主が土壌汚染がないと思って土地建物を買ったにもかかわらず、実際は土壌汚染が存在したことを「錯誤」と構成します。この場合も、錯誤が売買契約の成否を左右する重要なものであることが必要になります。
無効が認められた後の代金返還請求には10年間の期間制限があるほか、買主が容易に土壌汚染を知ることができたのに不注意で気づかなかったとき(「重過失」といいます)には、無効主張が認められません。
(ハ)
詐欺取消
売主が「詐欺」を行った場合、契約の取消ができます。すなわち、売主が土壌汚染の存在を知りながら、これを隠して売買を行った点を「詐欺」と構成します。
売主が情報を隠していた点を問題にしますから、売主に土壌汚染についての情報提供義務があることが前提になります。売主の立場(売買の専門家かどうか)や売主の土壌汚染に対する認識(土壌汚染を明確に知っていたかどうか)などが情報提供義務の判断の基礎になると考えられます。
なお、詐欺取消には、取消原因を知った日から5年間という期間制限が定められています。
(ニ)
消費者契約法第4条第2項に基づく取消
事業者(不動産販売業者)が消費者(買主)を勧誘するに際し、当該消費者に対して一定の重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が、通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該消費者が当該事実は存在しないとの誤認をし、この誤認に基づき契約の申し込みまたは承諾の意思表示を行った場合は、これを取り消すことができます(消費者契約法第4条第2項)。
この取消は、追認をすることができる時(消費者が誤認したことに気が付いた時または困惑を脱した時)から6ヶ月で時効にかかります。また、契約をしたときから5年経過すると行使できなくなります。(消費者契約法第7条第1項)

損害賠償

損害賠償の項目としては資産価値の減少分、汚染土壌の撤去費用等が考えられます。
(イ)
契約不適合責任
前記⑴で、契約不適合の程度が契約を解除するに至らない場合には買主が損害賠償を請求することができます。
期間制限の点や特約で契約不適合責任を排除できる点は解除と同様です。
(ロ)
不法行為責任、債務不履行責任(売主に対して)
売主が土壌汚染を知りながら故意にこれを告げなかった場合など、売主の情報提供義務違反に不法性が認められるときは、買主が損害賠償を請求することができます。
不法行為責任は3年、債務不履行責任は10年の期間制限が定められています。
(ハ)
不法行為責任(汚染者に対して)
土壌汚染の原因が明らかになり、汚染者が特定できる場合には、直接汚染者に対して損害賠償を請求することができます。
この不法行為責任は、買主が損害及び汚染者を知ったときから3年間または汚染行為の時から20年の期間制限が定められています。