定期借地権事業の概要

定期借地実務マニュアル

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定期借地権事業の概要

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平成3年に建物保護に関する法律、 借地法及び借家法を廃止して、 これらに代わるものとして借地借家法が制定されました。この法律で、新たな借地の形態が定められました(借地借家法22条から24条)。
借地借家法で定められた新たな借地の形態は、
(1)
定期借地権 (以下「一般定期借地権」といいます。)
(2)
事業用定期借地権
(3)
建物譲渡特約付借地権
の3種類です。 この3つを総称して 「定期借地権等」 と言います。
定期借地権等が定められた背景としては、旧借地法で借地人に対し、一律に強い存続保障が認められた(法定更新。更新を拒絶するためには正当事由が必要。)ため、その反動で弊害が生じたという事情があります。
具体的には、①借地の供給に対する萎縮効果(借地人の保護が厚いため、地主が土地を借地として提供しにくくなる傾向)や②借地権価格の高騰がこの弊害として挙げられます。
そこで、借地人の保護という旧借地法の原則を前提としながらも、ニーズに応じて借地人に対する保護を緩め、土地を有効活用できるよう、「定期借地権等」の仕組みが、借地借家法において用意されました。
以下、定期借地権等の内容について概要をご説明します。
(1)

一般定期借地権(借地借家法22条)

存続期間を50年以上として借地権を設定した場合に、借地借家法で定められている借地期間の更新や借地期間中の建物の滅失等により再築をした場合の借地期間の自動更新について排除する特約を定めることができる、とする制度です。 また、借地人からの建物買取請求を排除する特約を締結することもできます。これらの特約がある場合、土地の借主は、 賃貸借期間が満了すると、 原則として土地を借地当時の原状に復して返還する義務を負うことになります。
定期借地権に関する借地契約は、 書面で行う必要がありますが、必ずしも公正証書で行う必要はありません。
(2)

事業用定期借地権(借地借家法23条)

事業用定期借地権は、 専ら事業の用に供する建物の所有を目的として、 存続期間を10年~50年として設定する借地権のことです。 居住用部分を含む事業用建物の所有が目的の場合、事業用定期借地権の設定はできません。
事業用定期借地権には、大きく分けて①存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合と、②存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合の二種類があります。
①存続期間を30年以上50年未満とした場合(借地借家法23条1項)
一般定期借地権と同様、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長を排除する特約を締結することができ、また、建物買取請求権を排除する特約も締結可能です。
一般定期借地権と異なる点は、事業用定期借地権を設定する場合、必ず公正証書による契約が必要となる点です(借地借家法23条3項)。
②存続期間を10年以上30年未満とした場合(借地借家法23条2項)
①の場合に更新や建物買取請求権について特約で排除できる点とは異なり、②の場合はそもそも更新ができず、そもそも借地人の建物買取請求権も存在しない契約となります。
したがって、②の事業用定期借地権を設定した場合は一般定期借地権や①の場合と異なり、当事者間で特約を締結していなくても、期間満了とともに当然に賃貸借契約は終了し、賃借人は更地にして土地を賃貸人に返還する義務が生じることとなります。
なお、この場合も事業用定期借地権の設定には、公正証書による契約が必須となります。
事業用借地権は、 ロードサイドの小売店、 飲食店、 遊戯場など第三次産業の店舗設営目的とした土地の賃貸借において利用されることの多い制度です。
これらの店舗は、一定期間土地を賃借し、その賃借期間内に収益を上げ、投資を回収するというビジネスモデルが典型です。このビジネスモデルは、店舗の耐用年数や収益率の観点から土地賃貸借契約の更新を念頭にしているケースは少なく、更新がなされることを前提に借地人の保護を厚くする従前の借地法の規程は、必ずしも事業者のニーズに合致するものではありませんでした。
そこで、従前は、事業者 (ディベロッパーやテナント) が地主に店舗の設計図を示して建築資金を貸与したうえで地主が店舗用建物を建築し、当該建物を事業者がリースで借りて事業を営むという建築協力金方式という形態が採用されてきました。
建築協力金方式は、上述の通り、契約形態が変則的かつ複雑です。また、建物を建築するのが事業者ではなく地主であるため、事業者が利用する建物に関するリスクを地主が負うことになります。
事業用借地権を設定することにより、複雑な建築協力金方式を採らなくとも、事業者のニーズに対応した土地利用のための契約が可能となりました。
事業用借地権を設定することで、地主は土地の所有権を手放すことなく、 ディベロッパー又はテナントに土地を賃貸し、土地を活用させることができます。
通常、地主はディベロッパーやテナントから契約締結時に一定額の保証金を預かります。賃貸借契約終了時に、保証金については返還義務を負いますが、賃貸借契約期間中は、地主は無利息で保証金の運用をすることができるというメリットがあります。
また、契約満了時には、保証金の返還と引き換えに土地が更地として返還されます。
返還時期が明確なため、地主としても賃貸借契約期間終了後の土地の有効活用計画を事前に立てやすい点もメリットとなります。
(3)

建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)

建物譲渡特約付借地権は、 借地権設定の際に、 借地権設定の日から30年以上経過した日に、 借地上にある建物を相当の対価(通常、その時の時価であることが多い)地主が買い取る旨の特約を付すものです。借地期間満了の日後に地上建物は地主に譲渡されることになります。
この特約により借地権が消滅した場合、借地権者又は借地上の建物の賃借人で土地上の建物の使用を継続している者がいる場合、当該使用者の請求により、その建物については地主との間で期間の定めのない賃貸借がされたものとみなされます。(借地借家法24条2項)