交通事故

交通事故被害にあったときに請求できる損害について(3)

交通事故により治療を施しても将来改善する見込みがない障害を負った場合,例えば手足の関節が動かなくなったり,視力や聴力が落ちたりした場合,交通事故に遭う前のように働けなくなり,収入が落ちたり,将来上がるはずだった賃金が上がらなかったりします。

このような将来取得できるはずの収入が取得できない損失(後遺障害による逸失利益)も,損害として賠償請求できます。

もっとも,加害者や保険会社に対して損害賠償を請求する時期において,将来の収入などを予測することはできません。

そのため,以下の方法をもって損害の計算をします。

1.計算方法

基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

2.基礎収入額について

(1)収入がある場合

原則として事故前の実収入額が基礎収入額となります。

(2)収入がない場合

専業主婦である妻について,最高裁判所昭和49年7月19日判決は,「女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定する」と判示しており,基礎収入額は,賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額となります。

3.労働能力喪失率について

労働能力喪失率については,労働基準局長通牒昭32.7.2基発第551号の労働能力喪失率表を参考とします。また,後遺障害の等級については,自動車損害賠償保障法施行令の別表一及び別表二に定められています。例えば後遺障害10級と認定された場合の労働能力喪失率は,100分の27です。

4.労働能力喪失期間について

原則として,症状固定日から67歳までの期間となります。67歳を超えている方は,平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。67歳を超えていなくても,67歳になるまでの年数が平均余命の2分の1よりも短くなる方は,平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。

5.ライプニッツ係数について

将来得る収入を現時点で得ることができた場合,期間による利益を受けることとなります。この期間の利益は,1年後に受け取る100万円と今年受け取る100万円とを比べた場合,今年受け取る100万円の方が,1年間銀行等に預けて利息が付いた分だけ得をすることになるため,今年受け取る100万円の方が得になることからイメージできると思います。

交通事故による損害賠償金は,原則として一時金で支払われるところ,後遺障害による逸失利益を一時金として受け取る場合も期間の利益が発生します。ライプニッツ係数は,その期間の利益分を控除するためのものです。

就労可能年数に対応したライプニッツ係数を示した表があり,これを一覧すると,どの係数が妥当するか明らかとなります。

後遺障害による逸失利益については,個人では難しい専門的な分野になるため,良くわからないまま保険会社の言葉を信じて示談してしまうと,不利になるケースもあります。

まずは,弁護士に相談することをお勧めします。

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