会社支配権紛争

株式売渡請求

 今回は、支配株主や会社が、株主に対して、株式の売渡を請求できる制度として、1.特別支配株主による株式等売渡請求と、2.相続人等に対する株式売渡請求について説明します。両制度はいずれも、支配株主の議決権比率を高める機能を有しています。以下、順に説明します。

1.特別支配株主による株式等売渡請求

(1)制度の概要

 スクイーズ・アウト(大株主が、少数株主の同意を得ることなく、すべての株式を取得する方法のこと)の一つで、対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する特別支配株主が、対象会社の他の株主(対象会社を除く)の全員に対して、その有する対象会社の株式等の全部を特別支配株主に売り渡すことを請求できる制度です。具体的手続等は以下の①~⑥のとおりです。

①特別支配株主になろうとする者が、株式の買い集めや公開買付けにより、総株主の議決権の90%以上を取得し、特別支配株主となる。
②特別支配株主が、対象会社に対し、株式等売渡請求を行う旨を通知する。
③対象会社は、特別支配株主による株式等売渡請求を承認した場合、特別支配株主に対し、その旨を通知する。
④対象会社は、売渡株主(少数株主)に対し、株式取得日の20日前までに、株式等売渡請求を承認した旨を通知する。
⑤株式取得日に売渡株主から特別支配株主への株式等の移転の効力が生じる。
⑥取得日の事前、事後において、対象会社は、一定の書類を本店に備え置く必要がある。

(2)不服のある少数株主の対抗手段

 特別支配株主による売渡株主(少数株主)に対する株式等売渡請求に不服のある売渡株主の対抗手段としては、当該売渡請求の差止請求や株式取得の無効の訴え、対象会社の取締役に対する損害賠償請求、株式売買価格決定の申立(取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に行う必要があります。)を行う方法などがあります。

(3)裁判所において認定される株式価格

 スクイーズ・アウトが企業価値を増加させる場合には、株式取得日における株式の客観的価値に加えて、企業価値の増加分を考慮して、株式価格が決定されるのが通常です。一方、スクイーズ・アウトによって企業価値が増加しない場合には、スクイーズ・アウトが行われなければ株主が享受していたと考えられる、株式取得日における株式の客観的価値が、株式価格として決定されるのが通常です。

(4)他の制度における株式価格との異同

ア.反対株主の株式買取請求権

 組織再編に反対する株主は、会社に対して株式買取請求権を行使できる場合があります。この場合の株式価格も、株主・会社間で合意ができない場合は最終的に裁判所で決定されることとなりますが、少数株主の保護が要請される点で、特別支配株主による株式等売渡請求と、反対株主の株式買取請求は同一性があります。そのため、裁判所による株価の決定にあたって、同様の判断枠組で判断されるものと考えられています。

イ.譲渡制限付株式の譲渡

 譲渡制限付株式の譲渡について、会社又は指定買受人が買い受けることとなった場合、株式価格で合意ができないと、最終的には裁判所で株式価格が決定されることとなります。この場合は、少数株主の地位が強制的に奪われるわけではないため、株価の算定にあたって、特別支配株主による株式等売渡請求や、反対株主の株式買取請求とは異なり、少数株主の保護という要請が乏しいこととなります。そのため、裁判所による株価の決定にあたって、非流動性ディスカウント(非上場会社の株式は、上場会社の株式に比べて流動性が低く、換金する際に追加的なコストがかかるため、上場会社の株式より低く評価されること)やマイノリティ・ディスカウント(少数株の譲渡を受けても支配権を獲得できない場合、株式価格が時価より低く評価されること)を考慮されるのが通常です。

(5)株式売買価格決定に関する裁判例(東京高裁平成31年2月27日決定)

 売渡株主が売買価格決定の申立を行った抗告審において、裁判所は、「一般に公正と認められる手続により経営統合の手段たる公開買付けが行われ、その後に公開買付けに係る買付け価格と同額で株式売渡請求がされた場合には、株主が公開買付けに応じるか否かを適切に判断することが期待できる以上、上記の手続において基礎となった事情に予期しない変動が生じたなどの特段の事情がない限り、裁判所は、株式売渡請求に係る株式の売買価格を公開買付けに係る買付価格と同額とするのが相当である」と判示し、公開買付け時の株価よりも、株式売渡請求時の株価は高額となる、との売渡株主の主張を認めませんでした。この裁判例のケースにおいて重要な争点は、①公正と認められる手続きにより公開買付けが行われたか否か、②その後予期しない変動が生じたか否か、という点です。

(6)全部取得条項付種類株式を用いる方法

 スクイーズ・アウトの一つとして、全部取得条項付種類株式を発行する方法もありますので、参考にご説明します。これは、株主総会の特別決議(議決権の過半数を持つ株主が株主総会に出席して、その3分の2以上の賛成が必要)によって、発行済株式の全てに全部取得条項を付す旨の定款一部変更を行ったうえで、会社が全部取得条項付種類株式を全て取得することとし、その対価として他の種類株式を割り当てるという方法です。(他の種類株式は、少数株主が端数となるように割り当てて、端数処理を行います。)その結果、少数株主は、株主としての地位を失うこととなります。 会社側がこの手法を用いる場合、不服のある株主の対抗手段としては、取得価格決定の申立て、株式買取請求、差止請求、株主総会決議取消の訴え、取締役等に対する損害賠償請求などがあります。

2.相続人等に対する株式売渡請求

(1)制度の概要

 譲渡制限株式に関し、会社が、相続等の一般承継により新たな株主となった者に対して、その有する株式を会社に売り渡すことを請求できる制度です。
具体的手続等は以下の①~⑧です。

①株主総会の特別決議によって、相続人等に対する株式売渡請求の規定を設ける定款変更を行う。
②相続人等に対して株式売渡請求を行おうとするときは、その都度株主総会の特別決議により、売渡請求の対象となる株式の数、株式を有する者の氏名・名称を定める。
③会社は、相続等があったことを知った日から1年以内に、相続人等に対し、売渡しの請求をする株式の数を明示し、株式を売り渡すことを請求する。
④会社と相続人等で、株式の売買価格について協議する。
⑤協議が整わない場合、会社、相続人等は、それぞれ株式の売渡しの請求日から20日以内に、裁判所に対して売買価格決定の申立てを行うことができる。
⑥裁判所に対して売買価格決定の申立てがされた場合、会社、相続人等の当事者双方は、売買価格についての主張、立証を行い、裁判所により売買価格が決定される。
⑦売買価格が決定するまでは、会社はいつでも株式売渡請求を撤回できる。
⑧株式売渡請求をするためには、会社は自己株式取得についての財源規制を満たす必要がある。

(2)注意点

 相続人等に対して株式売渡請求をすることを決める株主総会の特別決議において、相続人等は議決権を行使することができません。
 そのため、相続人等が、たとえ支配株主である創業者一族であったとしても、創業者の相続の際に、会社から株式売渡請求をされてしまい(一種のクーデターです。)、創業者一族が株式を失う結果となることがあり得るため、注意を要します。
これに対する対策としては、例えば、①支配株主以外の株主が保有する株式を、相続人等に対して株式売渡請求を行う議案に関する議決権制限種類株式とする方法、②支配株主の有する株式を譲渡制限株式としない方法、③支配株主の株式を保有するための法人を設立し、その法人に支配株主の株式を保有させておく方法などがあります。

(3)相続人にとってのメリット

 本制度を利用して、会社に株式を売り渡すことは、相続人にとっても、会社に株式を売り渡すことで相続税の納税資金を捻出できるようになるなど、大きなメリットがあります。もっとも、株式の売却価格については、会社の言い値で売却してよいのか、慎重に検討する必要があります。

(4)裁判所において認定される株式価格

 相続人等に対する株式売渡請求は、会社からの一方的な請求によって、相続人の株主たる地位を奪う制度であるため、特別支配株主による株式等売渡請求や、反対株主の株式買取請求同様、株主たる地位を失うこととなる相続人等を保護する必要性が高くなります。そのため、例えば、相続人等に対する株式売渡請求の結果、会社支配権の移動がある場合は、裁判所における株式価格の決定にあたって、支配権プレミアム(経営に影響力を持つ株価の移転に対して支払う対価の上乗せ分)が考慮されるべきと考えられています。

3 最後に

 今回は、①特別支配株主による株式等売渡請求(スクイーズアウトの一つ)や②相続人等に対する株式売渡請求について説明しました。両制度とも、株式の売渡しを請求する支配株主や会社、株式の売渡しを請求される株主の双方にとって、株式の売買価格は重要な関心事となります。そのため、株式の売渡しを請求する側、株式の売渡しを請求される側の利害が対立し、紛争となる可能性がありますので、弁護士などの専門家のアドバイスが重要になると思われます。

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