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売買契約に関連する民法改正について(契約不適合責任1)

2019.01.07

売買契約に関連する民法改正

1 はじめに

平成30年5月26日、制定以来120年ぶりの民法の改正案(以下「改正民法」といいます。)が国会で成立し、平成32年4月1日に施行されることになりました。今般の改正は、200項目に及ぶ大改正となっており、消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備、法定利率を変動させる規定の新設、保証人保護を図るための保証債務に関する規定の整備、定型約款に関する規定の新設等を主な理由として行われましたが、典型契約の中心に位置する売買契約についても、取引実務に重大な影響を及ぼす改正が行われております。

そこで今回は、売買契約に関し新設された「契約不適合責任」について、その概要と要件について説明いたします。

2 契約不適合責任の概要

⑴ 現行民法における瑕疵担保責任

現行民法では、売買の目的物に欠陥・不具合(瑕疵)があった場合、当事者が特定の物の個性に着目して取引する場合(特定物売買)とそれ以外の場合(不特定物売買)を分け、特定物売買の場合には瑕疵担保責任(現行民法570条等)、不特定物売買の場合には債務不履行責任(現行民法415条)が適用されるものとされてきました。その根拠として、特定物売買における売主の義務は、その目的物の所有権を買主に移転することに尽きるため、たとえ目的物に欠陥があっても売主に欠陥のないものを引き渡す義務はなく、債務不履行責任は生じないという点にありました。もっとも、売主が債務不履行責任を負わないとしても、買主の信頼が裏切られてしまうため、買主の信頼保護のために特に法律で定めたものが瑕疵担保責任であるという考え方が通説とされてきました(この通説に対しては批判的見解もあります)。

 ⑵ 改正民法における契約不適合責任

上記のような背景のもと、改正民法では、現行民法の瑕疵担保責任は廃止され、特定物売買か否かで分けることなく、売主が「契約適合的な物の引渡し」をしなかった場合、すなわち、目的物が契約内容から乖離していることに対する責任(以下「契約不適合責任」といいます。)が新たに規定されました。

改正民法の下では、このような不適合給付を行った売主の責任は、履行遅滞や履行不能といった他の不履行類型と区別されることなく、債務不履行責任として一元的に扱われることになり、契約一般についての債務不履行責任との関係では、売買の場合の特則として位置づけられることになります。

以上のように、改正民法では、これまでの瑕疵担保責任の考え方とは根本的な違いがあるため、要件や責任追及手段等の点において、様々な違いが生じます。例えば、現行民法では、目的物の欠陥に関する買主の救済手段としては損害賠償請求と解除の二つの選択肢しかありませんでしたが、改正民法では、追完請求や代金減額請求が可能となります(買主から売主に対する各種請求権の内容については、次回以降に説明いたします)。

3 契約不適合責任の要件

⑴ 契約の内容に適合しないものであること

改正民法562条1項によれば、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」は、売主は、買主に対し、不適合給付に対する責任を負うと規定されています。契約の内容についての解釈は、「合意の内容や契約書の記載内容だけでなく、契約の性質(有償か無償かを含む。)、当事者が契約をした目的、契約締結に至る経緯をはじめとする契約をめぐる一切の事情につき、取引通念を考慮して評価判断されるべきものである」とされています(民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明 ・第8「債権の目的」(90頁))。

このような考え方は、従来、「瑕疵」の概念について議論されてきた主観的瑕疵・客観的瑕疵の内容と大きく異なるものではありませんが、今後、民法の文言が変わることにより、裁判所の判断が変わっていく可能性は否定できず、「契約の内容」の解釈を巡って争いになる可能性があります。

⑵ 不特定物売買への適用

現行民法と異なり、改正民法では、上記2⑵にも記載のとおり、特定物・不特定物の区別はなく、引き渡された目的物が「種類、品質及び数量に関して契約の内容に適合しないもの」であるときに、売主が契約不適合責任を負うことになります。

⑶ 要件の有無の判断時期

従来の瑕疵担保責任に関する通説では、売主に対して責任を追及できる瑕疵は、契約締結時点までに生じた瑕疵に限られると解釈されていましたが、改正民法では、契約不適合に該当するか否かについては、契約締結の前後で区別せず、引渡時までに不適合事由が発生した場合も含まれると考えられます。

⑷ 契約不適合が「隠れた」ものであることの要件

改正民法においては、売買の目的物について買主が欠陥を認識していた場合や外形上明らかな欠陥があった場合でも、「契約の内容に適合しない」場合があり得ることから、現行民法のように「隠れた」という限定は付されないことになります(民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明 ・第35の4(406頁及び407頁))。

⑸ 損害賠償請求における売主の帰責性

現行民法における瑕疵担保責任は、売主の無過失責任(売主の帰責性は不要)であると解されていますが、改正民法における契約不適合責任は、債務不履行一般の損害賠償請求のルールに従うことになります。

したがって、契約不適合があっても、「債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるとき」は、損害賠償請求をすることはできないことになります(改正民法415条1項但書)。この債務の不履行による損害賠償につき免責を認めるべきか否かの基準は、これまで積み上げられてきた裁判実務における免責判断の在り方に即しております(民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明 ・第10の2(112頁及び113頁))。

4 まとめ

上記のとおり、売買契約に関する売主の責任については、改正民法において実務に影響を与える重要な変更がなされております。各種売買契約書の雛形を利用されている企業の担当者の方においては、改正内容を踏まえ、契約書の内容を変更する必要がありますので、一度、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。

また、次回以降、契約不適合責任を追及するための具体的な手段について、現行民法との違いを踏まえながら説明をする予定です。

このトピックス記事執筆の弁護士

森下 慎也

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