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企業法務

株主総会における議事進行が争われたケース

第1 はじめに

 株式会社は、毎事業年度の終了後、株主総会を招集しなければならないと会社法296条に規定されています。現代においては、投資に慣れた資産家に留まらず、一般の方が株式を持ち、株主総会に参加する機会が増えたため、取締役をはじめとする会社を運営する者には、これまで以上に分かりやすい説明や、株主が適切に権利行使できるように慎重な議事進行が求められるようになりました。
 したがって、本稿では、議事進行において争いとなった事件を例に、適切な議事進行のために留意すべき事項とは何か考えていきたいと思います。

第2 議事進行の不備が問題となる法令

 株主総会に問題がある場合、株主は訴えを提起することで、株主総会の無効を主張することができます(会社法828条)。その中で、「株主総会の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき」(同法831条1項1号)に当たることから、株主総会は取り消されるべきであると主張することになります。
 翻って、株主総会の主催者たる取締役等は、少なくとも同号に反しないような議事運営が求められることになります。

第3 具体例の紹介

1 当日には質問がなされなかったものの、事前に質問内容を通知していたのにも関わらず回答しない場合

 取締役等は、株主総会において株主から説明を求められたときには、説明する義務があります(会社法314条) しかも、株主が事前に質問等を役員に通知した際には、取締役等は調査を要することを理由として説明を拒むことができません(会社法施行規則71条1号イ)。  したがって、説明義務に違反することから前記会社法314条違反となるかが問題となります。 ここで、事前の通知とはあくまで通知であり、株主総会において質問がなされた際に万全な回答がなされるよう取締役等に事前調査する機会を与えるものとされています。
 したがって、通知自体は質問ではないことから、事前に通知をした株主が当日欠席して質問をしなかった場合においてまで、取締役が説明する義務はなく、314条違反にはなりません。裁判例においても、同趣旨の判示がなされています。 よって、かかる議事進行により、決議が無効となることはありません。
 株主の立場としては、事前に質問状を送付するなどして、取締役等に事前に準備させ、当日出席の際に、しっかりと質問をする必要があり、取締役等においては、当日の質問に備えて、事前通知があった質問については万全の準備をする必要があります。

2 質問を打ち切る行為について

 株主総会において、株主は経営状態等を確認するにあたって、疑問に思った点があれば、取締役等に説明を求めるのが一般的です。取締役等もこれらの質問がなされた場合には、「株主の共同の利益を害」する場合や、「説明するために調査が必要」な場合をはじめとした会社法314条但書の事由に当たらない限り、説明を避けることはできません(説明義務)。
 しかし、すべての質問に対応する必要があるかといえば、そうではありません。 裁判例によると「平均的な株主が客観的に見て会議の目的事項を理解し、合理的に判断することができる状況にあると判断したときは、まだ質問等を求める者がいても、そこで質疑を打ち切って議事進行を図ることができる」(名古屋地判平5・9・30)と判断しています。
 したがって、株主総会を運営するにあたっては、平均的な株主が求める情報とは何かを把握し、提供できるよう準備する必要があるばかりか、現場においては、十分な回答がなされたかどうか判断する能力が求められます。

3 社員株主による与党的支援の可否

 株主総会では、場の空気を支配することで、なるべく自己陣営の思い通りに決議がなされることを目的として、社員株主や経営陣に近い株主が「異議なし」「了解」「議事進行」などと発言することがしばしばあります。
 このような発言自体が許されないのでしょうか。
 裁判例には、社員株主に、「異議なし」「了解」「議事進行」などの発言を準備させたような事例において「株主総会招集権者が、自ら意図する決議を成立させるために、従業員株主に命じて、役員の発言に呼応して賛成の声を上げたり、速やかな議事進行を促し、あるいは拍手するなどして、他の一般の株主の発言を封殺したり、質問する機会を奪うなど、一般の株主権行使を不当に阻害する行為を行わせた場合は……業務執行権の範囲を超え、……法令に違反」(大阪高判平成10・11・10)するとの判断がなされています。
 しかし、この裁判例は、議長が一般株主にも質問の機会を与えていたという事情を考慮して、取締役等が説明義務(会社法314条)を怠ったわけではないとしています。 以上、株主総会を運営するにあたって、社員株主を導入すること自体は許されるとしても、一般株主の発言の機会を確保し、質問権を形骸化させないように留意する必要があります。

第4 終わりに

 本稿で紹介した事例は、ほんの一握りに過ぎず、株主総会には気を付けなければいけないポイントが多々あります。 株主総会を円滑かつ適切に執り行うにあたっては、ぜひ専門家である弁護士にご相談ください。

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