企業法務

広告表示を行う際の注意点

1 はじめに

 近年増大しているインターネット販売等において、一般消費者の商品等の選択のよりどころとなるのは広告であり、企業は一般消費者が適正な商品選択ができるようにするため適正な広告表示を行う必要があります。
 そして、企業が不当表示を行った場合、措置命令や課徴金納付命令等の措置を受けるだけでなく、社会的批判を受け、信頼回復までには長時間を要するため、企業は不当表示を行うことがないように十分に注意する必要があります。
 広告表示については、景品表示法・特定商取引法・割賦販売法・健康増進法など、その他にも様々な法律で問題となりますが、今回は景品表示法における表示規制について説明します。

2 景品表示法によって禁止される不当表示について

(1) 商品又は役務の内容に関する不当表示(優良誤認表示)
 事業者は、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」表示をしてはならないとされています(景品表示法5条1号)。

 ア 「実際のものよりも著しく優良であると示す表示」とは、例えば、実際には10万km走行した中古車であるにもかかわらず、あたかも走行距離3万kmであるかのように表示する場合のことをいいます。

 イ 「事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示」とは、例えば、通信サービス事業者の提供する通信サービスの速度が他社と比べて早いわけではないのに、自社の通信サービスは他社のどのサービスよりも高速であるかのように表示する場合のことをいいます。

(2) 商品の取引条件に関する不当表示(有利誤認表示)
 事業者は、「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」表示をしてはならないとされています(景品表示法5条2号)。

 ア 「実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」とは、例えば、価格は消費税込み1万円と表示しながら、実際には消費税相当額を別途支払う必要があった場合のことをいいます。

 イ 「他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」とは、例えば、地域最安価格と表示していたが、実際には他店も同様の価格で販売していたような場合のことをいいます。

(3) 内閣総理大臣の指定により定められる不当表示(指定不当表示)
 事業者は、「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定する」表示をしてはならないとされており、上記の優良誤認表示や有利誤認表示だけでは十分に対応することのできない表示については、内閣総理大臣の指定により、不当表示の類型を追加することができる制度となっています(景品表示法5条3号)。

 現在は、①無果汁の清涼飲料水等についての表示、②商品の原産国に関する不当な表示、③消費者信用の融資費用に関する不当な表示、④不動産のおとり広告に関する表示、⑤おとり広告に関する表示、⑥有料老人ホームに関する不当な表示の6つの指定が行われています。

(4) 企業法務上の留意点
 上記の優良誤認表示、有利誤認表示、指定不当表示のいずれにおいても、不当表示というためには、一般消費者に誤認される表示であることに加えて、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある」ことが必要とされています。
 しかし、一般消費者に誤認される表示であれば、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められることが通常であることは、これまでの景品表示法違反事件を見る限りでは、異論はないと考えられます。
 したがって、企業実務においては、一般消費者に誤認される表示に該当することがないように努めるべきであり、その点についての確認を疎かにしないことが大切です。

3 事業者が不当表示規制に違反した場合等について

(1) 措置命令
 措置命令とは、当該違反行為を行っている事業者に対し、当該行為の差止め、再発防止措置、一般消費者に対する周知措置などを命じることをいいます。
 不当表示事件について消費者庁等が措置の内容を判断する際には、違反被疑事業者の規模、問題となる表示による一般消費者の誤認の程度、誤認に係る商品の市場規模などが総合勘案されていると考えられます。
 なお、不当表示を行った事業者は、故意・過失がなかったとしても措置命令の対象となります。

(2) 課徴金納付命令
 課徴金納付命令とは、優良誤認表示又は有利誤認表示について、その対象となった商品・役務の売上額の3%を国庫に納付することを命じることをいいます。なお、指定不当表示に係る違反は、上記の措置命令の対象ではありますが、課徴金納付命令の対象ではありません。
 事業者が、その表示が不当表示に該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるときは、課徴金の納付は命じられません。

(3) 行政指導
 景品表示法違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合には、行政指導の措置が採られます。

4 最後に

 企業にとって、商品・役務を一般消費者に販売する場合には、インターネット・テレビ・新聞・チラシによる広告やカタログ・商品における表示その他によって、商品自体の存在、その性能・機能や効用・効果等を知らせることは非常に重要な活動です。そのような企業にとって重要な広告表示が不当表示に該当し、措置命令等を受けることが無いようにするためには、実際に措置命令等がなされた過去の事案を参考にすることが有益です。
 弁護士法人朝日中央綜合法律事務所では現在300件以上の顧問契約を締結しております。顧問先の職種は全業種にわたっており、企業法務に豊富な経験とノウハウを幅広く蓄積しておりますので、お困りの点があれば、弁護士法人朝日中央綜合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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