企業法務

スポンサー契約について

1 スポンサー契約とは

 スポンサー契約とは、企業がプロスポーツチーム、選手又はスポーツイベントなどに協賛し、金銭や物品等を提供する契約です。物品を提供する契約については、サプライヤー契約と言われることもあります。
 企業がスポンサーになることのメリットとしては、選手のユニフォームやスタジアムなどで企業名や商品名を露出すること、企業が大会や選手を応援しているということを通じて販売促進活動に利用すること、スポンサーとして優遇を受けることを営業活動に利用するというホスピタリティ・メリットがあることが挙げられます。

2 企業におけるスポンサー契約締結上の留意点

(1) 企業としては、前述したスポンサーメリットの範囲や条件などを予め定めておき、企業が求めるメリットを実現できる契約になっているかについて、費用対効果の観点も踏まえて検討することが大切です。
 例えば、広告表示を行う場合には、広告が表示される場所や範囲、期間等の条件をどのように設定するかが重要です。また、大会やチームの呼称等を利用できる場合や、選手の肖像等を利用できるような場合には、チームのロゴ等の著作権や選手の肖像権等を企業がどの範囲で利用することができるのかなどについて、詳細に確認しておくことが大切です。

(2) また、アンブッシュ・マーケティングといわれる便乗広告との関係での対策についても留意する必要があります。

 ア アンブッシュ・マーケティングとは
 アンブッシュ・マーケティングとは、公式スポンサーがイベント等のプロパティ所有者から付与された権利に基づき享受すべき利益を、対価を支払うことなく獲得し、消費者を混乱させる行為です。
 例えば、大会の公式スポンサーではない企業が、あたかも大会と関連があるかのように誤認を生じさせるおそれのある広告を行うことがこれに該当します。

 イ アンブッシュ・マーケティングに対する企業側の対策

 (ア) 当該広告がなされている商品・役務のカテゴリーで、大会に関する名称、ロゴ・エンブレム、マスコット等(以下「大会名称等」といいます)について企業が登録商標を有している場合は、その大会名称等が表示された商品・役務が、あたかもその広告主のものであるかのように誤認させる態様で使用されているときは、企業側は、商標権に基づいて使用差止・損害賠償請求をすることが可能です。

 (イ) 大会名称等が商標登録されていなくても、広く一般に認識される状態になっている場合は、大会名称等が表示された商品・役務が、あたかもその広告主のものであるかのように誤認させる態様で使用されているときは、不正競争防止法に基づいて使用差止・損害賠償請求ができる可能性があります。

 (ウ) 大会のロゴ・エンブレムが図案化され、又は大会マスコットが制作されており、それらが当該広告に使用されている場合は、著作権法に基づく使用差止・損害賠償請求の対象になります。

 (エ) 当該広告に大会名称等が使用されていない場合でも、大会の運営に損害を与えるおそれがあるときは、不法行為として損害賠償請求も検討すべきです。

 ウ アンブッシュ・マーケティングに対する大会主催・運営者側の事前の対策
 事前の対策としては、起こり得るアンブッシュ・マーケティングを想定した上で、商標法、不正競争防止法、著作権法及び民法(不法行為)を適用できるよう準備するとともに、自らの措置で予め対処することが大切です。
 具体的には、①広告がされそうな商品・役務カテゴリーで大会名称等を商標登録しておくこと、②不正競争防止法に基づいて対処できるように、メディア等を通じて、大会名称等を広く認識されている状態にすること、③図案化したロゴ・エンブレム、制作したマスコットについて、著作権を確保しておくこと、④イベントの運営にはスポンサーが必須であること及び公式スポンサーを積極的に告知するとともに、アンブッシュ・マーケティングは、大会運営に損害を与えることをアピールすることで、不法行為に基づく請求の実現性を広げること、⑤出場選手に対して、予め禁止行為を明確にし、遵守しない場合には出場を認めない措置をとること、観客に対しても会場内での禁止行為を行った場合、退出させる旨をチケット約款に定めて広く周知すること、などが考えられます。

3 スポンサー契約に関する紛争事例

 スポンサー契約に関する紛争事例としては、次の二つをご紹介します。

(1) スポンサー又はスポンサー契約の仲介者、関係者等の間で、金銭の分担をめぐって争いとなったケース(東京地裁平成18年11月29日判決)。

 スポンサーの地位の引継ぎに関して、原告において被告がスポンサー契約上負担している契約金支払義務を被告に代わって履行すれば、同契約上のスポンサーの地位を引き継げるとの被告の説明を信じて、原告がレーシングチーム及び被告に送金したにもかかわらず、被告がスポンサー契約上の地位の譲渡についてレーシングチームの合意を取り付けるための措置をとらなかったために、契約上の地位の譲渡を受けられなかったとして、原告が被告に対して債務不履行に基づく損害賠償を求め、同請求が認められました。

 このケースは、スポンサー契約の性質自体から生じた紛争ではありませんが、当該スポーツ業界に存在する独特の慣習や、スポンサー契約において多額の金銭の支出がなされる傾向を反映して、金銭の負担及び責任の帰属が問題となりやすいことが窺われます。

(2) スポンサー期間中の事情変更によって、少なくとも当事者の一方の状況と契約内容とが調和しなくなり、結果として紛争に至ったケース(東京地裁平成23年12月2日判決)。

 プロバスケットリーグに所属するチームの運営会社であった訴外会社の債権者(原告)が、リーグの運営会社ら(被告ら)に対し、当該チームの運営を他の会社に引き継がせるため、被告らが訴外会社のリーグ参加資格を取り消したことについて、同取消によって訴外会社は破綻に追い込まれ、原告の債権が害されたと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めたケースです。
 裁判所は、訴外会社が資金不足により来期の事業継続ができなくなるおそれが十分にあり、シーズン中の倒産を未然に防止するために、シーズン開幕前に訴外会社のリーグ参加取消を行ったことは不合理な判断とまではいえないとして、同請求を棄却しました。

 このケースは、スポンサー契約の内容が直接の問題となってはいませんが、スポンサー契約が一定期間に渡り存続する継続的契約であって、その期間中の事情変更による契約の不履行と捉え、被告の帰責性を否定した点に特徴があります。

4 最後に

 スポーツビジネスは、通常のビジネスと同様に利潤を追求する側面がありますが、スポーツの果たす社会的・公共的な側面もあり、多様性を有しています。
 今回は、そのような多様性を有するスポーツビジネスの形態のうち、「スポンサー契約」についてご説明しましたが、前述のように、商標法、不正競争防止法、著作権法及び民法といった多くの法律を踏まえ、多角的な視点から紛争を予防ないし解決する必要があります。

 弁護士法人朝日中央綜合法律事務所は、これまで多数の顧問先企業の皆様に法務サービスを提供し、スポーツビジネスを含む多様な企業法務の分野において豊富な経験とノウハウをもち、東京・大阪・名古屋・横浜・札幌・福岡の6拠点において業務を行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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