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地代・家賃増減額

賃料減額請求6

2018.12.17

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1 はじめに

  

建物の賃貸人が賃借人に対して、賃料の増額請求をしようとした場合、現行賃料が定められた時期は問題となるでしょうか。以下では、この点について判示した最判平成3年11月29日集民163号627頁(以下「本件判決」といいます。)をご紹介します。

2 本件判決の説明

 

⑴ 事案の概要

   

本件は、建物の賃貸人が、賃借人に対して賃料増額の意思表示をして、適正賃料の確認を求めて訴訟を提起したのに対し、賃借人が、賃料増減請求をするためには現行の賃料が改定された時から相当の期間を経過したことが要件となると主張し、前回の賃料改定から増額請求まで相当期間を経過していないことを理由に賃料増額を争った事案です。

 

⑵ 主な争点

   

現行賃料に改定された時から相当の期間を経過することが賃料増減請求の要件になるか否かが争点になりました。

 

⑶ 判旨

   

本件判決は、「建物の賃貸人が借家法七条一項の規定に基づいてした賃料の増額請求が認められるには、建物の賃料が土地又は建物に対する公租公課その他の負担の増減、土地又は建物の価格の高低、比隣の建物の賃料に比較して不相当となれば足りるものであって、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過しているか否かは、賃料が不相当となったか否かを判断する一つの事情にすぎない。

したがって、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過していないことを理由として、その間に賃料が不相当となっているにもかかわらず、賃料の増額請求を否定することは、同条の趣旨に反するものといわなければならない。」と判示しました。

 

⑷ 本件判決の意義

   

本件の第一審は、「(筆者注:賃料増額の意思表示において増額の始期とした)昭和六三年五月二〇日は右の従前賃料の改定時期からするといまだ一年半程度しか経過していないこととなる。本件建物賃貸借は本件建物の使用目的を倉庫並びに自動車輸送の営業所として昭和四六年に開始されたものであって(当事者間に争いがない。)、以来現在まで長期間継続しているものであることに鑑みれば、原、被告とも本件建物の賃貸借がさらに長期間継続することを予定して従前賃料の改定をおこなってきたものと推認されるところである。

したがって、その従前賃料の額はこれを不増額の特約あるものとはいえないものとしても、ある程度の期間増額されないことが当然の前提とされていたものとみるべきであって、通常の建物賃貸借の場合、二年間は賃料据置期間と理解されているところ(公知の事実である)からみても、一年半程度の期間しか経過していないのに賃料の増額請求をすることは、その間によほどの事情の変化のないかぎり、従前賃料が不相当になったものとはいえないと解される。」(傍線は筆者が記載、以下同じ。)と判示しました。第一審は、通常の建物賃貸借における賃料据置期間が2年間であり、それを下回る期間内に賃料の増額請求をするためには「よほどの事情」が必要と判断しました。

   

また、本件の原審(第二審)は、「「事情の変更」というためには前回賃料が決定されたときと今回増額請求がなされたときとの間に相当の期間が経過していることが当然に必要と解される。」「従前の賃料改定の経緯(期間及び増減の額)、値上げ幅(約四一万円から約五三万五〇〇〇円への値上げ幅は約三〇パーセント)、諸物価及び土地価格の上昇の状況、その他本件に提出された前掲各証拠からすれば、前回改定時から遅くとも二年の経過をもって事情変更が生じたと認定するのが相当というべきである。」と判示し、相当な期間を2年間とし、現行賃料の改定時から2年が経過した時点で増額の効果が生ずるものと判示しました。

   

本判決は、第一審判決及び原審の判決を覆し、現行賃料の改定時から相当な期間が経過したことは、賃料増減請求の要件ではないと判示しました。なお、本件は借地借家法施行以前の事案ですが、本件で問題となった借家法第7条は、現行の借地借家法第32条と同趣旨とされていますので、本件判決は借地借家法の下でもなお妥当すると考えられています。

3 まとめ

  

以上のことから、建物の賃料増額請求をする場合には、必ずしも現行賃料の改定時から一定期間を経なければならないわけではありません。もっとも、現行賃料に改定された時期は、現行賃料の相当性の判断要素となりますし、その他の事情を考慮し、賃料の増額を実現するためには、適切な法的判断が必要とされます。

  

そのため、本件判決を念頭に置いて適切に行動することができるよう、専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。

このトピックス記事執筆の弁護士

佐久間 洋介

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