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地代・家賃増減額

賃料減額請求7

2019.01.08

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1 はじめに

借地借家法第11条第2項には、「地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。」と規定されています(旧借地法第12条第2項にも、同様の規定があります。)。

この「相当と認める額」とは、どのような意味でしょうか。

今回は、借地借家法施行以前の借地法に関する判例ですが、この点について判示した最判平成8年7月12日民集50巻7号1876頁(以下「本件判決」といいます。)をご紹介します。

2 本件判決の説明

 ⑴ 事案の概要

 本件は、土地の賃貸人が、賃借人に対し、同土地の賃料を月額6万円から月額12万円に増額する旨の請求をした後も、賃借人が従前どおり月額6万円の賃料を支払い続けた事案です。これに対し、賃貸人は、月額6万円の賃料は、賃借人が自ら相当と認める額ではなく、公租公課の額にも満たないものであるから、賃借人には賃料支払債務の不履行があり、これに基づき賃貸借契約が解除されたと主張して、賃借人に対し、当該解除前の賃料及び解除後明渡しまでの賃料相当損害金を支払うことを求めた事案です。

 ⑵ 争点1

ア 争点

賃借人が賃料の増額請求を受けた後に、従前の賃料と同額ではあるが、主観的に相当と認めていない額の賃料を支払っていた場合、同支払額は、借地法第12条2項にいう「相当ト認ムル」賃料に当たるか。

イ 判旨

この点について、本件判決は、「賃料増額請求につき当事者間に協議が調わず、賃借人が請求額に満たない額を賃料として支払う場合において、賃借人が従前の賃料額を主観的に相当と認めていないときには、従前の賃料額と同額を支払っても、借地法一二条二項にいう相当と認める地代又は借賃を支払ったことにはならないと解すべきである。」と判示しました。

⑶ 争点2

 ア 争点

賃借人が、賃料の増額請求を受けた後、自らの支払額が公租公課の額を下回ることを知りながら、主観的に相当と認める賃料を支払っていた場合、賃料支払債務につき、債務不履行となるか。

 イ 判旨

 この点について、本件判決は、「賃借人が主観的に相当と認める額の支払をしたとしても、常に債務の本旨に従った履行をしたことになるわけではない。すなわち、賃借人の支払額が賃貸人の負担すべき目的物の公租公課の額を下回っていても、賃借人がこのことを知らなかったときには、公租公課の額を下回る額を支払ったという一事をもって債務の本旨に従った履行でなかったということはできないが、賃借人が自らの支払額が公租公課の額を下回ることを知っていたときには、賃借人が右の額を主観的に相当と認めていたとしても、特段の事情のない限り、債務の本旨に従った履行をしたということはできない。」と判示しました。

⑷ 本件判決の意義

本件判決は、争点1について、土地の賃借人が従前の賃料額が相当であると主観的に認めていない場合には、「相当ト認ムル」額(借地法第12条第2項)に当たらないことを明らかにしました。これは、借地法第12条第2項の文言を重視し、同条の適用を受けるためには賃借人自身が賃料額を相当と認めている必要があるということです。

また、本件判決は、争点2について、土地の賃借人は、上記支払額が公租公課を下回っていることを知っていた場合、当該支払額を相当であると認めていたとしても、特段の事情のない限り、賃料支払債務につき債務不履行になる旨明らかにしました。その理由として、本件判決は、「借地法一二条二項は、賃料増額の裁判の確定前には適正賃料の額が不分明であることから生じる危険から賃借人を免れさせるとともに、裁判確定後には不足額に年一割の利息を付して支払うべきものとして、当事者間の衡平を図った規定であるところ、有償の双務契約である賃貸借契約においては、特段の事情のない限り、公租公課の額を下回る額が賃料の額として相当でないことは明らかであるから、賃借人が自らの支払額が公租公課の額を下回ることを知っている場合にまで、その賃料の支払を債務の本旨に従った履行に当たるということはできないからである。」(下線部は筆者が記載)と判示しました。これは、賃借人が公租公課の額を下回る額の賃料を支払ったこと及び賃借人がその支払額が公租公課を下回ることを知ってことを要件として、賃借人の主観にかかわらず、賃借人の債務不履行となるということであり、本判決が大きな意義を有する点です。

なお、本件は借地借家法施行以前の借地法第12条第2項の解釈に関する事案ですが、同項は現行の借地借家法第11条第2項と同趣旨とされていますので、本件判決は借地借家法の下でもなお妥当すると考えられています。

3 まとめ

以上より、本件判決は、土地の賃貸人が賃料増額請求をした場合の「相当と認める」賃料について、最高裁判所が債務不履行となる基準を示したものといえます。

もっとも、賃料支払債務の不履行があっても、直ちに賃貸借契約を解除することができるものではなく、判例によれば、賃貸人と賃借人の間の信頼関係が破壊されたことが要件となりますので、実際の紛争においては、専門家である弁護士にご相談にご相談ください。

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