相続紛争における保全処分事例

相続紛争の予防と解決マニュアル

第3

相続紛争の事例研究

集合写真
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相続紛争における保全処分事例

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事案の概要

被相続人 A の死後、 A の遺産分割をめぐり、 A と同居していた A の長男 Y と、 A のその 他の子である X の間で協議が調わず、 調停を経て、 X が Y を相手方として、 遺産分割の 審判を申し立てました。
ところが、 審判手続中であるにもかかわらず、 Y は、 A の遺産である株式の一部を売 却し、 また、 預貯金の一部の払戻しを受けてしまい、 残りの有価証券、 預貯金をも処分 してしまうおそれがありました。
(2)

解決(X のとった対応)

X は、 審判手続を行っている家庭裁判所に対し、 A の遺産管理者の選任を求める旨の保全処分を申し立てました。
この申立てに対し、 家庭裁判所は、 A の遺産管理者 Z を選任するとともに、 Y に対し、Y が保管している A の遺産である有価証券や預金証書を Z に引き渡すよう命じました。
(3)

コメント

遺産争いは、 相続人間に感情的な対立があったり、 また当事者双方に不信感があって、 解決が遅れることが多いものです。
そこで、 不正を防止し、 紛争が複雑化しないように、 財産の管理者の選任や相続財産 について仮の処分をする制度があります。 この処分により、 不正を防止し、 問題を早期 に解決することができます。
この審判前の保全処分は、 昭和 55 年に新設された極めて有効な制度ですが、まだ一般 的にあまり知られていないのが実状です。