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税務訴訟

税務訴訟の手続き

第1 税務訴訟とは

 税務訴訟は多義的な言葉であり,明確な定義があるわけではありません。
 ですが,弁護士が一般的に「税務訴訟」という用語を用いる場合には,課税庁に対して訴えを提起し,最終的には納めすぎた税金の返還(あるいは納めるよういわれたもののまだ納付していない税金の支払いを不要にすること)を実現するための判決を裁判所に書いてもらうことを目的とする裁判(正確には,行政訴訟)を想定しています。
 本稿では,この「税務訴訟」の手続きについてご説明いたします。

第2 税務訴訟手続の全体像

 まずは,税務訴訟の全体像を見てみましょう。
 典型的な税務訴訟の手続きを時系列でみていくと以下のとおりとなります(あくまでも一例ですので,この通り進まないケースもあります。)。
  ①Ⅹ社がY税務署長に法人税を納付
  ②税務調査
  ③更生・加算税の賦課決定通知書送付
  ④Y税務署長への異議申立て
  ⑤Y税務署長による異議決定
  ⑥国税不服審査署長への審査請求
  ⑦国税不服審査所長による裁決
  ⑧地方裁判所へ訴え提起
  ⑨第1回~第n回口頭弁論期日
  ⑩判決言渡し
  ⑪判決確定
 ①~⑪までは,おおよそ1年半から3年程度の期間がかかります。
 それでは,具体的な中身をみていきましょう。

第3 不服申立手続

1 全般

 税務署長が行った納付税額に関する更正処分に対する租税不服申立手続としては,まず,税務署長に対して異議申立てを行い,税務署長の判断を仰ぐことになります。
 しかしながら,異議申立てを行った上での税務署長の判断に対してもなお不満が残る場合には,さらに,国税不服審判所へ審査請求を行い,そこでの判断を仰ぐことになります(その判断に対しても,なお不満がある場合には,最終的には,裁判所へ訴訟を提起することになるのですが,詳しくは第4で説明いたします。)。

2 異議申立手続

 異議申立ては,賦課決定処分をした税務署長に当該処分が適法か否かの検討を求めるもので,いわば処分の再考を求めるものです。
 異議申立ての特徴は職権主義による審理が行われることです。
 この職権主義とは,異議申立人(=納税者)が証拠書類や証拠物を提出することがきますが,それとは関係なく異議を申し立てられた税務署長が独自に調査し,証拠書類や証拠物を収集することができるということを意味します。
 職権主義によることは,迅速・簡易な手続に資することになりますが,審理の主導権を当該税務署長が握ることになりますし,税務署に有利な恣意的な審理が行われる可能性も否定はできません。さらには,証拠調べに立ち会う権利や提出された証拠の閲覧をする権利なども異議申立人には認められていないため,異議申立人の知らない間に知らない証拠が収集され,審理されるといった問題点も考えられます。

3 審査請求手続

 審査請求の審理は,国税不服審判所というところで行われます。
 国税不服審判所では,公正な結論を導くために審判官3名による合議制が採用されています。審査請求事件に係る調査・審理が終了すると,3名の審判官の過半数の意見により議決が行われ,この議決の基づき国税不服審判所長が裁決を行うことになります。
 このほかに,審査請求では,税務署長に答弁書の提出義務が課せられており,この答弁書をみることにより,自己の主張に対する税務署長の主張を正確かつ詳細に把握することができますし,これに対し反論することで,充実した審理を行うことができます。
 さらに,審査請求人(=納税者)には,税務署長が提出した証拠書類や証拠物を閲覧する権利が認められており,審査請求事件を争う上で,重要な情報を知ることができます。
 したがって,審査請求は,異議申立てよりも公正な審理を期待できる可能性が高いといえます。

4 不服申立前置主義

 原則として,租税不服申立手続である異議申立てと審査請求の2段階の手続を経た後でなければ税務訴訟は提起することができないとされておりますので,注意が必要です。
 このように,税務訴訟を行う前に不服申立手続を行わなければならないことを「不服申立前置主義」といいます。

第4 税務訴訟

1 税務訴訟の傾向

 課税処分に対する不服がある場合には,まず,異議申立て,審査請求という行政内部の救済手続を受けることになりますが,それでもなお不服が残る場合には,司法の手を借りて解決を求めるため訴訟を提起することになります。
 一口に税務訴訟といっても様々な形態のものがありますが,大別すると,租税の課税処分に関する課税訴訟と租税の徴収処分に関する徴収訴訟に分類されます。
 税務訴訟の現状をみますと,課税訴訟が大部分を占めており,この課税訴訟の納税者の勝訴率は,10%前後と納税者にとっては難しい訴訟であるといえます。
 納税者が第一審で敗訴してしまうと,通常の裁判と同様に,控訴審や上告審で争うことができますが,最終的な結論が得られるまでに優に2年以上かかってしまうこともあります。
 以上のとおり,税務訴訟は納税者にとって,長く険しい道のりであることがわかっていただけると思います。

2 勝訴見込みが高いケース

 他方で,納税者が勝つ見込みが高いケースも存在することは事実です。
 例えば,税務署の事実認定に問題があるケースや法律と通達との間に齟齬があるケースなどが挙げられます。
 これらのケースに共通する点は,高度な法律的な論点が存在することです。税務署は法律の専門家ではないため,法的論点を十分に検討することができないまま課税せざるを得ず,法律の専門家である裁判所が税務署の課税処分を違法だと認定した結果,納税者の主張が認められることがあります。
 したがって,このようなケースでは,裁判官と同じ法律の専門家である弁護士の助言に基づいて訴訟追行することが肝要だといえます。

3 判例

 納税者が第一審から最高裁まですべての審級で全面勝訴し確定した著名な判例として,レポ取引事件(最判平成20年10月28日)があります。
 レポ取引とは,有価証券取引の一類型で,一般的には,当初売買する有価証券と同種・同量の有価証券を将来一定価格で再売買するとの条件の下で,当該有価証券を売買し,その後に当該有価証券と同種・同量の有価証券を当該一定価格で再売買する取引のことをいいます。
 この事件では,レポ取引から生じる債券の売買代金と再売買代金との差額によって得られる所得の法的評価をめぐり争いになりました。
 当時,新しいタイプの金融取引であったレポ取引の法律解釈が問題となり,税務署にとっても手探り状態で課税処分をした結果,その課税処分が違法とされたという高度な法律的な論点が存在した事案の典型例だといえます。

第5 おわりに

 税務訴訟を提起する場合には,期間制限があったり,手続きが複雑に入り組んでいたりするため,上記でご説明した点以外にも注意が必要であり,専門的な知識や経験が不可欠です。
 それにもかかわらず,弁護士のなかでも税務に明るい人材が少ないというのが日本の現状です。
 朝日中央綜合法律事務所には,税務訴訟に強い弁護士が多数在籍しているだけでなく,当事務所と同グループに税理士法人もございますので,弁護士と税理士が同じフロアで働いておりいつでも協力を仰ぐことができます。
 ですので,税務訴訟についてお悩みの方は,朝日中央綜合法律事務所にご相談ください。

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