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税務訴訟

相続税評価における一時的空室部分の取扱い

2018.05.21

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1.総論

相続発生後、相続人には相続税が課せられることになりますが、相続財産に賃貸アパートなどの貸家が含まれている場合、その相続税評価額の算定は以下のとおり定められています(財産評価基本通達26、93)。

  • 貸家価額=自用の家屋の価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
  • 貸家建付地価額 =自用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

これらのうち、「借地権割合」は地域や場所によって異なり、また、「借家権割合」は国税庁が公示する財産評価基本通達によって一律に定められています。
一方、「賃貸割合」は、以下のように定められています(財産評価基本通達26)。

Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計(B)

その貸家の各独立部分の床面積の合計(A)

2.「空室」の扱い

上記の計算式からすると、所有不動産のうち賃貸されている部分が増えると、不動産の相続税評価額は減額されることになります。一般的に、不動産に借り手がついている間は、借主がその財産を活用しているため、その分、貸主にとっての財産価値が減少しているとされ、貸家及びその敷地(貸家建付地)の相続税評価額が減額されるのです。逆に、貸家が貸し出されていない場合、すなわち「空室」である場合は、「賃貸割合」が減り、相続税評価額の総額は増えることになります。

3.「一時的空室」の扱い

一方、一時的に空室になったにすぎない部屋(以下「一時的空室部分」といいます。)について、財産評価基本通達は、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる各独立部分がある場合には、その各独立部分の床面積を、賃貸されている各独立部分の床面積(B)に加えて賃貸割合を計算して差し支えありません。」(同26)と定めており、一時的空室については、借り手がついている場合と同様に相続税評価額を減額しても問題ないという扱いとなっています。

また、国税庁は、「一時的空室部分」の該当性について、「アパート等の一部に空室がある場合の一時的な空室部分が、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」部分に該当するかどうかは、その部分が、

  1. 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか、
  2. 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか、
  3. 空室の期間、他の用途に供されていないかどうか、
  4. 空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であったかどうか、
  5. 課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうかなどの事実関係から総合的に判断します。

との見解を表明しています。この総合的な判断が難しい場合、「一時的空室部分」該当性につき、納税者と国の間でしばしば争いが生じることになります。

4.裁判例

相続発生時、被相続人が所有する貸家に現に賃貸されていない空室部分(最も短い部屋でも5か月間の空室期間があった)があったため、その空室部分を「一時的空室部分」として貸家及び貸家建付地の賃貸割合に算入することができるか否かが争われました。

大阪高裁平成29年5月11日判決は、課税時期に現実に賃貸されていない場合には、相続税評価額の減額を行わないのが原則であって、一時的空室部分について評価減が認められるというのは例外的な取扱いに過ぎないとし、その上で、「例外的な取扱いが認められるか否かを判断するに当たっては、賃貸されていない期間(空室期間)が重要な要素となることは明らかである。そうすると、一時的空室部分該当性の判断に当たっては、現実の賃貸状況、取り分け、空室期間の長短を重要な要素として考慮しなければならないのであって、これを考慮せずに、本件各空室部分が「継続的に賃貸の用に供されている」状態にあるという理由のみで上記例外的な取扱いを認めることはできない。また、本件各空室部分の空室期間は、最も短い場合でも5か月であり、「例えば1か月程度」にとどまらずに、むしろ長期間に及んでいるといえるから、「一時的」なものであったとはいえない。」と判示し、納税者側の敗訴となりました。

5.まとめ

裁判所は、空室部分を「一時的空室部分」として貸家及び貸家建付地の賃貸割合に算入する扱いは、例外的なものにすぎないと判示し、さらに、一時的空室部分該当性については、空室期間の長短を特に重要な要素としたうえで、本件の空室の最短期間である5か月は「一時的」とはいえないと判示しました。
「一時的空室部分」該当性は、あくまで、国税庁が示した種々の要素を総合的に考慮して決定されることになりますが、今回の判決を受け、空室期間が5か月以上の長期間に及ぶものについては、より厳格な運用になることが予想されます。

相続税対策として賃貸アパートを建築することが盛んに行われていますが、空室部分が多いとその分相続税対策の効果が薄れることになりますので、計画的な対応が必要となります。

このトピックス記事執筆の弁護士

菊池 博道

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