損害賠償

損害賠償と税金について

1 はじめに

損害賠償に基づく賠償金を受け取った際に、税金は発生するのでしょうか。一見すると所得があり、所得税が発生するようにも思われるため、疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。そこで今回は損害賠償と税金についてご紹介いたします。

2 不法行為に基づく損害賠償の場合

<事例1>:突発的な事故の場合

XさんがYさんに殴られ、重傷を負い、入院費用、逸失利益(入院中の給料)等の損害賠償として200万円を受け取った場合

Xさんが受け取った損害賠償金は不法行為に基づく損害賠償金です。 この場合、200万円には所得税は発生しません(所得税法9条1項17号後段)。

非課税の理由は、不法行為により一旦マイナスとなっていた状態が損害賠償金によりゼロに戻っただけであり、利益が生じたわけではなく、利益とは言えないからです。 また、上記の理由に加え、身体への損害に対する賠償金について課税されることへの心理的な抵抗が大きいことも非課税の根拠と言われております。

<事例2>: 損害賠償金に損害の填補以外の意味合いがある場合

Xさんが、Yさんに殴られた際、Yさんが有名人であったため、通常の賠償金の相場が50万円~100万円であるところ、口外しない約束で損害賠償金との名目で500万円を受け取った場合

この場合、損害賠償の名目で500万円を受け取っていますが、全額非課税なのでしょうか。 この点については、損害を填補するためのものと客観的に認められるものに限り、非課税となると言われております(大阪地裁昭和54年5月31日判決)。

そのため、事例2では、500万円のうち400万円部分は損害の填補と客観的に認められるか問題があるため、所得税が発生する可能性がありますが、実際問題としてはどのような課税がされるかの判断は難しいところがあります。

3 債務不履行に基づく損害賠償の場合

  

では債務不履行に基づく損害賠償の場合には、所得税は発生するのでしょうか。

 

<事例3>:税金が発生しない場合:身体の損害

  

Y医師の医療ミスにより、Xさんに重大な後遺症が残り、労働能力の喪失等により1億円の損害を被り、損害賠償金として1億円を受け取った場合

この場合も、事例1と同様に、突発的事故による損害が回復しただけであり、利益が発生しているわけではないため、所得税は発生しません。

 

突発的な事故により身体に生じた損害に関する賠償金については、債務不履行であっても不法行為と同様に、その賠償金の中に実質的な利益が含まれていると評価されない限り所得税が発生することありません。

 

<事例4>:税金が発生する場合

  

Xさんが、その製造販売する製品の保管をY社に依頼していたところ、Y社のミスによる漏水により、製品が商品価値を失い、売却により取得できたはずの利益100万円を喪失し、損害賠償金として100万円を受け取った場合

この場合も100万円は損害賠償であるため、所得税が発生しないのでしょうか? 事例4の損害賠償金については所得税が発生します。 商品の売却により取得できたはずの利益(逸失利益)である100万円の賠償を受けることは、実質的には、商品が売れた状態と同様であり、通常の売買と同様に利益が生じているといえるため、税金が発生します。

ちなみに、損害賠償金の遅延損害金については雑所得として課税されると言われております(裁決平成22年4月22日)。

4 最後に

以上の通り、損害賠償金を受け取る際には、損害の内容や性質により課税対象となる所得とみるべきか、非課税とみるべきかが異なってきます。

そのため、課税、非課税に関する正確な判断を行うためには、税理士等の専門家の知識が必要となりますので、迷われた際は税理士等の専門家にご相談ください。

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