会社支配権紛争

同族会社における取締役選任決議不存在と制度的対応

第1 はじめに

 同族会社においては、「身内だけだから問題ない」と甘く考え、会社法に則った適切な取締役選任の手続を経ずに、取締役が選任されることがあります。
 そして、同族会社においては、支配権争いなどの人的関係に基づく内紛が、法律上の紛争として裁判所で争われることが少なくありません。具体的には、取締役選任に関する株主総会決議の不存在を確認するという訴え、すなわち、過去の事実関係または法律関係の存否を確定する訴えの形式で争われたりします。
 そこで、今回は、「同族会社における取締役選任決議不存在と制度的対応」というテーマについて、ご説明いたします。

第2 取締役選任に関する株主総会決議不存在とは

1 不存在事由の判断基準

 決議の不存在とは、外形的に総会の決議と認められない場合のみならず、手続的瑕疵が著しいため法律上不存在と評価される場合を含みます。
 これに対し、株主総会決議の取消は、①招集手続・決議方法の法令定款違反・著しい不公正(会社法831条1項1号)、②決議内容の定款違反(同条項2号)、③特別利害関係人の議決権行使による著しい不当な決議(同条項3号)に該当する株主総会取消事由がある場合に、広く認められます。
 つまり、決議不存在事由は、決議取消事由よりも大きい瑕疵である必要がある点で、訴訟提起の要件が厳しく、容易に利用することのできない制度といえます。

2 具体例

⑴取締役は、株主総会の決議によって選任されるのが原則です(会社法329条1項)。
 しかし、株主総会決議を経ず、決議があったかのように議事録が作成され、登記がなされたような場合(最判昭和38年8月8日)等が、取締役選任決議不存在の典型例となります。

⑵ その他に、①代表権のない取締役により招集された株主総会(最判昭和45年8月20日)、②一部の株主が勝手に集まって決議をした株主総会(東京地判昭和30年7月8日)、③株主に対する招集通知漏れが著しい株主総会(最判昭和33年10月3日)、④少数株主が株主総会の招集について裁判所の許可を得ているのにもかかわらず会社が同一議題について招集し決議をなした株主総会なども、株主総会決議があったものと評価することができないため、取締役選任決議不存在に該当します。

第3 株主総会決議不存在確認の訴え(会社法830条1項)

1 制度概要

⑴ 訴訟当事者
 被告は、決議をした会社であり(会社法834条16号)、確認の利益が認められる限り、誰でも原告となることができます。

⑵ 訴えの手続
 決議不存在の確認の訴えについては、提訴期間の制限はありません。

⑶ 判決の効力
 そして、当該訴訟で、原告が勝訴し、それが確定すると、不存在であることが第三者との関係でも確定します(会社法838条、対世効)。

2 裁判例(最高裁平成2年4月17日判決)

⑴ 事案の概要
 取締役を選任する旨の株主総会の決議が存在するものといえない場合に、当該取締役によって構成される取締役会の招集決定に基づき当該取締役によって構成される取締役会で選任された代表取締役が招集した株主総会においてなされた取締役選任決議は、いわゆる全員出席総会においてなされたなど特段の事情がない限り、法律上不存在であるとして事案。

⑵ 判旨
 「取締役を選任する旨の株主総会の決議が存在するものとはいえない場合においては、当該取締役によって構成される取締役会は正当な取締役会とはいえず、かつ、その取締役会で選任された代表取締役も正当に選任されたものではなく、(中略)、株主総会の招集権限を有しないから、このような取締役会の招集決定に基づき、このような代表取締役が招集した株主総会において新たに取締役を選任する旨の決議がされたとしても、その決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなど特段の事情がない限り(最高裁昭和五八年(オ)第一五六七号同六〇年一二月二〇日第二小法廷判決・民集三九巻八号一八六九頁参照)、法律上存在しないものといわざるを得ない。したがって、この瑕疵が継続する限り、以後の株主総会において新たに取締役を選任することはできないものと解される。」。

⑶ 考察  判例は、取締役選任決議に、一度不存在事由があると、その後、連鎖的に取締役の地位が否定されるという処理をしています。
 これに対し、決議の瑕疵が、取消事由に過ぎない場合には、決議取消の訴えが提起されても、当該取締役の任期満了により、原則として訴えの利益が消滅することになります。
 決議取消しの訴えの場合には、取引の安全が重視される傾向にあり、このことは、決議取消しの訴えについてのみ、裁量棄却が認められている(会社法831条2項)ことにも表れています。
 つまり、決議不存在確認の訴えは、決議取消しの訴えに比し、訴えの利益が否定されにくく、結果として、過去の取引行為の効力が否定されてしまうリスクが大きいといえます。

第4 結語

 このように、同族会社においては、適切な取締役選任決議が存在しないことに起因して、後々、会社支配権争いが生じた際に、選任決議不存在確認の訴えが提起され、連鎖的に取締役の地位が否定され、取引関係に多大な影響が及ぶことが想定されます。
 このような事態が生じないためにも、取締役選任を始め、会社内の各手続に法的に問題がないかどうかは、常にチェックしておく必要があります。
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