貸地・貸家明け渡し

賃料不払いを理由とする賃貸借契約の解除

賃貸借契約の終了事由としては、(1)合意解約、(2)解除、(3)更新拒絶、(4)解約申し入れが存在しますが、そのうち、アパートやマンションの賃貸人が直面する問題として一番多いものが、賃料の不払いを理由とする賃貸借契約の解除及び明渡しであるといえます。そこで今回は、賃料不払いを理由とする賃貸借契約の解除についてご説明します。

賃貸借契約の解除の概要

賃貸借契約は、賃貸人が賃借人に対し、ある物(土地や建物が典型例となります。)の使用収益をさせることを約束するとともに、賃借人がこれに対して賃料を支払うことを約束することによって成立する契約ですので、賃貸人に対し、約定の賃料を支払うことは、賃借人の義務(債務)となります(民法601条)。

一方、民法541条は、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」と定めています。
したがって、賃借人が、賃料不払いという契約違反(債務不履行)を犯した場合には、賃貸人は、その賃借人との間の賃貸借契約を解除することができるということになります。

賃料の不払いがあれば必ず解除ができるのか

では、賃借人が1回でも賃料の支払いを怠れば、必ず賃貸借契約を解除することができるというものなのでしょうか。この点につき、判例は、賃貸借契約は当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるため、賃貸借契約上の債務の不履行があった場合でも、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊するに至らない場合には、契約を解除することは認められないとしています(信頼関係破壊の法理)。

そして、いかなる場合に賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊したといえるかについては、賃料不払いの回数だけでなく、不払いの額、不払いの態様、不払いに至った事情、賃借人の支払意思・支払能力、賃借人の態度などの諸事情が考慮されます。

そのため、どれくらいの期間の賃料不払いがあれば賃貸借契約の解除ができるという明確な基準はありませんが、よほどの事情がない限り、1・2か月分の賃料不払いでは信頼関係が破壊されたとまではいえず、解除が認められる可能性は低いといえます。もっとも、逆にいえば、不払いの回数以外の事情によっては、不払いの回数が少ない場合であっても、解除が認められる可能性もあります。

解除の手続

賃貸人が、賃借人との間の賃貸借契約を解除するための手続としては、(1)相当の期間を定めて滞納した賃料を支払うよう催告したにもかかわらず、賃借人がその期間内に賃料を支払わないこと、(2)解除の意思表示が必要となります。

この点、どれほどの期間を定めれば、(1)相当の期間を定めたといえるかについては、1週間から10日もあれば十分であるといえます。 なお、判例においては、催告期間を定めない催告や相当でない催告期間を定めた催告も有効であり、催告後、客観的に相当期間が経過すれば契約を解除することができるとされています。

また、(2)解除の意思表示については、実務上、上記催告をする際に、「何日以内に支払わなければ契約を解除する」旨の意思表示を併せて行うことが多く、そのような場合には、改めて解除の意思表示だけを行う必要はありません。そして、催告や解除の意思表示があったか否かにつき争いになることを防ぐためにも、催告や解除の意思表示については内容証明郵便で行うことが望ましいといえます。

まとめ

以上のとおり、賃借人による賃料の不払いが存在するだけでなく、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されたといえる場合に初めて、賃貸人は賃貸借契約を解除することができるということになります。

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