貸地・貸家明け渡し

無催告解除について

 

賃借人が賃料の支払いを怠り、賃貸人及び賃借人間の信頼関係の破壊が認められる場合、賃貸人は、相当期間を定めて履行を催告した上で、賃貸借契約を解除することができます。では、この「催告」はいかなる場合にも必ず必要なものなのでしょうか。

無催告により解除ができる場合

 

この点につき、判例は、賃料不払いの事案ではないものの、「・・・当事者の一方に、その信頼関係を裏切って、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあった場合には、相手方は、賃貸借を将来に向って、解除することができるものと解しなければならない、そうして、この場合には民法541条所定の催告は、これを必要としないものと解すべきである。」(最判昭和27年4月25日)と判示しています。

また、賃料不払いの事案においては、特段の事情がない限り、無催告で解除をすることはできないと判断しているもの(最判昭和35年6月28日)や、長期間の賃料不払いがあった場合に無催告での解除を認めているものがあります(最判昭和42年3月30日、最判昭和49年4月26日)。

したがって、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為があった場合(=賃借人に著しい背信性が認められる場合)であれば、無催告であっても賃貸借契約を解除することが可能ということになります。そのような場合の例として、(1)相当長期間にわたる継続した賃料不払がある場合、(2)催告が全く無意味である場合、(3)催告をすることが賃貸人に酷である場合などが挙げられます。

無催告解除特約の有効性

これに関連して、賃貸借契約書において、賃借人に賃料の滞納があれば、催告を要しないで直ちに契約を解除することができる旨の特約を定めておくことが多々見られます。このような特約を、「無催告解除特約」といいます。

無催告解除特約に関し、判例は、「家屋の賃貸借契約において、一般に、賃借人が賃料を一箇月分でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的債権関係であることにかんがみれば、賃料が約定の期日に支払われず、これがため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合には、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である。」とし、既に5か月分の賃料を滞納しているケースについて、無催告解除を認めています。

したがって、無催告解除特約がある場合でも、当然に無催告での解除が認められるわけではなく、無催告であっても不合理ではない事情、すなわち、賃借人の背信性が必要となります。もっとも、判例上、無催告解除特約がある場合には、無催告解除特約がない場合と比べて、必要とされる背信性については緩やかに解されているといえます。なお、そうであっても、催告をした上で解除する場合に比べれば、より強い背信性が要求されることにご注意ください。

まとめ

 

以上、賃料不払いがあった場合の無催告解除についてご説明をしましたが、無催告解除が認められるのは、背信性の程度が強い例外的なケースにとどまりますので、解除の効力につき争いとならないように、まずは催告をした上での解除を検討する方がよいと思います。

また、専門家にご相談することをおすすめ致します。

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