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貸地・貸家明け渡し

賃料減額請求5

2018.10.29

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1 サブリース契約について

 ⑴ サブリース契約の意義

   

サブリース契約とは、本来は転貸借契約を意味しますが、一般には、不動産賃貸業等を営む者が、建物の転貸事業を行うため、建物所有者から建物を一括して賃借することをいいます。

 

⑵ サブリース契約の特徴

   

サブリース契約では、建物賃借人(不動産賃貸事業者)が、建物所有者に対し、実際の転貸事業の収入にかかわらず毎月一定の賃料を支払うとの約定(いわゆる「家賃保証」)をする場合が多いことから、建物所有者は、自らは建物の入居者募集や入居者との契約管理等を行う必要がなく、毎月一定の賃料収入を得ることができるという特徴があります。

   

もっとも、サブリース契約も賃貸借契約であることから、借地借家法第32条第1項に基づく賃料増減請求をすることが可能であり、転貸事業における賃料収入が減少傾向にある場合には、建物賃借人である不動産賃貸事業者が、建物所有者に対し、賃料減額請求をすることもあります。この点について判示した重要な判例が、最判平成15年10月21日民集57巻9号1213頁(以下「本件判決」といいます。)です。

2 本件判決の説明

 

⑴ 事案の概要

ア 土地所有者である会社(以下「X」といいます。)が、不動産賃貸業等を営む会社(以下「Y」といいます。)からサブリース事業の提案を受け、XとYは、平成3年4月、XY間において、XがYに、当該土地上に新築する建物を賃貸する旨の賃貸借契約(以下「本件契約」といいます。)を締結しました。

    

本件契約では、賃料につき、建物完成時から3年を経過するごとに10%の値上げをするとの賃料自動増額特約のほか、急激なインフレ、その他経済事情に著しい変動があった結果、値上げ率等が不相当になったときは、協議の上、値上げ率を変更することができるとの調整条項が定められていました。

  

イ Yは、Xに対し、本件賃貸部分の引渡しを受けた後、本件契約で定められた賃料を支払っていましたが、オフィス賃料相場の下落等を理由に、賃料減額の意思表示をし、その後、当初の約定賃料よりも低額の賃料の支払を続けました。

    

これに対し、Xは、上記賃料自動増額特約により増額した約定賃料等と支払賃料等との差額分及び遅延損害金を敷金から充当し、Yに対し、敷金の不足分の補充を請求しました。

  

ウ 本件は、XがYに対し、本件契約はいわゆるサブリース契約であり、通常の賃貸借契約とは異なる性質を有することから、借地借家法第32条が適用されない、本件賃料自動増額特約により賃料が増額したと主張して、敷金の不足分と未払賃料の支払を求めたのに対し、YがXに対し、借地借家法第32条1項に基づく賃料減額請求により賃料が減額されたと主張して、本件契約に基づく賃貸部分の賃料額の確認を求めたものです。

⑵ 主な争点

   

本件契約の賃料自動増額特約によれば、賃貸人は、一定の期間の経過により、賃借人に対して、自動的に増額した賃料を請求することができます。

   

しかし、他方で、借地借家法第32条1項には、賃借人から賃貸人に対する賃料減額請求権が定められています。

   

このことから、賃料自動増額特約が付されているサブリース契約にも借地借家法第32条1項が適用され、賃借人は賃貸に対して、賃料減額請求をすることができるか、という点が問題になりました。

 

⑶ 判旨

  

本件判決は、「本件契約における合意の内容は、第1審原告(X)が第1審被告(Y)に対して本件賃貸部分を使用収益させ、第1審被告が第1審原告に対してその対価として賃料を支払うというものであり、本件契約は、建物の賃貸借契約であることが明らかであるから、本件契約には、借地借家法が適用され、同法32条の規定も適用されるものというべきである。

   

本件契約には本件賃料自動増額特約が存するが、借地借家法32条1項の規定は、強行法規であって、本件賃料自動増額特約によってもその適用を排除することができないものであるから(最高裁昭和28年(オ)第861号同31年5月15日第三小法廷判決・民集10巻5号496頁、最高裁昭和54年(オ)第593号同56年4月20日第二小法廷判決・民集35巻3号656頁参照)、本件契約の当事者は、本件賃料自動増額特約が存するとしても、そのことにより直ちに上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない。」((X)(Y)との記載は筆者による。)と判示しました。

そのうえで、本件判決は、本件契約がいわゆるサブリース契約であること及び本件契約における賃料額及び本件賃料自動増額特約等に係る約定が、第1審原告(X)が第1審被告(Y)の転貸事業のために多額の資本を投下する前提となったものであって、本件契約における重要な要素であったことを前提に、「これらの事情は、本件契約の当事者が、前記の当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから、衡平の見地に照らし、借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求の当否(同項所定の賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び相当賃料額を判断する場合に、重要な事情として十分に考慮されるべきである。」と判示しました。

 

⑷ 本件判決の意義

本件判決は、Yの主張に沿ってサブリース契約においても賃料減額請求をする余地を認めたうえで、サブリース契約の性質やXによる投下資本等については、具体的に賃料を減額するか否か、いくら減額するか等を考慮する際の重要な事情として考慮するという枠組みを採用しました。

本件判決以降も、このような枠組みで判断がなされており、建物のサブリース契約において賃料減額請求に関する規定が適用されること及びサブリース契約の性質や賃貸人の投下資本が考慮されることが一般的になったといえます。

3 まとめ

  

以上より、建物のサブリース契約を検討する場合には、前述したサブリース契約の特徴とともに、将来の賃料減額請求の可能性も視野に入れておく必要があります。

  

サブリース契約に関連した訴訟は、本件判決のように、バブル崩壊の前後など経済情勢が大きく変動した場合に問題になりますが、経済情勢の変動が緩やかであっても、時間の経過とともに不動産の価格や賃料の相場が変化することから、このような賃料減額請求がなされる事例は今後も少なくないと思われます。

  

そのような場合には、本件判決を念頭に置いて適切に行動することができるよう、専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。

このトピックス記事執筆の弁護士

佐久間 洋介

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