離婚の方法

離婚実務マニュアル

第1

離婚法の基礎知識

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離婚の方法

離婚の方法としては、(1)協議離婚(民法第763条)、(2)調停離婚(家事事件手続法244条)、(3)審判離婚(同法284条第1項)、(4)裁判離婚(民法第770条)があります。
(1)

協議離婚

夫婦が婚姻を解消(離婚)することを合意し、市区町村長に離婚届出書を出し受理されることにより成立するものを、協議離婚といいます。
結婚(婚姻)の裏返しの手続で離婚を認めるといった比較的自由な制度を取っている国は、先にも述べた通り多くはありませんが、日本では離婚の大半がこの方法でなされています。
(イ)
実質的要件
(a)
離婚意思
婚姻関係を解消しようとする意思(離婚意思)がまず必要となります。
そして、この離婚意思については、夫婦として共同生活を維持することを完全に止めてしまうまでの意思を必要とするか(実体的意思法)、単に、離婚の届出をなす意思で足りるとするか(形式的意思法)との考え方の違いがあります。
この考え方の違いは、債権者等からの追及を逃れる等の意図からなされる仮装離婚の場合の有効、無効の判断に影響します。
現在の実判例では、法律上の婚姻を解消するため届出の意思があれば有効との判断に立っているようで、一応形式的意思法の立場といえます。
(b)
離婚意思の合致
離婚意思は、離婚届出の時点で存在していることが必要となります。
そこで、一時の感情のもつれから一旦離婚届出書を作成したものの、相当期間放置された後、一方がその届出書を提出するといった場合、他方は届出時には離婚意思を失っている場合がままあります。この場合、届出書作成から届出まで数ヶ月といった長い期間があり、またその間、夫婦としての通常の生活が営まれていた等の事実が認められる場合は離婚が無効とされることがありますが、そのような認定ができない場合は、一方が意思を失ったと主張しただけでは離婚は有効として処理されます。
そのため、上記の事情で過去に離婚届出書を作成している等の場合は、役所の戸籍係で「離婚届不受理申出」の手続をしておくべきでしょう。
尚、離婚届出書作成後、役所へ郵送手続をした場合に限り、離婚届が役所に到達する前に一方が死亡しても有効な離婚として扱われます(戸籍法第47条第1項)。
(ロ)
形式的要件
協議離婚は、離婚意思が合致した夫婦が市区町村役場に置かれている離婚届出用紙に必要事項を記載、押印し、それを上記役所に届け出て、戸籍係が中身を確認し受理した時点で成立します。尚、日本国内であればどこの役所においても受け付けられますが、本籍地以外で届け出る場合には戸籍謄本が必要となります。
尚、戸籍係は離婚意思等の内容についてのチェックは一切なさず、届出書の形式チェックをするに過ぎません。そのため、届出方法としては、本人出頭の必要はなく、郵送や第三者委託でも問題はなく、届出書については代書、代印も可能です。
(ハ)
協議離婚の無効取消
協議離婚については、既に述べた通り離婚意思の合致が要件となるため、この意思が一方でも欠けた場合は無効となります。また、詐欺、強迫により離婚がなされた場合は取り消すことが可能です(民法第764条、第747条)。
そして、これらの手続は、原則として家庭裁判所に「離婚無効確認」「離婚取消」請求の訴えを起こすことになります(人事訴訟法第2条第1号)。
また、調停申立をなし、相手方が無効、取消について争いない場合は、合意に代わる審判でも可能です(家事事件手続法第277条第1項)。
離婚無効として認められる場合としては、一方が離婚届を偽造した場合や、前述のように相当以前に作成された離婚届出書を流用しての離婚の場合等が考えられます。
しかし、仮装離婚の場合は、前述の通り有効と解されています。
また、偽造等で届け出られた無効な離婚でも、相手方がそれを争わず、離婚を前提とする慰藉料請求等をなした場合は、追認したものとして有効に扱われることもあります。
(ニ)
事実上の離婚
夫婦間で離婚意思が合致し、別居し、協力関係及び夫婦の関係が完全に消滅しているにも関わらず離婚届け出がなされていない状況を、事実上の離婚といいます。
この場合は法律上の離婚の効果は得られないため、財産分与の請求はなし得ません。しかし、一方が請求すれば、前述の婚姻費用分担請求がなし得ると共に同居請求も起こし得ます。また、一方が死亡した場合、相手方は、法律上は配偶者として扱われるため、相続をすることにもなります。
(2)

調停離婚

夫婦間で離婚の協議がまとまらない場合、一方当事者から家庭裁判所に離婚調停の申立が可能となります。そこで離婚につき合意が成立し、裁判所に於いて調停調書が作成されれば、判決と同様の効果を持つこととなるため(家事事件手続法第268条第1項)、調停調書が作成された時点で離婚が成立します(ただし、離婚が成立したことを戸籍に反映させるためには、離婚調停の申立人が、調停成立から10日以内に役所に離婚した旨の届出をする必要があります。)。
これを調停離婚といいます。
離婚は身分上の行為で代理ができないものと考えられているため、弁護士等に依頼している場合でも、離婚調停成立時点では夫婦双方の本人出席が必要となります。
また、この調停では、親権者指定、子の養育費、財産分与等の問題も併せて申し立てられる場合が多く、通常、調停が成立する場合は、多くの場合これらの問題も一緒に解決することとなります。
(3)

審判離婚

調停手続の場で、双方が離婚については合意しているものの、財産分与や子供の養育費等について合意ができない場合や、他の合意条件が家事審判の基本理念に反する場合、更には離婚意思は明確であるにもかかわらず病気等の理由により裁判所への当事者の出頭が不可能で調停が不調となる場合など、これら全てを訴訟手続にまわすことは、費用、時間等の関係でも無駄になりかねません。
そこで、このような場合、家事事件手続法第284条第1項により、裁判所の判断で調停に代わる審判による離婚が認められる場合があり、これが審判離婚といわれるものです。
この場合、当事者が異議の申立を2週間以内にすれば審判の効力が失われ、訴訟手続で処理されることとなります(家事事件手続法第286条)。
また、上記期間中に異議の申立がなければ、審判に判決と同様の効果が与えられるため(家事事件手続法第287条)、審判書をもって市区町村長に届け出ることで離婚手続が完了することとなります。
(4)

裁判離婚

(イ)
調停前置主義
民法は第770条で、一定の原因がある場合に限り、協議離婚が成立しない場合には訴訟を起こすことができ、裁判所は、理由が認められれば離婚の判決がなし得ることとなっており、これを裁判離婚といいます。
しかし、離婚等の家事事件は、性質上、訴訟での解決になじみにくい面があり、できる限り話し合いによる解決が望ましいとのことから、家事事件手続法第257条第1項により調停申立をするよう求められており、調停申立をすることなく訴訟を起こした場合は、裁判所は事件を調停にまわすこととなっています(同法第257条第2項)。これを調停前置主義といいます。
但し、相手方が所在不明であることが明白な場合や、一旦調停を申し立て家庭裁判所で話し合われたものの合意できず、申立を取り下げ、当初より調停が行われなかったとされるような場合は、調停をなさずとも訴訟の受付がされる場合があります(家事事件手続法第257条第2項但し書)。
(ロ)
手続法の特殊性
(a)
通常の民事事件(不法行為での損害賠償事件、貸金請求事件等)の訴えについては「民事訴訟法」の規定に従い処理されることとなり、裁判所の管轄も請求額等で簡易裁判所乃至は地方裁判所に振り分けられています。
しかし、離婚等の身分関係に関する訴えは「民事訴訟法」の特別法に当る「人事訴訟法」の規定に従うこととなっており(同法第2条)、同法が平成15年7月16日(施行は平成16年4月1日)に全面改正されたことにより、訴えを取り扱う裁判所が地方裁判所から家庭裁判所に変更されています。
(b)
離婚訴訟等の場合、人事訴訟法第19条で一部民事訴訟法の規定を排除するため、欠席判決(民事訴訟法第159条)は認められず、相手方が不出頭でも証拠調べが必要となります。
また、職権で、当事者の主張しない事実についても調査したり(人事訴訟法第20条)、離婚の訴えと共に提起した親権者指定や財産分与請求等の付帯請求について、職権で家庭裁判所調査員に調査させたりすることができる(同法第33条)等の特殊な手続があります。
尚、平成15年の人事訴訟法の改正に伴い、従前であれば不可能であった訴訟上の和解、請求認諾等の手続でも離婚がなし得ることとなっています(同法第37条)。
(ハ)
離婚原因
民法は、第770条第1項で、離婚の訴えが起こせる原因としては、(a)不貞、(b)悪意の遺棄、(c)3年間の生死不明、(d)回復の見込のない強度の精神病、(e)その他婚姻を継続し難い重大な事由、の5つに限定しています。
そして、(a)から(d)の原因は(e)の例示となっているものと考えられており、同法第770条第2項により、(a)から(d)までの原因について事実として認められる場合でも、裁判所の裁量で離婚が認められない場合があることには注意が必要です(民法第770条第2項)。
また、裁判では、(a)から(d)までの原因だけを主張し、裁判所がそれを否定した場合、同じ事実関係に基づき(e)を原因として別に訴えを起こすことは認められていません(人事訴訟法第25条第1項)。
そのため、訴訟を起こす場合は、(a)から(d)の原因の主張だけでなく(e)の主張もしておいたほうが良いといった問題もあります。
(a)
不貞行為
不貞行為とは、夫婦間の貞節義務に反する行為であり、配偶者以外の異性と性交渉を持つことがその代表的な場合にあたります。そして、これはあくまで自由な意思のもとになされることに限られ、強姦の被害に遭った等という場合は不貞行為とはいえません。事実上の離婚後、一定期間経過した後の異性との性交渉は不貞とはならない場合があります。また、特定の異性とだけ性交渉を持つといった必要性はなく、多数と関係した場合も問題になり得ます。
不貞行為は、訴え提起時まで継続している必要はなく、過去の事実であっても問題となります。しかし、一方の不貞行為が止み、夫婦としてそれなりの平穏な日々が一定期間続いた後に、過去の不貞を蒸し返して請求することは認められない場合があります。
また、不貞行為は他の離婚原因に比べ重大な義務違反と考えられているため、配偶者側の問題のある生活態度等が引き金となり不貞に至ったような場合でも、不貞行為が認められれば、多くは離婚請求が認められます。
(b)
悪意の遺棄
正当な理由もなく、婚姻の基本となる民法第752条の同居、協力、扶助義務を行わない行為をいいます。
一方が家を出て、残された者の生活費等の面倒を一切見ずに相当期間放置したり、逆に相手方を家に入れずに放置したり、更には、一方が仕事の関係で転勤した場合に、他方に同居するよう求めても理由もなく拒む等といった場合はこれにあたります。
また、悪意とは、夫婦の共同生活を完全に止めてしまうといった積極的な意思をいい、ためにそれを裏付けるだけの外形が必要となります。そのため、家を出てしまった期間等も重要となりますが、状況如何では数ヶ月といった短期間の実績だけでもこれが認められる場合があります。
但し、この原因は評価に微妙なところもあるため、この悪意の遺棄の一本だけで主張するよりは、(e)の婚姻を継続しがたい事由の一つの状況として、他の問題と共に遺棄の事実をあげる方が認められやすい場合があるかと思われます。
(c)
3年以上の生死不明
生死不明とは、単なる行方不明を言うのではなく、生きているか死んでいるかを確認できない場合をいいます。
そのため、残った配偶者や親族に所在は告げないものの電話連絡があったり、知人がどこかで見かけたことがあるといった情報があるような場合は、全くこれに当りません。戦争や震災等の特異な社会状況下以外では、立証等の関係でこれを単独の原因とすることは難しいと思われます。(b)か(e)を原因とし、その一事情として問題とする方が現実的であると思われます。
また、これを原因として離婚を認める判決が出ても、その後、判決前に相手方が死亡していた事実が判明した場合は、判決があっても離婚は無効となります。
尚、民法第30条では、7年以上生死不明の場合、申立により失踪宣告がなされることとなり、その結果、死亡したものと見做されるため、これでも婚姻関係を終結させることができます。しかし、この場合、生存が判明し上記宣告が取り消されると、当然、婚姻関係が復活するため、長期の生死不明の証明が可能な場合は離婚訴訟を起こす方がよいと思われます。
(d)
回復見込みのない強度の精神病
民法が、一方配偶者の精神病を離婚原因の一つにあげているのは、婚姻の本質ともいえる相互協力義務(民法第752条)が充分になし得ないといったことによるものです。
そのため、単に一方がうつ病で治療を受けているというだけでは認められず、その精神病の症状が重篤で、精神面での夫婦としての協力状況が充分に維持できないといったことが重要となります。
また、精神病とは言いがたい薬物中毒症やヒステリー等の場合は、これを原因とするのではなく、程度によっては(e)の婚姻を維持しがたい事由として申し立てるべきでしょう。
尚、精神病を原因とする場合、相手方は基本的に自活力を失っている場合が多く、離婚すれば直ちに生活にも影響が生じること等から、民法第770条第2項を理由に認められないといった事例も見受けられます。
そこで、最近では、強度の精神病で離婚を認めざるを得ない場合も、申立をなす配偶者側が相手方の将来の生活、治療につき何らかの具体的方法(例えば、一定期間生活費、治療費を支給する等)を提示していることを条件に認めていく方向にあります。
しかし、これらの配慮もないまま訴えを起こすと、この原因については前述のように離婚が否定される場合も充分あることに注意すべきでしょう。
(e)
その他婚姻を継続しがたい重大な事由
裁判所に於いて離婚が認められるものとして、先に述べた(a)から(d)までの典型的な原因のほかに、夫婦としての同居、相互協力扶助(民法第752条)といった共同生活体を維持することが困難なまでに関係が破壊されているような場合にも認めるとされるのが、この「婚姻を継続しがたい」と言われるものです。
ところが、このような夫婦関係が「破綻」してしまったと判断される基準は、必ずしも明確、画一化したものはなく、双方の離婚に関する意思、態度、子供の有無、その年齢、信頼関係の破壊の程度、経済状況、身体状況、性格等一切の事情から総合的に検討、判断されるものです。
尚、その具体的なものとしては、長期の別居、離婚意思の強さ、精神病以外の重大な病気や身体的、精神的障害、一方の虐待、暴力、一方の家庭を無視した宗教活動行為、性交不能・拒否、勤労意欲の欠如、多額の借金、親族との関係、性格の不一致等が考えられます。しかし、これらについては、単一のものだけで認められる場合は少なく、特に、離婚問題で一番多くあげられる性格の不一致だけでは婚姻を継続しがたい事由と認められることはなく、他の多くの要素と併せて認められるものであると考えておいた方がよいでしょう。
また、経済的に弱い側や未成熟の子供ら等に対する配慮から、夫婦関係が破綻していたとしても認められない場合が多いことにも注意しておく必要があります。
(ニ)
有責配偶者からの離婚請求
民法第770条第1項第3乃至5号(先の離婚原因(c)(d)(e))の規定を見ると、基本的には、夫婦関係が破綻した場合は離婚が認められるとの破綻主義認識に立っているように見受けられます。
しかし、昭和62年9月2日の最高裁判所判決が出されるまでは、破綻の原因を作った側(不貞、悪意の遺棄、暴行等をなした側)からの離婚請求は、いかに夫婦間が破綻していようとも信義誠実の原則からして認められないとして、請求が認められないこととなっていました。
そのため、夫が家を出て、別の女性と10年、20年と生活を続けその間に子供も生まれ、また、夫婦間の子供も成人に達し独立した生活を営むまでになっているにも関わらず、妻が一切離婚に応じないためそのままとなっているケースがあり、夫が死亡すれば、感情面も手伝って相続問題が著しく混乱するといったパターンが見かけられ、社会的にも問題とされました。
ところが、昭和62年の前記最高裁判所判決により、一定条件の下では有責配偶者からの離婚も認められることとなり、このような歪な夫婦関係の解消が一定条件で可能となっています。
そして、この判決では、離婚が認められる条件としては、長期間の別居という外形上からも明らかな夫婦関係の破壊、夫婦の間に未成熟の子がいないこと、更には、有責配偶者が残された配偶者に、離婚まで、更には離婚後も経済的な面での生活の安定を与えている状況にあること等を求めています。
尚、別居期間は概ね10年以上という考えがありますが、期間については必ずしも絶対的、画一的基準はありません。
そして、上記最高裁判所判決後は、実務の面でもこの基準によって処理されていると思われますが、有責配偶者からの離婚請求が全面的に認められたものではなく、基本は従前の考え方であり、前記条件にあてはまる場合のみ認められるものとの考え方が必要であると思われます。