離婚の効果

離婚実務マニュアル

第1

離婚法の基礎知識

集合写真

離婚の効果

(1)

人格的効果

(イ)
離婚と氏
民法は第750条によって、婚姻した場合、夫婦はいずれか一方の氏を称することを求めています。
その結果、婚姻関係を解消する離婚に当っては、民法第767条第1項によって、婚姻で氏を変更した者は婚姻前の氏に戻る(復氏)こととなり、これが原則となっています。
しかし、離婚届を出した日から3ヶ月以内であれば、復氏する側が婚姻中の氏をそのまま使用する旨届け出るだけで、婚姻中の氏を継続して使用できることとなります(民法第767条第2項)。そして、多くの場合は、離婚届出をする際に、復氏する側が、復氏するか婚姻中の氏を継続するかを選択しています。
また、戸籍については、復氏する場合は婚姻前の戸籍に戻るのが原則で、継続する場合は自動的に新戸籍が作られます。
なお、親権者が復氏しても、子の氏は当然には変更されません。よって、子の氏も親権者と同一に変更するためには、親権者が家庭裁判所に子の氏の変更を申し立てる必要があります。
(ロ)
姻族関係終了
姻族とは、婚姻という人為的な行為の結果生じる配偶者の血族らのことをいい、民法第725条第3号では、三親等間までの姻族(配偶者の両親、祖父母、兄弟、その子ら)を親族として規定しており、これらの者とは互助義務(民法第730条)、扶養義務(民法第877条)等の関係が生じます。
そして、離婚はこの婚姻関係の解消行為であるため、民法第728条第1項により、離婚と共に自動的に姻族関係も終了することが定められています。
尚、配偶者死亡の場合も婚姻関係は終了しますが、この場合は姻族関係は自動的には終了せず、終了させたい場合はその旨の意思表示をする必要があると共に、市区町村長にその旨の届出をする必要があります(民法第728条第2項、戸籍法第96条)。
(2)

財産分与請求権

民法は第768条第1項で、離婚に伴う効果として、離婚した者の一方は相手方に対し財産の分与を求めることができる旨定めています。
そして、この請求権には、①婚姻中に協力して作り上げた財産の清算、②離婚後の経済的に弱い立場の者の扶養、③離婚原因を作った有責配偶者に対する慰謝料、といった三要素が考えられます。そして、ここでは、①②の問題を先に述べることとし、慰謝料請求権は別項目で取り上げることとします。
また、財産分与については、家事事件手続法別表第二の四の事件となるため、協議がまとまらない場合は調停、審判で処理が可能であると共に、人事訴訟法第32条により、離婚裁判の附帯処分として訴訟での解決も可能なものです。
(イ)
財産関係の清算
婚姻中の夫婦の財産としては、婚姻前の各人の収入で得たものや相続によって得たもの等、名実共に一方が所有する財産(特有財産)のほかに、名実共に夫婦共有の財産や、名義は一方のものとなっているものの婚姻中の夫婦の協力で得た財産があります。
そして、清算の対象となるのは、あくまで前記のうち特有財産を除いたものとなります。
しかし、結婚後に購入した不動産等でも、購入資金の一部に結婚前の収入や遺産によるもの等が含まれることがあり、特有財産の排除についても難しい問題が生じることがあります。また、清算対象となる不動産については、住宅ローン等の債務が付いている場合があり、この債務も当然清算対象となることから、評価等が問題となります。
更には、近時の判例等では、近い将来に受け取る予定の退職金や将来の公的、私的年金類についても一応対象とする傾向があるため、これらの評価は難しく、離婚にあたっては、子供の問題とこの財産関係の清算が最大の争点となることが多く見受けられます。
(ロ)
扶養
財産分与としては、財産関係の清算のほかに、病気、高齢等で経済的自立が難しい場合の離婚後の各配偶者の扶養の面から、財産分与が認められる場合があります。
これは、財産の清算や慰謝料だけでは経済的弱者の側の配偶者の生活維持が困難な場合に補充的になされており、全ての離婚に伴う経済的清算について問題となるものではありません。
そして、扶養分としての財産分与が考慮される具体例としては、高齢、病気、未成熟の子供の監護等で、そもそも、一方配偶者が自立して収入を得ることが困難な場合や、離婚後の自立をするまでの一定期間の援助等といった場合に認められているようですが、働く能力、環境があるにもかかわらず、経済的に全く自立しようとしないような者にまでは考慮されないこととなります。
また、いつまでの扶養を考える必要があるかといった点では、高齢や難治性の病気の場合は死亡までとなり、子供の監護の場合は子供の手が離れるまで等、一定の期限が考慮されます。
そこで、これらを考慮し、一時金で処理するのか、場合によっては養育費等の場合のように月払い、年払いでの解決が考えられることとなり、画一的な基準等はないものと思われます。
(ハ)
財産分与額の認定と実現
財産関係の清算としての分与に関しては、まず基礎となる各財産の評価が問題となり、不動産等、最悪の場合は鑑定等が可能なものはともかくも、近い将来の退職金や年金等が要求対象となると、全体の中で何らかの解決をしていくしかない場合が生じるものと思われます。
また、分与額の認定の基礎となる割合については、以前は、専業主婦の場合は3分の1、共稼ぎや家業手伝いの場合は2分の1といった考え方がされた時期もあったようですが、現実には、実務上、原則平等として扱われており、配偶者の職業の有無等では変わらない扱いのようです。
但し、一方が医師等の資格、能力の結果大きく財産を形成したといった場合は、上記原則は必ずしも適用されず、能力等を個別に考慮して寄与割合が認められることがあります。
財産分与額等は、通常、協議離婚の際は併せて話し合われ解決する場合が多く、この場合は、後日の紛争防止のため、必ず分与に関する契約書が作成されることが望ましいです。
しかし、離婚そのものは協議が調っても財産分与等の合意がなされない場合や、離婚そのものも合意できない場合は、財産分与については、家事事件手続法第244条により、家庭裁判所に調停申立をなし解決を図ることとなります。
そして、調停が調わない場合は、離婚が既に成立している場合には審判の申立を、離婚も未処理の場合は、離婚の訴えと共に財産分与の訴訟を起こせることとなります(人事訴訟法第32条)。
いずれにしても、最終的には裁判所が「一切の事情」を考慮して認定してくれることとなります。
(ニ)
除斥期間
財産分与請求権については、民法第768条第2項但し書により、離婚の時から2年以内に請求をしなければ請求できなくなると決められています。
離婚請求と共に財産分与を調停、裁判等で請求し解決している場合は問題ありませんが、先に協議離婚や調停離婚だけを成立させ、財産分与を放置していると、離婚後2年で請求し得なくなることには注意が必要です。
また、協議や審判、判決等で具体的財産分与が確定している場合は、その具体的請求権(金銭や不動産引渡し等)は一般の債権と考えられ、確定後10年間は消滅時効にかからないため、相手方が履行しない場合は請求することができます。
(ホ)
税法上の問題
財産分与の協議、審判等で財産を取得する場合、取得する側は贈与税等の心配は必要ありません。
但し、財産分与に名を借りて正常な分与額以上のものを得る場合は、贈与とみなされる危険があるため、注意が必要です。
また、後に述べる慰謝料については、財産分与の一部と見るか不法行為と見るかの問題はありますが、不法行為と見られても、個人間の処理として非課税対象の所得となるのではと思われます。
次に、財産を分与する側についてですが、現金で分与される場合は課税されませんが、不動産を分与する場合、その不動産取得時期より分与時の方が価格が上昇している場合、その価格上昇部分について譲渡所得税が課税されるという問題が発生するため、気を付ける必要があります。
共同で形成した財産の清算で、対価性を有していないことからして、このようなところで譲渡税が課税されることには、一般常識からすると納得しがたい面もありますが、税務署のこの判断は最高裁判所の判例(昭和50年5月27日判決)でも是認されているため、財産分与の協議をする際には充分な注意が必要と思われます。
(3)

慰謝料請求権

(イ)
財産分与との関係
配偶者の有責行為(不貞、暴行等)の結果離婚せざるを得なくなった場合、慰謝料請求が認められます。
そして、民法第768条第3項では、「その他一切の事情」の中にこの有責行為も含まれると考え、広い意味での財産分与の一つと考えられます。
しかしながら、有責配偶者に対する慰謝料請求は、有責行為に伴う精神的損害等に対する損賠賠償に当たることから不法行為と考え、判例等では、財産分与の協議等が調っていても、それで有責行為についてまでまかなえない場合は別途慰謝料請求が認められる、としています。
また、財産分与は前述の除斥期間で2年間しか請求し得ませんが、慰謝料については、不法行為のため3年間は消滅時効にはかかりません。但し、時効の起算点は、離婚の時ではなく有責行為の事実を知った時からで、この点は気を付けておく必要があります。
また、請求手続についても、財産分与は、調停不調後は家庭裁判所の審判となりますが、慰謝料については、離婚と完全に別になす場合は、調停をなさず当初から地方裁判所に訴訟を起こすことも可能です。
(ロ)
慰謝料額
有責行為としては、不貞行為、悪意の遺棄、暴力、援助協力義務違反、性交渉拒否等があげられますが、行為のパターンで慰謝料額が決まることはなく、双方に有責行為があれば、その程度、婚姻期間、子供の有無、経済状況等あらゆる要素により認定されます。
慰謝料額については、別に法令や裁判所等で具体的基準が定められているものではなく、また、常時、判例等の収集、分析がなされているわけではないものの、実務上の感覚からすれば平均して200万円前後で、婚姻期間が1年程度までの短いものであったり有責性の程度が低いとかであった場合、100万円以下の場合も充分あり得ます。また一方、純粋に慰謝料だけでの評価では最高500万円程度までではないかと思われます。
また、双方に有責行為があり、どちらもどちらというような場合は請求が否定される裁判例もあり、双方に問題があると、その程度によって問題が生じるようです。
(ハ)
不貞行為の相手方に対する請求
不貞行為は、その結果、他方の配偶者に多大な精神的苦痛を与え、家庭の平穏を侵害しているもので、有責行為の類別の中でも一番責任追及が厳しいものと思われます。
そして、相手方である第三者が、結婚している事実をまったく知らず、かつ知らないことに過失がない場合以外は、いずれの側から交渉を持ちかけたか等といったことは関係なく、家庭の平穏を乱したものとして民法第709条の不法行為責任を有することとなります。
また、この不法行為は、不貞行為の結果夫婦が離婚しなくても成立しうるものであることには注意が必要です。
一方、夫婦の関係が完全に破綻し、長期に渡り別居状態が続いているような場合は、結婚をしている事実を知って付き合ったとしても、不貞行為による慰謝料支払いの責任を負わない場合もあります。
尚、この場合の認められる慰謝料としては、多くが100万円から300万円程度と思われますが、離婚に伴う夫婦間での慰謝料額が高額な場合は慰謝料自体が否定される場合もあり、また、不貞に至る経緯が配偶者側の主導で、第三者の立場からして不貞に至る経緯がやむを得ない場合等では、50万円程度の低額の慰謝料例もあるようです。
夫婦の問題に関連し、第三者に慰謝料を請求するといった問題だけに、内容、程度等により評価に微妙な面があることには気を付ける必要があると思われます。
(4)

子の扱い

(イ)
親権、監護権
(a)
親権
親が未成年の子に対して有する身分上及び財産上の養育保護を内容とした権利義務のことをいい、婚姻中は夫婦が共同して行うことが求められています(民法第818条第3項)。
しかし、夫婦が離婚した場合は共同で行うことが無理であるため、民法第819条第1項により、協議離婚の際に父母いずれかを親権者に指定することが求められています。そして、裁判離婚の場合は、離婚を認める際の裁判所が親権者の決定もなすこととなっています(民法第819条第2項)。尚、この場合、子が満15歳以上の場合は必ず子の意見を裁判所が聞いた上で決めることが求められています(人事訴訟法第32条第4項)。
(b)
監護権
親権のうち、子の身分上の養育保護(子の教育義務)に関する部分の親の権利義務を監護権といいます。そして、これについては、民法第766条第1項により、離婚の際に協議することとなっています。しかし、通常は、親権の一部に当るため、親権者の選定がなされれば自動的に決まることとなります。
(c)
親権、監護権の分属
前述のように、監護権は親権の一部となるため、通常は夫婦いずれかの側に帰属するものです。しかし、民法第766条で監護権を決めることができるとの規定がなされていることから、親権と監護権を分離し、別々に有することも可能となります。
そして現に、離婚協議の際、子をいずれが取るかで争いとなる場合も少なくないため、その妥協的解決方法として、親権と監護権を割り振って処理される場合もあります。しかし、この処理は、少なくとも子の養育に対する考え方について夫婦に共通の認識等がある場合に限られ、安易に分属させることは将来紛争の種となる可能性もあるため、充分な注意が必要となります。
(d)
親権者等の選定基準
親権は、そもそも子の正常な成長のための養育保護のためにあるもので、そのため、基本的には子の利益のためにはいずれが親権者となる方が良いか、との判断で決められるものです。
その具体的基準としては、双方の経済状況、住環境、子に対する愛情、親の肉体的・精神的健全性、子の年齢、環境の継続性、子の安全等があり、これらを総合的に判断することとなります。
そして、離婚に至るまで調停、裁判等で期間を要した場合、その時点で監護している側が適当とされる場合が多く、また、未熟な幼児、児童の場合、母親の愛情が必要であるとして、母親側が適当とされる場合が多いのです。
しかし、前述のように、満15歳以上は法律上子の意見を確認する必要が定められており、また15歳以下でも10歳程度からは本人の意見を尊重する必要があると考えられ、必ずしも母親側が適当と判断されるとは限りません。
また、子が2人以上の複数の場合、子の成長を考え、兄弟は分離することなく一方で監護すべきであるとされるのが一般的です。但し、経済事情、住環境、子の年齢の面等から、兄弟の分離が認められる場合もあります。
(e)
親権者等の変更
民法では、一度決まった親権者を他方に変更することができる(民法第819条第6項)とされています。
そして、この場合は、親権者選定の時とは異なり、双方の届出ではできず、必ず家庭裁判所の審判、調停によらなければならないこととなっています(家事事件手続法別表第二の八、第168条第7号)。
これは、親権が子の成人に達するまでの相当長期間に及ぶことが予想され、その間、双方の病気等の身体状況や経済状況等を含めた生活状況が著しく変化している場合があるためであり、そのまま放置すれば子の不利益になると考えられる時は、他方の親だけでなく、子の親族からも申し立てができることとなっています。
また、離婚後、親権者となった者が死亡した場合、民法第838条第1号では後見が開始されることとなりますが、他方の親が健全で子の養育保護を行うことに問題がない場合は、親権者変更の手続も可能と考えられています。
(ロ)
子の引渡請求
別居中又は離婚した夫婦間において、一方の元に居る子を他方が引き渡すように求める事案があります。
監護権者が行う場合は、民法第766条を基礎にして、家事事件手続法別表第二の三の関係で、調停又は審判の保全処分(家事事件手続法第175条)等でなし得ますが、その他にも、人身保護法に基づく引渡し請求も考えられます。
そして、従前は、子の引渡しについて、迅速性、実効性の面で優れているとして人身保護法での請求が多く見られましたが、同法は本来、不当、違法に人の自由が奪われている場合の救済を目的としたもので、夫婦、親子といった家庭に関連するものを目的としたものではありません。
そこで、現在では、家事事件審判手続に於いても前述のように保全手続が制度化され、かつこれらの手続で調査官等の調査も充分活用した判断がなされることから、子の引渡し請求に人身保護法を適用するのは、子の拘束が虐待等違法性の高いことが明白なものに限り、通常の引渡し請求は審判手続で処理する方が望ましいと思われます。
子の引渡し請求は、別居中の夫婦の間で一方が監護権者指定の申立をなしそれと併せて行う場合、離婚等により親権、監護権が指定され監護権を得た側からする場合、更には、親権等を持たない側から親権等の変更申立と併せてなす場合、等が考えられます。
そして、これらいずれの場合も、子の利益を考え、子の置かれている養育保護状況に問題があることが前提ですが、監護権者側からの請求は原則認められることとなるものの、非監護権者側からの請求は、相手方の子に対する保護状況の著しい不当性等の証明等、監護権変更とからみ難しい問題もあります。
(ハ)
面接交渉
親権者、監護権者でない側の親が、子に会ったり、手紙、電話等で連絡を取り合ったりということが面接交渉といわれるものです。
民法では面接交渉に関する規定はなく、相当以前には、離婚の際にこのような協議をされることはほとんどなく、親権者指定だけで処理されていました。
しかし、その後、離婚の調停、審判等でこの面接交渉についての申立も併せてなされる事件が増え、現在では、監護に必要な事項と必要な相当の処分と考えられ、民法第766条第1項の類推適用として、調停、審判で決定等をすることが認められるに至っています。
そして、このような面接交渉権が認められるのは、子育てに関する親の責任(権利義務)として、子の側からは親から養育を受ける権利として考えられるためですが、いずれにしても、子の成長等の利益のためになされるという考え方が必要です。
また、面接交渉を認める基準としては、子の年齢、心身状況、子の意思、父母の双方に対する感情、子の教育状況等がありますが、それら諸事情を総合して認めるか否かが決まると共に、認められた場合も、どの程度の頻度で、どのような形(宿泊等を認めるか等)で面会させるか等といった細かい問題があります。
通常、離婚という夫婦間の感情問題が入る関係で、面会条件については、協議できる場合はできるだけ具体的に取り決めておいた方が、後々の紛争を防止できるものと思われます。
但し、前述のように、あくまで子の利益を最優先にする必要があることから、子の負担となるような形での面会は認められず、また、子が成長し自らの意思がはっきり出るようになれば子の意思が大きく影響し、結論が異なる場面もある問題です。
(ニ)
養育費
(a)
意義
養育費とは、未成熟の子が社会人として独り立ちできるまでに必要とされる費用で、内容的には、食費等の生活費用、医療費用、教育費用等となります。
民法で直接的に「養育費」という用語は法文上ありませんが、民法第760条(婚姻費用分担等)、同法第752条(夫婦間の扶助義務)、同法第766条(監護費用)等が対象になると思われます。
尚、未成熟の子とは、未成年者と必ずしも一致はせず、社会的、経済的に独立して生活し得ない状況の者のことをいうため、中卒、高卒で就労し独りで生活し得る者はこの対象とならず、逆に、大学生等の場合は事情により未成熟の子として養育費の対象となり得る場合もあります。
(b)
請求の根拠
未成熟の子の生活費等の請求方法としては、子自らが民法第877条以下の扶養料請求という形で請求する方法が考えられます。
また、子を監護している親(親権者)側から他方の親に対して、民法第766条の監護に要する費用という形で請求する方法があり、いずれも家事事件手続法別表第二の三規定の事件として、調停、審判で解決を図ることができます。
尚、子が未成年の時は親権者側からの監護費用請求という形を、子が成人に達している時は子自らの扶養請求という形を取るものと思われます。
(c)
養育費の始期と終期
養育費の支払義務の始期については、夫婦が別居を始めた時からといった考え方もありますが、長い間請求しなかったものを、急に別居時まで遡って請求できるとすることには疑問がないわけではなく、一応は監護権者なり子本人から請求がなされた時からと考える方が妥当と思われます。
また、終期については、以前は高校を卒業する18歳や成人に達する20歳までで切ることが多かったようです。しかし、最近では、大学まで進学する人間が多くなってきたこと等もあり、親の収入、職業、学歴、子の能力等から、大学卒業まで養育費を負担するといった解決も珍しくなくなってきています。
当事者の状況によってケースバイケースで考えるべきかと思われます。
(d)
養育費額の認定
養育費は、支払う親と同程度の生活水準の維持が可能なだけのものが基本と考えられています(生活保持義務)。
そのため、養育費の額については、まずは双方の親の収入からそれぞれの生活を維持するために必要な費用を控除した額を確定し、一方、子供の必要生活費を算定して、先の双方の確定額の割合に従い負担額を決めるといった方法になります。
しかし、親の自らの生活に要する費用の割り出しについては、個別事情が多岐に渡ること等から算定が大変な場合が多いものです。そのため、最近では、婚姻費用分担のところでも述べたように、各裁判所で、簡易迅速に計算し得るよう、
一定の割合をあてはめて算定できる計算式等が使用されている状況にあります。
また、同算定表についても、婚姻費用分担と同様、日本弁護士連合会が、平成28年11月29日、「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方法・算定表に関する提言」を最高裁判所長官、厚生労働大臣及び法務大臣に提出し、上記の算定表を修正した新算定表を作成しており、こちらの新算定表も、今後、養育費の算定にあたって参考になるものと思われます。
尚、子が大きくなり高校等に進学することにより教育費等が問題となる場面では養育費額も高くなりますが、子が小さい間で負担する者の収入が平均的な場合は、多くは月5万円程度までで解決しているようです。