民法は第768条第1項で、離婚に伴う効果として、離婚した者の一方は相手方に対し財産の分与を求めることができる旨定めています。
そして、この請求権には、①婚姻中に協力して作り上げた財産の清算、②離婚後の経済的に弱い立場の者の扶養、③離婚原因を作った有責配偶者に対する慰謝料、といった三要素が考えられます。そして、ここでは、①②の問題を先に述べることとし、慰謝料請求権は別項目で取り上げることとします。
また、財産分与については、家事事件手続法別表第二の四の事件となるため、協議がまとまらない場合は調停、審判で処理が可能であると共に、人事訴訟法第32条により、離婚裁判の附帯処分として訴訟での解決も可能なものです。
婚姻中の夫婦の財産としては、婚姻前の各人の収入で得たものや相続によって得たもの等、名実共に一方が所有する財産(特有財産)のほかに、名実共に夫婦共有の財産や、名義は一方のものとなっているものの婚姻中の夫婦の協力で得た財産があります。
そして、清算の対象となるのは、あくまで前記のうち特有財産を除いたものとなります。
しかし、結婚後に購入した不動産等でも、購入資金の一部に結婚前の収入や遺産によるもの等が含まれることがあり、特有財産の排除についても難しい問題が生じることがあります。また、清算対象となる不動産については、住宅ローン等の債務が付いている場合があり、この債務も当然清算対象となることから、評価等が問題となります。
更には、近時の判例等では、近い将来に受け取る予定の退職金や将来の公的、私的年金類についても一応対象とする傾向があるため、これらの評価は難しく、離婚にあたっては、子供の問題とこの財産関係の清算が最大の争点となることが多く見受けられます。
財産分与としては、財産関係の清算のほかに、病気、高齢等で経済的自立が難しい場合の離婚後の各配偶者の扶養の面から、財産分与が認められる場合があります。
これは、財産の清算や慰謝料だけでは経済的弱者の側の配偶者の生活維持が困難な場合に補充的になされており、全ての離婚に伴う経済的清算について問題となるものではありません。
そして、扶養分としての財産分与が考慮される具体例としては、高齢、病気、未成熟の子供の監護等で、そもそも、一方配偶者が自立して収入を得ることが困難な場合や、離婚後の自立をするまでの一定期間の援助等といった場合に認められているようですが、働く能力、環境があるにもかかわらず、経済的に全く自立しようとしないような者にまでは考慮されないこととなります。
また、いつまでの扶養を考える必要があるかといった点では、高齢や難治性の病気の場合は死亡までとなり、子供の監護の場合は子供の手が離れるまで等、一定の期限が考慮されます。
そこで、これらを考慮し、一時金で処理するのか、場合によっては養育費等の場合のように月払い、年払いでの解決が考えられることとなり、画一的な基準等はないものと思われます。
財産関係の清算としての分与に関しては、まず基礎となる各財産の評価が問題となり、不動産等、最悪の場合は鑑定等が可能なものはともかくも、近い将来の退職金や年金等が要求対象となると、全体の中で何らかの解決をしていくしかない場合が生じるものと思われます。
また、分与額の認定の基礎となる割合については、以前は、専業主婦の場合は3分の1、共稼ぎや家業手伝いの場合は2分の1といった考え方がされた時期もあったようですが、現実には、実務上、原則平等として扱われており、配偶者の職業の有無等では変わらない扱いのようです。
但し、一方が医師等の資格、能力の結果大きく財産を形成したといった場合は、上記原則は必ずしも適用されず、能力等を個別に考慮して寄与割合が認められることがあります。
財産分与額等は、通常、協議離婚の際は併せて話し合われ解決する場合が多く、この場合は、後日の紛争防止のため、必ず分与に関する契約書が作成されることが望ましいです。
しかし、離婚そのものは協議が調っても財産分与等の合意がなされない場合や、離婚そのものも合意できない場合は、財産分与については、家事事件手続法第244条により、家庭裁判所に調停申立をなし解決を図ることとなります。
そして、調停が調わない場合は、離婚が既に成立している場合には審判の申立を、離婚も未処理の場合は、離婚の訴えと共に財産分与の訴訟を起こせることとなります(人事訴訟法第32条)。
いずれにしても、最終的には裁判所が「一切の事情」を考慮して認定してくれることとなります。
財産分与請求権については、民法第768条第2項但し書により、離婚の時から2年以内に請求をしなければ請求できなくなると決められています。
離婚請求と共に財産分与を調停、裁判等で請求し解決している場合は問題ありませんが、先に協議離婚や調停離婚だけを成立させ、財産分与を放置していると、離婚後2年で請求し得なくなることには注意が必要です。
また、協議や審判、判決等で具体的財産分与が確定している場合は、その具体的請求権(金銭や不動産引渡し等)は一般の債権と考えられ、確定後10年間は消滅時効にかからないため、相手方が履行しない場合は請求することができます。
財産分与の協議、審判等で財産を取得する場合、取得する側は贈与税等の心配は必要ありません。
但し、財産分与に名を借りて正常な分与額以上のものを得る場合は、贈与とみなされる危険があるため、注意が必要です。
また、後に述べる慰謝料については、財産分与の一部と見るか不法行為と見るかの問題はありますが、不法行為と見られても、個人間の処理として非課税対象の所得となるのではと思われます。
次に、財産を分与する側についてですが、現金で分与される場合は課税されませんが、不動産を分与する場合、その不動産取得時期より分与時の方が価格が上昇している場合、その価格上昇部分について譲渡所得税が課税されるという問題が発生するため、気を付ける必要があります。
共同で形成した財産の清算で、対価性を有していないことからして、このようなところで譲渡税が課税されることには、一般常識からすると納得しがたい面もありますが、税務署のこの判断は最高裁判所の判例(昭和50年5月27日判決)でも是認されているため、財産分与の協議をする際には充分な注意が必要と思われます。