株式移転の知識4|株式移転の法律実務―会社法3

企業法務ガイド|株式移転

第1編

株式移転の法律実務

第2

株式移転の法律手続と規制

1

会社法

(7)
株券・新株予約権証券提出手続と割当て及び登録質権者等に対する手続
(イ)
株券提出手続
株式移転において、完全子会社となる会社が株券発行会社であって株券を発行している場合、当該会社は、完全親会社の成立日までに株券を提出しなければならない旨を、当該成立日の1か月前までに広告し、かつ、株主及び登録株式質権者に通知する必要があります(会社法219条1項8号)。もっとも、株式の全部について株券を発行していない場合には上記広告・通知は不要となります。 完全親会社の成立日までに株券を提出しない株主に対しては、当該株券の提出があるまでの間は、株式移転によって受け取ることのできる対価の交付を拒否することができます(会社法219条2項)。
なお、上記手続による株券の提出が困難な株主は、他の手続により上記対価の交付を受けることができます(会社法220条)。
(ロ)
新株予約権証券提出手続
株式移転において、完全子会社となる会社が新株予約権証券を発行している場合、当該会社は、完全親会社の成立日までに株券を提出しなければならない旨を、当該成立日の1か月前までに広告し、かつ、新株予約権者及び登録新株予約権質権者に通知する必要があります(会社法293条1項7号)。
完全親会社の成立日までに新株予約権証券を提出しない新株予約権者に対しては、当該証券の提出があるまでの間は、株式移転によって受け取ることのできる対価の交付を拒否することができます(会社法293条2項)。
なお、上記手続による新株予約権証券の提出が困難な新株予約権者は、他の手続により上記対価の交付を受けることができます(会社法293条4項)。
(ハ)
株式移転対価の割当て
完全子会社となる会社の株主に対しては、株式移転の効力発生日後に、株式移転の対価が交付されます。
会社法においては、上記対価として完全親会社となる会社の株式に加えて、社債、新株予約権、金銭等を交付することができます。
対価の交付において、各株主に交付する株式数に端数が生じる場合には、競売等の手続を利用することが必要な場合があります(会社法234条)。
(ニ)
登録質権者等に対する手続
株式移転において、完全子会社となる会社は、登録株式質権者及び登録新株予約権質権者に対して、株式移転をする旨を通知または広告する必要があります(会社法804条4項、5項)。
(8)
株式移転の効力
株式移転の効力は、完全親会社となる新設会社の成立の日、すなわち同会社の設立登記の日に、その効力が生じます(会社法774条)。
上記設立登記は、下記(イ)から(へ)のいずれか遅い日から2週間以内に、その会社の本店の所在地においてする必要があります(会社法925条)。
(イ)
株式移転に関する株主総会の決議の日
(ロ)
株式移転に関する種類株主総会の決議の日
(ハ)
株式買取請求権に関する通知又は公告をした日から20日を経過した日
(ニ)
新株予約権買取請求に関する通知又公告をした日から20日を経過した日
(ホ)
債権者異議手続が終了した日
(へ)
株式移転をする株式会社が設立登記日として定めた日(2以上の株式会社が共同して株式移転をする場合にあっては、当該2以上の株式移転をする株式会社が合意により定めた日)
株式移転の効力発生日に、完全親会社となる新設会社は、完全子会社となる会社の発行済株式の全部を取得し(会社法774条1項)、完全子会社となる会社の株主等は、株式移転による対価を取得する(会社法774条2項、3項)。
(9)
事後整備書類
完全子会社となった会社(株式移転完全子会社)は、完全親会社となった新設会社(株式移転完全親会社)と共同して、株式移転の効力発生後遅滞なく、下記(イ)から(ニ)の事項を記載した書面等を作成する必要があります(事後開示書類。会社法811条1項2号、会社法規則210条)。
(イ)
株式移転が効力を生じた日
(ロ)
株式移転完全子会社における株式買取請求手続及び債権者異議手続の経過
(ハ)
株式移転により株式移転完全親会社に移転した株式移転完全子会社の株式の数(株式移転完全子会社が種類株式発行会社であるときは、株式の種類及び種類ごとの数)
(ニ)
上記(イ)から(ハ)に掲げるもののほか、株式移転に関する重要な事項
株式移転の当事会社は、作成した事後開示書類等を効力発生日から6か月間、その本店に備え置かなければなりません(会社法811条2項、815条3項)。
効力発生日に株式移転完全子会社の株主、新株予約権者であった者、株式移転完全親会社の株主及び新株予約権者は、これらの事後開示書類等の閲覧、謄写等を請求することができます(会社法811条4項、815条6項)。
(10)
株式移転無効
株式移転の無効は、各々の効力発生日から6か月以内に、訴えをもって主張することができます(会社法828条1項12号)。
同訴えを提起することができる者は、当事会社の株主、取締役、株式移転を承認しなかった債権者等になります(会社法828条2項12号)。一方、同訴えの相手方となる者は、当事会社の双方となります(会社法834条12号)。
株式移転の無効を主張するためには、無効事由が必要となります。
この無効事由について、会社法は一切規定していませんが、株式移転計画の内容が違法である場合、総会決議に瑕疵がある場合、債権者保護手続が実施されていない場合等が無効事由に当たると考えられています。
株式移転の無効判決の効力は、第三者にも及び(対世効。会社法838条)、将来に向かってその効力が生じます(将来効。会社法839条)。すなわち、当該無効判決前になされた株式移転に関する行為は有効であるが、当該無効判決後に将来に向かってその効力を失うことになります。