株式移転の知識6|株式移転の法律実務―独占禁止法

企業法務ガイド|株式移転

第1編

株式移転の法律実務

第2

株式移転の法律手続と規制

3

独占禁止法

(1)
概略
独占禁止法は私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法等を禁止して、公正かつ自由な競争を促進し、消費者の利益を確保するとともに、国民経済の健全な発達を促進することを目的としています。
そのため、市場を過度に支配する会社の誕生を禁じ、一定の取引分野の競争を実質的に制限する株式の保有を規制しています。そこで、一定の株式移転の場合には、独占禁止法により、公正取引委員会に対する届出や報告の義務が定められています。したがって、共同の株式移転行為が独占禁止法の各規定に抵触する可能性がある場合は、株式移転の計画段階から必要に応じて公正取引委員会に事前相談をしておくことが重要です。
(2)
事業支配力の過度な集中に対する規制
独占禁止法9条1項は、他の国内の会社の株式を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社は、これを設立してはならない、としています。
また同条2項では、会社は、他の国内の会社の株式を取得し、又は所有することにより国内において事業支配力が過度に集中することとなる会社となってはならないとされています。
そのため、会社および子会社の総資産の合計額が、会社の種類ごとに次の基準額を超える場合には、毎事業年度の終了の日から3か月以内に、公正取引委員会に対し、事業に関する報告書を報告することが求められています(独占禁止法9条5項)。
(イ)
持株会社(完全子会社の株式の取得価額の合計額の完全親会社の総資産の額に対する割合が100分の50を超える会社)6000億円
(ロ)
銀行業、保険業又は第一種金融商品取引業を営む会社(持株会社を除く。)8兆円
(ハ)
上記以外の会社2兆円
さらに、株式移転によって、完全親会社およびその子会社の総資産の額で国内の会社にかかる合計額が上記基準を超える場合にも、公正取引委員会に対し、会社設立の届出書を提出することが求められています(独占禁止法9条6項)。こちらの届出の期限は、完全親会社設立の日から30日以内です。ただし、完全親会社に親会社がある場合は、届出は必要ありません。
(3)
一定の取引分野の競争を実質的に制限する株式の取得保有の規制
会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならないとされています(独占禁止法10条1項)。
そこで、株式移転によって、次の(イ)に該当する完全親会社が、(ロ)に該当する完全子会社の議決権を一定の割合(10%、25%、50%)を超えて取得、保有することになる場合は、その完全親会社は株式移転の日から30日以内に公正取引委員会に対し、株式所有報告書を提出しなければなりません(独占禁止法10条2項)。
(イ)
総資産の額が20億円を超え、かつ、完全親会社並びにその子会社(完全親会社が議決権の50%超を直接保有する会社)及び親会社(完全親会社の議決権の50%超を直接保有する会社)総資産の合計額が100億円を超えるもの
(ロ)
完全子会社となる会社の総資産が10億円を超えるもの(完全子会社が外国会社の場合は、国内の営業所および子会社の売上高の合計額が10億円を超える場合)
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