会社分割の知識14|会社分割の税務実務ー概要

企業法務ガイド|会社分割

第3編

会社分割の税務実務

第1

概要

1

用語の意義

(1)
会社分割…会社の事業の全部又は一部を他の会社に包括的に承継させる行為をいいます。
(2)
分割承継法人…分割により資産負債の移転を受ける法人をいいます。
(3)
分割法人…分割によりその有する資産の移転を行う法人をいいます。
(4)
分割型分割…分割法人が分割により分割承継法人から交付される分割対価資産(分割承継法人の株式その他の資産)の全てがその分割日において分割法人の株主等に交付される分割をいいます。
(5)
分社型分割…分割法人が分割承継法人から分割対価資産が交付され、分割法人の株主には交付されない分割をいいます。
(6)
単独新設分割…単独で分割法人が新たに分割承継法人を設立する分割をいいます。
(7)
複数新設分割…複数の分割法人が新たに分割承継法人を設立する分割をいいます。
(8)
分割前事業年度…分割法人の分割型分割の日の前日の属する事業年度をいいます。
(9)
特定資本関係…一方の法人が他方の法人に発行済み株式等の50%超を直接又は間接に保有される関係、又は、二の法人が同一の者によってそれぞれ発行済み株式等の50%超を直接又は間接に保有される関係をいいます。
(10)
特定資本関係事業年度…特定資本関係が生じた日の属する事業年度をいいます。
(11)
合併類似適格分割型分割…分割法人の分割前の主要事業の継続が見込まれ、資産等の全部が移転し、かつ、分割後遅滞無く分割法人が解散する、極めて合併に近い適格分割型分割をいいます。
2

会社分割の税務の基礎

会社法の改正により会社分割は、分割承継法人が分割法人に分割の対価としてその分割承継法人の株式等を交付する、分社型分割のみを規定し、分割法人がその後分割法人の株主に分割承継法人の株式を交付する分割型分割は無くなりました。ただし、分割法人がその株主に剰余金の分配として分割承継法人の株式を交付することはできますので、会社法においても実質的には分割型分割が可能です。
税務上は、従来どおり分割型分割と分社型分割の2つの類型が規定されています。
3

適格分割の要件

適格要件の基本は、移転資産に対する支配が継続しており、かつ、分割に際して交付される財産が分割承継法人株式又は分割承継法人の100%親会社の株式のみであることです。支配が継続していなければ、実質的な資産の譲渡と捉え、非適格分割と考えます。金銭等が交付されれば、実質的に分割対象資産負債の譲渡と捉え、こちらも非適格分割と考えます。
適格分割の具体的体系としては、(1)企業グループ内における分割と、(2)共同事業を営むための分割とがあります。
会社分割が分割型分割の場合には、分割法人株主の持分割合に応じて分割承継法人株式等が交付される「按分型分割」であることが、適格分割となる要件です。持分割合によらずに分割承継法人株式等が分配されると、移転資産等に対する支配が継続しているとはいえないからです。
4

会社分割税務の特色

(1)
現物出資との相違点
現物出資とは、金銭以外の財産をもって出資する行為をいいます。会社分割のうち分社型分割は、事業の全部又は一部を他社に承継させ、その後その承継会社に対し、自社の株式を割り当てるため、現物出資と経済的効果は非常によく似ています。税制適格の要件も、会社分割と現物出資はほぼ同じです。
しかし、現物出資は単に個別単体の財産の承継も認められているのに対し、会社分割は営業の全部又は一部を「包括承継」しなければならない点で、両者は異なります。つまり、概念上分社型分割の方が現物出資より範囲が狭いのです。
(2)
合併との相違点
分割型分割の場合、分割法人が分割承継法人にその有する全ての資産を承継させ、分割法人の株主が分割承継法人の株式の交付を受ければ、吸収合併と経済的実質は同じになります。
分割型分割と合併の違いは、分割型分割の場合は、事業の一部だけを移転することができるということです。分割は通常この形態になります。

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