離婚、離縁

裁判離婚の要件と手続のあらまし

0 はじめに

  

これまで、「協議離婚」、「調停離婚」についてご説明をしてきました。

それぞれの回でご説明をした通り、協議離婚も調停離婚も、最終的に双方の合意に基づいて離婚をする方法です。したがって、離婚をすること自体について合意に達しない場合は勿論、離婚自体は合意できていても離婚に付随するその他の諸条件について合意に達しない場合も、これらの方法で離婚をすることはできません。

  

今回ご説明する「裁判離婚」は、双方が合意に達しなくとも裁判により強制的に離婚が成立する手続であり、協議離婚や調停離婚とは性質が大きく異なります。

  

裁判離婚のためには、どのような手続が必要であるか、また、どのような事情があれば裁判離婚が認められるか、という点について、複数回にわたり、ご説明させていただきます。

1 裁判離婚の手続の流れ

 

⑴ 調停前置主義

   

裁判所に対し、裁判離婚の判断を求めるためには、「離婚の訴え」(民法第770条)を提起する必要があります。しかし、日本の法律ではいきなり裁判所に対して離婚の訴えを提起することはできません。まずは、話し合いのために法律上用意された手続である離婚調停を行う必要があるとされています(家事事件手続法第244条、第257条)。これを調停前置主義といいます。

   

離婚を望む夫婦の状況は様々ですが、場合によっては事前の離婚協議で関係がこじれ、調停手続での合意が到底見込まれないようなケースもあります。また、そもそも相手方に離婚に応じる意思が全くなく、話し合いの余地がないようなケースもあります。

   

このように、調停で合意に達する可能性がないと考えられる場合でも、調停の手続を飛ばして、いきなり離婚の訴えを提起することは原則として認められていません。

 

⑵ 離婚の訴えの提起

   

離婚調停が不成立で終わった場合に、なお離婚を求める夫婦の一方は、家庭裁判所に離婚の訴えを提起することができます。

   

具体的には、通常の訴訟と同様、訴状を裁判所に提出する方法で、離婚の訴えの提起を行います。この訴えの提起の際に、財産分与や慰謝料、年金分割についての請求を併せて行うこともでき、また、未成年の子がいる夫婦の場合は、子の親権についても判決を求めることになります。

 

⑶ 離婚訴訟の期日

   

裁判所に訴状が受理されると、裁判所から第1回目の期日が指定され、裁判が開始されます。その後は、通常、1ヵ月に1回程度のペースで期日が開催され、裁判の進行に応じて、双方から書面(準備書面)や証拠の提出を行うことになります。

   

また、審理の終盤では、裁判期日において、当事者(夫婦双方)や関係者の尋問がなされることもあります。離婚訴訟の場合は、当事者の関係性等、当事者でしか把握しえないことが争点となることが多く、通常、夫婦それぞれの尋問が行われます。

   

双方の主張及び証拠が出尽くし、当事者や関係者の尋問を終えると、裁判所は審理を終結し、判決を下すことになります。

 

⑷ 裁判の終了及び離婚の成立

   

裁判所が、離婚が相当であると判断した場合、「原告と被告とを離婚する。」との判決が出されます。判決書の送達日から2週間以内に控訴がなされなければ判決が確定することになり、その時点で離婚が成立することとなります。

   

他方、裁判所が離婚は相当でないと判断した場合、原告の請求を棄却する旨の判決が出されます。

   

また、離婚訴訟手続の中で、夫婦双方の間で離婚についての合意が成立する場合もあります。その場合は、「和解」という形で離婚が成立し、判決がなされずに裁判が終了することになります。和解の場合、和解調書が作成され、その和解調書作成とともに離婚が成立します。

 

⑸ 離婚届の提出等

   

離婚を認める判決が出された場合、又は、和解で離婚が成立した場合、離婚を求めた側(原告)は、役所(本籍地)に対し、離婚成立から10日以内に離婚届を提出する必要があります。

   

離婚自体は、⑷で述べた時期に法律上成立しており、離婚届を提出しないと離婚が成立しないわけではありませんが、その後に離婚届の提出が必要とされている点には注意が必要です。

   

この離婚届を提出する際には、離婚届に判決書(和解による離婚の場合には和解調書)を添付する必要があり、相手方の署名や捺印は必要ありません。また、裁判で年金分割を求めていた場合には、裁判終了後に年金事務所で手続を行う必要もあります。

2 裁判離婚の要件

 

⑴ はじめに

   

冒頭で述べたとおり、裁判離婚は夫婦双方の合意に基づく離婚ではなく、裁判所の判断によって強制的に離婚が成立する仕組みとなっています。離婚訴訟に至っている夫婦は、少なくとも一方が離婚を望んでいないことや、離婚自体には同意していても条件面で折り合いがついていないことが想定されます。

   

このように、離婚を望まない夫婦の片方に対して離婚を強制してもやむを得ないと考えられる場合のみ、裁判離婚が認められることとなっています。民法は、このような「やむを得ない場合」を類型化し、「離婚原因」として定めています(民法第770条第1項)。

 

⑵ 離婚原因

   

民法が定めている離婚原因は、次の1から5です。

   
       
  1. 配偶者に不貞な行為があったとき(民法第770条第1項第1号)
  2.    
  3. 配偶者から悪意で遺棄されたとき(同項第2号)
  4.    
  5. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき(同項第3号)
  6.    
  7. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(同項第4号)
  8.    
  9. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(同項第5号)
   

これらの離婚原因が認められない場合、裁判所は離婚を認める判決を出すことができません。離婚原因の条文は、ご覧のとおり、抽象的な記載となっています。各離婚原因の具体的な内容については、種々の議論や解釈、裁判例が存在しますので、その詳細については、次回以降ご説明いたします。

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