倒産とは

会社更生、民事再生、破産、特別清算、任意整理実務マニュアル

第1

倒産総論

集合写真

倒産とは

(1)

倒産の定義

バブル崩壊後の日本経済の不況のあおりを受け、昨今、会社の「倒産」が、新聞やテレビ等のメディアにおいて大きく取り上げられて社会の関心事となるとともに、1社の倒産に伴う連鎖倒産や倒産会社の経営者の自殺等、会社の倒産が副次的に生み出す社会問題も少なくありません。
そもそも、我々が往々にして耳にする会社の「倒産」とは、具体的にどのような意味なのでしょう。
我々の抱く「倒産」の大まかなイメージとしては、会社の収益が悪化し、資金繰りにも困窮し、経営破綻によって会社活動を存続できず、従業員に給料すら払えないような事態に陥ること、といった具合でしょうか。
法律上は中小企業倒産防止共済法に、「倒産」の定義について、
(イ)
破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立てがなされること、
(ロ)
手形交換所において、その手形交換所で手形交換を行っている金融機関が金融取引を停止する原因となる事実についての公表がこれらの金融機関に対してなされること、

と規定されています(中小企業倒産防止共済法第2条第2項)。
(イ)は、本書で後に解説する法的な再建手続、清算手続の申立てがなされることであり、(ロ)は、会社が手形の決済資金が準備できずに、6ヶ月以内に2度の不渡処分を受け、銀行取引が停止されてしまうということです。
「倒産」は、日常的にも、また法律的にも使用される言葉ですが、会社の経営状況が破綻するという意味において大差はありません。
そして会社が「倒産」した場合においても、会社をつぶしてたたんでしまうという選択肢だけではなく、経営の改善計画を練り直し、債務の弁済については一部免除を受けたり弁済期を繰り延べてもらうことによって、一度破綻した経営状況を再建し、会社を存続させていくという選択肢も存在するのです。
(2)

倒産状態に至る原因

倒産状態とは、会社の経営状況が破綻して、会社をたたむか、再建するかの選択肢を強いられるような状況です。会社が収益を上げられない状態が長期間継続し、それに伴って負債が累積し、資金繰りがパンクするという流れをたどります。
会社が収益を上げられない状態とは、売上げが減少し、経費がかさんでマイナス収支に陥ることです。売上げの減少は、取引量の減少あるいは取引単価の減少によってもたらされますが、その要因としては、自社の経営努力やサービス内容の改善努力の欠如といった内部要因から、競業会社の競争力の強化、景気の変動や流行の変化に伴う消費量そのものの減少といった外部要因まで様々なものがあります。経費の増加は、過大な設備投資、過剰な人材の雇用や、製造コスト、流通コスト等の増加によってもたらされます。
会社が収益を上げられない状態が継続すると、当然会社の負債は累積していきます。
また、取引先が先に倒産するという事態が発生した場合、その取引先に対して回収できたはずの債権が回収不能になり、このような外部要因によっても負債額が一気に増加することがあります。負債の累積は、資金面で会社の正常な経営を圧迫するのみならず、何が何でも取引を受注し、営業を継続させなければならないという危機感を会社内に生じさせることになるため、かえって会社の利益にとって合理的でない取引(赤字取引等)を誘発し、さらに会社の経営状況を圧迫するという悪循環に陥る危険性も有しています。
しかし、会社の収益状態が悪化して負債が累積した場合であっても、それに見合う資金が調達できている限り、倒産状態には陥りません。大口の融資先(銀行等)や個人的な協力者が会社に資金を融通してくれる限り、手形の決済資金や、従業員への給料の支払いは滞らず、会社はこの間に収益を改善させて、経営状況を正常化させる方策を講じることは可能です。逆に収益状態が悪くない会社であっても、銀行の貸し渋り等が原因で、本来可能なはずの資金調達が実現できず、手形の不渡を出して倒産状況へと追い込まれるケースも存在します。
以上のように倒産状態とは、通常のケースにおいては会社の業績悪化と連動するものですが、最終的には資金繰りの不能によって惹起されるものということができるでしょう。
(3)

倒産の予防策

会社倒産後の再建、清算という話をする前に、倒産の一般的な予防策について、若干述べることとします。
会社やその経営者は、たとえある程度の収益を計上している現状であっても、以下のような視点を忘れることなく、倒産状況を事前に回避できるよう、会社活動の継続につとめていくことが必要です。
(イ)
収益の向上
会社の収益を向上させるためには、収入(売り上げ)を増加させること、すなわち、取引量の増加及び取引単価の増加を目指すことが単純明快です。
新規の商品や新規サービスの開発、既存の取引先との関係の強化により、取引量を増加させ、また旧商品、旧サービスに付加価値を付け、類似商品、類似サービスとの違いを際立たせることで、取引単価の増加を目指します。
言葉で書くと単純かつ抽象的なものですが、会社経営者は自社の商品やサービスの特徴を十分に把握した上で、市場の動向や流行を調べ、競業他社の提供する商品やサービスの内容についても常に敏感であることが求められます。
このような経営努力をする会社と、そこそこの利益をあげている現状に満足しているだけの会社とでは、おのずと倒産に対するリスクが異なってくることは明らかでしょう。
(ロ)
コストの削減
収入が増加したとしても、それに伴いコストが増大するのでは、会社の収益は一向に改善しません。逆に収入が減少しても、それ以上のコスト削減が実現できるのならば会社の収益は向上するのです。
収入をいかに残すかというコスト削減という視点も、収入をいかに増やすかという視点と同様、会社の体力を大きく左右します。不測の事態で収入が途絶えてしまった場合には、コスト率が高い会社ほど、負債が累積するスピードも速くなるのです。
コストは物的コスト(生産、製造費用、仕入費用、流通費用等)と人的コスト(従業員の賃金等)に分類できます。
物的コストの削減は、生産、製造工程のスリム化、原材料の大量仕入れや価格交渉、流通ルートのスリム化などによって実現されますが、これらを行うに際しても会社経営者が自社の商品やサービスの特徴と、それにいたるコストの内訳を十分に把握した上で、他の取りうる手段や代替コストについてたえず敏感であるということが求められます。
人的コストの削減は、従業員の賃金の見直しやリストラによって実現することになります。しかし、物的コストの削減と異なり、人的コストの削減は、従業員の労働意欲を低下させ、会社の求心力の低下という事態を招く可能性が大きいので慎重に対応することが必要になります。
そして、人的コストの削減を行う場合であっても、その手続や内容は労働関係諸法や就業規則という規範に沿うものでなければなりません。例えば、合理的な理由がない解雇は判例上制限されていますし、退職金の支払いや解雇予告手当の支払いが必要になる場合もあります。これらの場合には、人的コストの削減を行なう際に一定程度の金銭を準備しておくことが必要になります。
(ハ)
会社組織の見直し
会社の不採算部門を廃業したり、会社分割や事業譲渡による切り離しによって、会社の事業を収益が期待できる分野に縮小し、倒産の芽を事前に摘み取るという方法もあります。
会社組織の見直しを行うにあたっては、その方式によって会社法の規定を遵守することが必要となります。例えば株式会社において事業譲渡を行う際には、原則として株主総会での特別決議を経なければならないという制約が存在します。この場合は、事前に株主に対して十分な説明を行った上で、その理解、内諾を得ておくことが必要になります。
(ニ)
資金の調達
会社が存続していく上で、運転資金は常に確保されていなければなりません。
手形の決済資金が欠ければ、銀行取引停止処分のリスクが現実化します。従業員の賃金の未払いや滞納が発生すれば、従業員のやる気、会社の求心力が低下するとともに、そのような事実の発覚によって、会社に対する悪評やマイナスイメージが世間にさらされるという危険も生じます。取引先に対する未払い、滞納があった場合もこれと同じで、取引を打ち切られてしまっては、会社にとって致命傷になり得ます。
資金の調達は、会社における内部留保、銀行あるいは公的機関からの融資という方法が普遍的ですが、増資(新株発行)や社債発行を行うことによっても可能となります。
ただし、社債を引き受けてもらうためには、その会社が経営、信用において秀でていることが必要でしょうし、増資を引き受けてもらうためには、出資をしようとする者から見て、将来的な会社の成長や業積の拡大が見込めるということが大前提になります。