民事再生手続は申立てにより開始します。通常は再生債務者(倒産会社)自身が申立を行いますが、債権者から民事再生を申し立てられることもあります(民事再生法第21条)。
申立ては書面で行う必要があり、書面に記載すべき事項は規則で定められています(民事再生規則第12条、第13条)。
申立ての書面には、商業登記簿謄本や定款、就業規則、債権者一覧表、決算書類、資金繰りの実績表や予定表、今後行う事業計画の概要書等の書類を添付します。
営業者の民事再生手続を管轄する裁判所は、原則として再生債務者の主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所ですが(民事再生法第5条第1項)、
債務者審尋とは、会社が民事再生に至った経緯や、財産状況、負債状況などを知るために、裁判官が関係者から事情聴取を行う手続です。申立書の内容や、添付書類の内容についての質問もなされます。
通常は会社の代表者や経理関係者と申立代理人が債務者審尋に出席します。
裁判所は、利害関係人の申立て又は職権によって、再生手続開始決定がなされるまでの間、債務者の業務及び財産に関し、仮処分、仮差押、その他必要な保全処分を命じることができます(民事再生法第30条)。
通常は再生債務者において、再生手続開始の申立てと同時に、弁済禁止の保全処分を申し立てます。弁済禁止の保全処分とは、再生債務者が債務の弁済を行ってはならないという内容の処分です。ただし共益債権や一般優先債権はこの処分とは無関係で、少額の債権については例外が設けられることもあります。
この弁済禁止の保全処分が発令されれば、再生債務者は弁済を停止しなければならず、結果として手形の不渡を防ぐことができます。裁判所が弁済禁止の保全命令を出した場合、これに反する弁済は、再生手続の関係では無効になります。
そのほか裁判所は、債務者の財産に対する強制執行等を一律に禁止する包括的禁止命令や(民事再生法第27条)、担保権の実行手続中止命令(民事再生法第31条)を出すこともできます。
保全処分や禁止命令、中止命令は、いずれも再生手続開始決定前に債務者の財産が散逸してしまうことを防止するための手続です。
監督委員は、再生債務者が行う一定の行為について裁判所の指定により同意、不同意を判断したり、再生債務者の業務、財産調査を行うほか、再生計画案について意見書を作成したり、債権者集会に出席したり、裁判所からの授権を受けて否認権を行使したり、再生計画認可後にも3年間は再生計画の履行を監督したりと、その職責は多岐に渡ります。
条文の規定上は、利害関係人の申立てあるいは職権により、裁判所が必要あると認めるときにのみ監督委員が選任されることとなっていますが(民事再生法第54条)、実務上はむしろ監督委員が選任されることが原則となっており、その場合弁護士が監督委員に就任します。
再生債務者に再生原因が認められないとき、予納金を納付しないとき、再生計画の認可の見込みがないとき、不当な目的で民事再生開始の申立てがなされたとき等には、申立てが棄却されることになります(民事再生法第25条)。
再生原因の存在が認められ、その他上記(ニ)に述べた事由がない場合、裁判所は再生手続開始の決定をします。
これにより、他の法的整理手続(会社更生を除く)の申立てが禁じられ、それらの手続が既になされている場合には失効します。また、再生債権に基づく再生債務者の財産に対する強制執行や財産開示手続は禁じられ、これらの処分が既になされている場合には失効します(民事再生法第39条)。
今後の再生手続の予定事項として、再生債権の届出をすべき期間、再生債権の調査をするための期間が定められます(民事再生法第34条第1項)。
また、裁判所が必要あると認めるときは、再生債務者が行う財産の処分や譲受、借財などについて裁判所の許可を得なければならないと定めることができます(民事再生法第41条)。
このように再生債務者が主体となって再建を行うといっても、再生手続開始後は、裁判所の監督に服することになります。
再生手続に参加しようとする再生債権者は、上記(ホ)において定められた期間(債権届出期間)内に、再生債権の内容及び原因、議決権の数、別除権の行使によって弁済不足が見込まれる額等を裁判所に書面で届け出る必要があります(民事再生法第94条)。なお、ここでいう再生債権の議決権の数とは、債権の性質(将来債権か否か、利息付か否か等)や額によって算出されることとなります(民事再生法第87条)。
再生債権者の責めに帰することが出来ない事由によって債権届出期間内に再生債権の届出をすることが出来なかった場合には、例外的に、1ヶ月以内の届出の追完が認められています(民事再生法第95条)。
再生債権の届出を怠った場合、原則として債権が失効し、再生計画による弁済が受けられなくなってしまいますので注意が必要です(民事再生法第178条)。
簡易再生とは、債権調査、確定手続を省略する再生手続です(民事再生法第211条以下)。
届出再生債権者の総債権について裁判所が評価した額の60%以上の届出債権者が、再生計画案並びに再生債権の調査及び確定の手続省略について書面で同意した場合に、簡易再生を行うことができます。
同意再生とは、債権調査、確定手続と再生計画案の決議を省略する再生手続です(民事再生法217条以下)。
全ての届出再生債権者が、再生計画案並びに再生債権の調査及び確定の手続省略について書面で同意した場合に、同意再生を行うことができます。
再生債務者は、届出のあった再生債権及びその議決権を認めるか否かを記載した認否書を作成し、裁判所に提出します。
なお、再生債権者側から届出のなかった再生債権についても、再生債務者がその債権の存在を知っている場合には、自認する債権の内容を認否書に記載しなければなりません(民事再生法第101条)。
届出をした再生債権者は、再生債務者の作成した認否書の内容を閲覧し、自己の債権が認められたか否か、また他人の債権がどのように認否されているかを確認し、裁判所が定める調査期間内に異議を述べるかどうかを決断します。再生債権者は、自分の債権だけでなく、他人の債権についても異議を出せる点に注意が必要です。
認否書において再生債務者が認めており、かつ届出債権者から異議がない再生債権については、その内容や議決権の額が確定することになります(民事再生法第104条)。
一方、認否書の内容に異議が出された場合には、債権確定のための手続(リ)へ進むことになります(民事再生法第102条)。
上記(チ)において、再生債務者が認否書において認め、他の届出債権者からも異議が出されなかった再生債権は、そのまま確定します。
再生債務者が否認した再生債権、または届出債権者から異議が出た再生債権については、当該債権を届け出た者は一般調査期間の末日から1ヶ月以内に裁判所に査定を申立てます(民事再生第105条)。
この申立てを受けた後、裁判所は、再生債権の存否及び額等を査定する裁判を行い(同条第4項)、裁判書を当事者に送達します(同条第6項)。
この査定内容に不服がある者は、裁判書の送達の日から1ヶ月以内に、異議の訴えを提起し、この中で再生債権の内容が決定されることになります(民事再生法第106条)。
このように、再生債権の存否やその性質、数額、議決権等に争いのある場合に備えて、通常の訴訟手続よりも簡易、迅速な確定手続が設けられています。
再生債務者は、再生手続開始後遅滞無く、その有する一切の財産について、再生手続開始時における価格を評定しなければならず、これに基づいて、財産目録及び貸借対照表を作成して裁判所に提出します。
財産の評定にあたっては、評価人を選任することも可能です(民事再生法第124条)。
再生債務者は、民事再生手続開始に至った事情、再生債務者の業務及び財産に関する経過及び現状等に関する報告書を作成し、裁判所に提出します(民事再生法第125条)。
再生計画案は主として、今後どのような事業を行っていくという事業計画、いくらの債務を免除してもらい、残額についてどのように弁済を行っていくのかという弁済計画から成ります。
再生計画の立案が再生債務者及び申立代理人の最も重要な職責ですが、会社の収益力の分析、倒産状況に至った原因の分析を行って、再建の方法を模索することになります。
なお再生計画案の具体的内容として、会社の事業部門の一部を他社に譲渡するという形式が考えられます。本来事業譲渡には、株主総会の特別決議等、会社法所定の手続を踏む必要がありますが、再生手続開始後に会社が事業譲渡を行おうとする場合は、裁判所の許可で足りることとされています。
この許可の制度は、再生債務者の企業価値が衰えないよう、迅速に事業譲渡を行うために設けられた規定であり、事業の再生に必要であると認められる場合にのみ裁判所が許可することとされています(民事再生法第42条)
弁済計画における弁済内容は、破産手続を選択した場合の配当率よりも有利なものでなければならず(そうでないと会社を存続させて再生させる意味がなくなってしまいます)、10年以内の弁済期間を設定しなければなりません(民事再生法第155条第3項)。
再生債務者から提出された再生計画案に対し、再生手続や再生計画の適法性、再生計画の実現可能性等を吟味して、監督委員が認可相当か否かの意見書を作成し、裁判所に提出します。
再生計画案は再生債権者による決議を経る必要があります(ただし、例外として同意再生)。
決議の方法としては債権者集会の期日において議決権を行使する方法と、書面等投票により議決権を行使する方法、あるいはこれらの方法を議決権者に選択させるもの、のいずれかになりますが(民事再生法第169条)、実務上は債権者集会の開催が多いといえます。
再生計画案の可決要件は、出席議決権者の過半数の同意、かつ議決権総額の2分の1以上の同意とされています(民事再生法第172条の3)。議決権の数は再生債権の性質や額によって決められますが(民事再生法第87条)、ほぼ債権額に近い数字と理解しておいて問題はないでしょう。
再生計画案が再生債権者の決議によって可決された場合、裁判所は原則として再生計画の認可を行います。
裁判所が再生計画の認可を行わない場合は、再生手続、再生計画について重大な法令違反があった場合や、再生計画が遂行される見込みがない場合、再生計画の決議が再生債権者の一般的利益に反するとき等の例外的な場合です(民事再生法第174条)。
再生計画は裁判所の認可後不服申立期間(民事再生法第9条)の経過によって確定することとなります。
再生債務者は確定した再生計画に従って、その内容を遂行し、監督委員が再生計画の実行を監督します(民事再生法第186条)。
万が一再生計画を実現できない場合には、計画の変更や(民事再生法第187条)、計画の取り消しによる破産手続への移行が行われることとなります(民事再生法第250条)。
民事再生法上は、裁判所が再生計画案の議決方法として債権者集会の期日で決議することを選択した場合に債権者集会の開催が必要的になりますが、これ以外の場合であっても債権者集会を開くことが禁じられているわけではありません。
例えば、民事再生の申立を行った後に、任意に債権者集会を開催して、会社の現状と民事再生手続の選択に対する理解を求め、事後の再生計画案への同意への布石とすることが考えられます。実務上はこのような債権者集会(法的なものと区別する意味で「債権者説明会」と呼称されることもあります)が開かれることもしばしばです。
債権者集会にあたっては、再生債務者の代表者、申立代理人が出席の上、謝罪、会社の財務状況の経過及び現状、民事再生手続を選択した理由や、今後予定する再建計画の概略、民事再生手続そのものやスケジュールの説明を行います。集会に際しては民事再生申立書の添付資料等、説明に必要なものを債権者に配布するべきでしょう。