親権・監護権2|親権の変更、養育費

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親権・監護権2|親権の変更

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一旦親権者を決めた後変更することはできるでしょうか

これは可能ですが、父母2人の話合いだけで決めることはできません。父母が親権者の変更に同意していても、家庭裁判所に調停の申立てをして、調停の席できちんと決める必要があります。
家庭裁判所は、親権者を変更することが妥当かどうかについて考慮し、親権者変更が妥当であればその旨の調停を成立させることになります。
親権者変更の合意が父母の間でない場合でも、もし、親権者でない方の親など子の親族が、親権者をそのままにしておくと子の幸せのうえから不都合と思えば、親権者の変更を家庭裁判所に申立てることができます。
親権者でない方の親が親権者変更の調停を申立てる場合は、原則として相手方(親権を持っている親)の住所地の家庭裁判所、親権者変更の審判を申立てる場合は子の住所地の家庭裁判所に申立てることになります。
家庭裁判所が親権者を変更するかどうかの基準は、子の幸せのためには変更する必要があるかどうかということになりますので、離婚の際に親権者を決める場合と同様に、前記(2)の(イ)(ロ)(ハ)といった事情も考慮されることになります。
もっとも、親権者変更の場合は、それまで親権者のもとで生活しているという現状がありますので、そのような現状を変更してでも親権者を変更した方が子の幸せにつながるといった事情が必要でしょう。
なお、親権者になった方の親が死亡した場合、自動的に生存している親に親権者が変更になるわけではありませんので、生存している親が親権者変更の申立を家庭裁判所にすることが必要です。福岡高裁昭和56年6月15日決定は、このような例で、親権者であった母が死亡し、父親が子を引き取って養育していて、後見人選任の申立もなされていない場合で、父親への親権者変更が認められるべきであるとしたケースです。
(5)

子供を養育している親は、育てていない方の親に対して、どれくらいの養育費が請求できるのでしょうか

養育費の算定は、以前はいろいろな算定方式の中から裁判所が適切なものを選んでそれぞれのケースごとに算定していました。
しかし現在では、裁判所の方で養育費の算定表を作成しており、調停等に おいて大いに活用されています。
養育費算定表によれば、例えば母親が5歳と7歳の子を引き取って育てていて、母親の給与年収(源泉徴収表の支払金額)が150万円、父親の給与年収(源泉徴収表の支払金額)650万円の場合、養育費としては2人で8万円から10万円となっています。
養育費の算定表は、子供の数(1人から3人までの分があります)、年齢(0歳から14才と15歳以上の場合の区分があります)、収入(給与と自営とに区分されています)によって合計9種類の表があり、支払う方(義務者と呼ばれています)と請求する方(権利者と呼ばれています)の年収(義務者は縦軸に、権利者は横軸にとられています)のクロスするところを見ると養育費の目安(基準)がわかります。クロスするところをみると「8~10万円」などとなっていますが、より細かくみていくと、そのうちの8万円に近い方か10万円に近い方か、それともその真ん中の9万円くらいかというところまで読み取ることができます。
養育費算定表はこの言葉でインターネットでも検索できますし、養育費算定表の使い方もインターネット上に出ていますので、参考にされるといいでしょう。
以上のほか、請求すべき相手方の収入が不明の場合は、賃金センサスという統計資料で収入を推定すること、児童扶養手当は収入には加算しないこと、支払う方、支払ってもらう方に多額の負債があっても基本的には算定表の幅の中で考慮されるにとどまること、これは住宅ローンについても同様であること、支払う方が再婚して子供が生まれた場合、再婚相手が無収入であればその再婚相手と新しく生まれた子も考慮して養育費が決められること、支払いを受けるほう(例えば母)が再婚して、養育している子供が再婚相手の養子となった場合、その子の扶養義務は第一次的には養親である再婚相手となることなどがあります。
子供が4人以上の場合でも、養育費の算定方式はありますが、養育費の算定表は3人までの分しかありませんので、詳しくは家事事件に詳しい専門家に相談されるといいでしょう。
また養育費の支払いは子供が成人(20歳)になるまでとする例が多いのですが、最近では、大学進学を前提に、22歳に達したあとの3月まで(大学卒業まで)とする例も見られます。
調停や審判、判決で、つまり裁判所で決められた養育費を支払わない場合、
(イ)
家庭裁判所から支払義務者に養育費を支払うよう勧告してもらうことができます。履行勧告といっています。ただし勧告ですので、強制的に取り立てたりすることはできません。
履行勧告をしてもらっても支払わない場合、一歩進んで家庭裁判所から履行命令をしてもらうという制度もありますが、これも強制的に取り立てることはできません。
(ロ)
相手に財産(預金、給料、不動産など)があれば、差押の手続きを取ることも可能です。
給与を差押えるときは、普通は差押可能なのは給与の4分の1までですが、養育費などについては2分の1まで差押可能とされています。
また、差押は、支払いを受ける分(債権)のうち支払期限が既に来ている分(例えば、今が平成21年1月1日として、平成20年10月分から12月分までが未払いであれば、その未払い分)について差押ができるのが原則ですが、月々の支払額が決められている養育費、婚姻費用(夫婦の生活費)などについては、期限が未到来であっても債権執行を開始することができることになっています。そうでないと、期限が来るごとに、あるいは何か月分か をまとめてその都度差押をしなければならなくなり、差押をする方の手続が大変だからです。
もっとも、このような差押手続をとろうとする場合、調停等の内容が差押手続をとれるものかなど、かなりの法的判断を要求されることや、手続的に一人では難しい面もありますので、司法書士さんや弁護士さんの援助を受けた方がいいでしょう。
(ハ)
給料などの差押は、差押をすると退職したり、また現実問題として辞めるしかなくなったりして、結局、あとのことを考えるとかえって支払いを受けるのが難しくなるというようなこともないわけではありません。
そこで別の方法として、養育費を支払わない場合、養育費に加え、一種の制裁のための金銭を支払うよう裁判所から命じてもらう(これを間接強制といっています)ことも可能です。
例としては、
(a)
裁判所の定める支払期限の翌日から支払ずみまで(支払いを全て終えるまでの間)(但し180日間を限度とする)、1日につき1000円を支払えなどとしたもの(広島家裁平成19年11月22日決定)
(b)
裁判所の定める支払期限の翌日から支払ずみまで(但し175日間を限度とする)、一日につき5000円を支払えとしたもの(横浜家裁平成19年9月3日決定)
などがあります。
ただこの間接強制も、一定の金額(例えば(b)の例では一日遅れるごとに5000円)の支払を命じることによって間接的に支払を強制しようとするもので、差押のように直接取立て等できるものではありません。しかし、これも強制執行の一種であり、支払わなければならない人の生活状況等によって間接強制が認められないこともありますので、具体的にこの手続をとるとすればやはり専門家の援助を得たほうがいいでしょう。