新株予約権

会社支配権紛争の予防と解決マニュアル

第1

会社の支配権に関する会社法の基礎知識

集合写真
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新株予約権

(1)

意義

新株予約権とは、それを行使することで、会社から新株の発行や自己株式の移転を受けることができるという権利です。
新株予約権者は、定められた権利行使期間内に、一定の払込金額を支払って権利を行使し、株式を取得することができます。
新株予約権は、取締役や使用人に対するストックオプションの付与のために発行されたり、他の金融商品と結合して資金調達を多様化するために用いられます。
募集株式と同様、新株予約権の割当にも株主割当(全ての株主に対する比例的割当)と第三者割当(それ以外の割当)の2種類があります。
(2)

既存株主との関係

安価な払込金額が設定されて第三者割当がなされ、現実にその第三者が新株予約権を行使した場合、新株予約権の割当にあずかれなかった既存の株主にとって、議決権の割合の低下や株式の価値の下落という不利益を被ることは、募集株式で述べたこととほぼ共通します。
会社が特定の株主あるいはその味方をする第三者にのみ新株予約権を割当て、実際にその株主等が新株予約権を行使した場合には、当該株主側の議決権割合が増え、他の株主の議決権割合は低下しますから、新株予約権の発行も支配権の維持や奪取に大きく関わることとなります。
もっとも、募集株式の発行と同様に、新株予約権を会社支配権の道具と化し、特定あるいは少数派の株主の利益を侵害することは認められないことには注意が必要です
(3)

第三者割当の手続

公開会社の場合は、取締役会決議で募集事項を決定すれば足りるのが原則ですが、新株予約権の払込金額等が新株予約権を引き受ける第三者にとって特に有利である場合は、株主総会の特別決議で決定することが必要とされています(会社法第240条第1項、第309条第2項第6号)。そして取締役は、特に有利な払込金額等を設定して新株予約権の引受けを募集することを必要とする理由を株主総会の場で説明する義務を負います(会社法第238条第3項)。
非公開会社の場合は、募集事項を株主総会の特別決議で決定するのが原則です(会社法第238条第2項、第309条第2項第6号)。さらに払込金額等が新株予約権を引き受ける第三者にとって特に有利である場合、取締役は、特に有利な払込金額等を設定して新株予約権の引受けを募集することを必要とする理由を株主総会の場で説明する義務を負います(会社法第238条第3項)。
(4)

株主割当の手続

公開会社においては、取締役会の決議で募集事項が決定されます(会社法第241条第3項第3号)。
非公開会社においては、株主総会の特別決議で募集事項が決定されるのが原則ですが、定款の定めにより取締役会の決議に委任することが認められます(会社法第241条第3項、第309条第2項第6号)。
株主割当の場合には、第三者割当のように払込金額が有利であることによる手続的制限はありません。
(5)

差止請求

法令または定款に違反する、 もしくは著しく不公正な方法によって新株予約権の発行を行おうとする場合で、 これによって、 株主が不利益を受けるおそれがある場合には、 その株主は、 会社に対して新株予約権発行の差止請求をすることができます(会社法第247条)。募集株式発行の差止と同様の規定が設けられています。
手続上必要とされる取締役会や株主総会の特別決議を経ていなかったり(法令違反)、取締役が専ら自己の地位保全を意図して、自分を支持する特定の第三者や株主に対して大量の新株予約権を割当てる(著しく不公正な方法)場合などがあります。
差止請求は、会社がこれから新株予約権の発行を行おうするものをやめさせるもので、既に新株予約権の発行がなされてしまった後は、無効や不存在確認の訴えによることになります。
(6)

無効、不存在の訴え

新株予約権の発行がなされてしまったが、その内容や過程に瑕疵がある場合、その無効や不存在を求めて提訴することができます(会社法第828条、第829条)。これも募集株式と共通しています。
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