株式会社以外の会社(持分会社)

会社支配権紛争の予防と解決マニュアル

第1

会社の支配権に関する会社法の基礎知識

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株式会社以外の会社(持分会社)

(1)

社員の構成

会社法は、株式会社以外の会社として合名会社、合資会社、合同会社を規律し、これらを持分会社と総称しています (会社法第三編)。 持分会社は、社員同士の関係が緊密で、定款による会社の自治が大幅に認められている点に特色があります。
持分会社の社員としては、会社の債権者に対して、直接的かつ債務全額の責任を負う社員(直接無限責任社員)と、直接的ではあるものの出資の価額を限度とした責任を負う社員(直接有限責任社員)の二種類が存在します(会社法第580条)。
BがA会社に商品を売るという事例の場合、BはA社だけでなくA会社の直接無限責任社員aに対しても商品の代金全額を請求できるということになり、A会社の直接有限責任社員bに対しては、bが出資した価額の範囲内で商品の代金の請求をできるということになります。
直接無限責任社員のみで構成される会社を合名会社、直接無限責任社員と直接有限責任社員の二種類で構成される会社を合資会社、直接有限責任社員のみで構成される会社を合同会社といいます。
持分会社の社員の種別は、特に会社の債権者にとって重要な事項ですから、登記を行うことが必要とされています(会社法第912条ないし第914条)。
(2)

持分会社の組織、運営

持分会社である合名会社、合資会社、合同会社の3社について、数多くの規定が共通に適用されます。
持分会社の業務は、社員の過半数により決定し、その決定された業務については各社員が単独で執行できます(会社法第590条)。業務の監督も各社員が行い、定款で業務執行権を有しないとされた社員であっても会社の業務や財産の調査をすることができます (会社法第592条)。
社員の地位(持分)の譲渡には他の社員全員の同意が必要となりますが(会社法第585条第1項)、社員の意思による退社制度が認められています(会社法606条)。
定款については総社員の同意で変更することとなっています(会社法第637条)。
以上が原則論ですが、定款でこれと異なる定めをすることが認められているため、かかる定款規定によって、持分会社の実態に即した組織、運営がなされることになります。
持分会社には、株式会社のように、株主総会、取締役(会)、監査役(会)等の機関は存在せず、組合的な内部関係となっています。
(3)

合同会社の特質

合同会社は、直接有限責任社員のみで構成され、直接無限責任社員が存在しません。すなわち、会社債権者からみれば、直接有限責任社員に対して支払いを請求しても、その社員からは自分の出資した範囲でしか支払いませんと反論されるという事態が生じることになります。それゆえ合同会社には、特に会社の債権者を保護するための特殊な規定が設けられています。
合同会社の社員は会社設立時に出資全額を払込む必要がある(会社法第578条)とか、債権者に計算書類を閲覧させなければならない(会社法第625条)といったものです。
(4)

持分会社の支配

株式譲渡自由の原則を採用し、また株式の相続が可能な株式会社では、株式を買い集めて支配権を奪取しようという者が現れたり、相続によって株式が分散する結果、株主構成が変動して支配権紛争が生じるという事態が容易に起こります。
しかし、持分会社は、もともと密接な人的関係や信頼関係を基礎とした社員が集まって設立される会社で、社員の地位の譲渡に制限が課され、さらに社員の死亡が退社事由とされています(会社法第607条第1項第3号)。
とすれば、持分会社の支配権が問題になる場面といえば、主として会社設立後、社員間で意見の対立が発生するという場面でしょう。
前述のように、定款の定めがない場合、会社の業務は社員の過半数で決定されるので、社員間で意見が対立した場合には、どちらが過半数の社員を見方にできるかということがそのまま会社の運営に反映されることとなるでしょう。
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