各成年後見制度の活用等

成年後見実務マニュアル

第4

各成年後見制度の活用等

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具体的に成年後見制度をどのような場面において活用すると有用なのでしょうか。
まず、法定後見制度については、例えば高齢者が相続税対策の一環として所有不動産を売却する際、判断能力に疑いが持たれるような状態が典型例の1つでしょう。具体的には、近親者や専門家(弁護士・税理士・宅建士など)がその不動産売却の理由を説明し、本人が「分かった」、「売って良いですよ」と言っているとしても、本当に理解しているかどうか不安な場合があります。この様なときに、そのまま不動産売却が行われると、事後的に、本人の当該不動産売却の意思が不十分であったから売買契約は無効である、と判断される可能性(心配)が残ってしまいます。つまり、この売買契約の関係者全員にとって不安を残す結果となるのです。
このようなときに、その高齢者本人の判断能力低下の程度によって、後見、保佐、補助(開始の審判)のいずれかを家庭裁判所に申し立て、選任された後見人などに代理人として契約書の調印などを行ってもらえば、事後的に売買契約の無効が主張される心配がなくなり、関係者は安心できるのです。
また、このように具体的な取引のような目的がない場合でも、近親者が近くにいない一人暮らしの高齢者で、いわゆる悪質業者に騙されて何らかの工事名目で大金を取られてしまうなど不当な契約を結ばされてしまうようなことを想定して、法定後見制度(後見、保佐、補助のいずれか)を利用し、そのような不当な契約の取り消しができる状態にしておく、というのも有効な活用方法です。
ところで、これら法定後見制度の場合、本人が申し立てることもできますが、基本的には本人の判断能力が不十分であるために、本人が申し立てを自ら行うのは難しく、周囲の近親者がイニシアチブを取って申し立てをすることが典型的であると思われます。
そのため、判断能力が不十分となっている本人としてはよく分からないまま、必ずしも望んでいない後見人が選任される、ということもあるかと思います。
もっとも、任意後見制度を利用すると、後見人を誰にするのか、代理権の範囲をどうするのか、といった点について、本人が決めることができるため、本人が大きなイニシアチブを取り、老後の安心を確保できるようになるという利点があるといえるでしょう。
このように任意後見制度は、本人の意思の尊重をより充実させる制度といえます。この意味では、本人(被相続人)の意思を尊重して、本人の亡くなった後の財産の行方を本人自らが決める遺言制度と比較し、任意後見は生前の、(将来の)自分の生き方(判断能力が低下した場合、誰にどのように自分の代理をしてもらうか等)を本人自らが決めることができる制度と言えるでしょう。
余談になりますが、例えば不動産等、各種の多くの財産をお持ちの方は、生前・死後を含め、長いスパンでの財産管理を心配されることが多々あります。このような方は、信託契約により、財産の管理を専門家に任せるという方法もあります。
今後は、本人の判断能力が十分にあるとき(元気なうち)に、遺言とともに、積極的に任意後見制度が利用・活用されることが期待されます。信託契約を含め、遺言・任意後見等をうまく組み合わせて活用することにより、生前のライフスタイルを充実させるとともに、亡くなられた後の近親者、御相続人の不安も解消することができるのです。