調停の知識5|民事調停の申立の手続等

調停ガイド

第2

民事調停

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民事調停の申立後の手続等

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手続の概要

民事調停においては、基本的に、紛争当事者間で紛争に関しての話合いを進め、紛争の解決を図ります。この話合いで、紛争が解決した場合には、その時点で民事調停は終了します。この話合いの過程で、紛争の解決のために、専門家の判断を要する場合には、調停委員会が、官庁・公署に対して資料や調査を依頼することがあります。
また、調停委員会は、紛争当事者の各々の言い分を聞き、紛争について十分に把握できた時には、多くの場合、紛争の適切な解決案として調停案を作成して当事者に示します。
そして、当事者がその調停案に合意した場合には、調停調書が作成され、民事調停は終了します。
一方、当事者がその調停案で合意に至らないときには、調停案の修正を図り、再度当事者に示すこともあります。もっとも、紛争当事者間に合意の見込みがないような場合には、民事調停は不成立となり、民事調停は終了します。
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当事者間の話合方式

民事調停の当事者間には、感情的対立が激しく、相手方を目の前にしては冷静に話合いをすることができない場合が多々あります。そのため、調停委員会は、初めは、申立人から紛争に関する言い分を聞き、その間、相手方は待合室で待っていることになります(待合室も当事者ごとに分かれています)。
そして、調停委員会は申立人の言い分を聞き終わると、次に、もう一方当事者の言い分を聞くことになります。以上のように、民事調停においては、基本的には、紛争の相手方を目の前にして話合いをすることはなく、各々調停委員会に言い分を話すという、話合いの方式が採られています。
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調停開始の日時

民事調停の申立がなされると、その紛争に関しての調停委員会が組織されます(原則として、裁判官1名と調停委員2名から構成されます)。
この調停委員会が、民事調停を行う日を決定し、紛争の当事者それぞれに、紛争当事者の氏名、調停が行われる期日・場所、出頭義務が記載された調停期日呼出状を送付します。したがって、民事調停は、この調停期日呼出状に記載された日時に行われます。
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要する日数

民事調停は、約1か月に1回のペースで行われます。そして、民事調停を3回程度行うことにより、約7割の紛争が解決しています。したがって、通常、民事調停は、3か月程で終了しています。
もっとも、民事調停は、当事者間の話合いにより紛争を解決する制度であるため、当事者間に合意が成立しない場合には、何か月経っても紛争は解決せず、民事調停は不調として終了することになります。
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公開の有無

民事調停規則は、「調停の手続は、公開しない。」と規定しています(民事調停規則10条)。この規定は、民事調停の申立から終了までの手続が公開されないことだけではなく、民事調停の記録についても、第三者に公開されないことを意味します。
したがって、民事調停は、民事調停に関わりのない第三者には一切公開されません。
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他の裁判所への移送

移送とは、ある裁判所に生じている事件を他の裁判所に移すことをいいます。たとえば、民事調停を住所地である札幌簡易裁判所に申立てられたとします。しかし、現在は実家である那覇に住んでいるため、札幌まで行くのが非常に大変だというような場合、札幌の事件を那覇の裁判所に移送してもらって、民事調停をすることがあります。これが移送です。移送について民事調停法は、「裁判所は、その管轄に属する事件について申立を受けた場合においても、事件を処理するために適当であると認めるときは、土地管轄の規定にかかわらず、事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。」と規定しています(民事調停法4条2項)。
移送するには、申立人側の事情も考慮されるため、先の例でいうなら、申立人も現在は札幌に住んでおらず、申立人にも不利益にならないような場合であれば、民事調停が札幌以外の裁判所で行われる可能性があります。申立人も那覇に住んでいるなら、ますます移送の可能性が高まります。
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第三者が調停に立ち会える場合

民事調停は非公開ですが、第三者が調停に立ち会える場合があります。民事調停規則は、「調停委員会は、相当であると認める者の傍聴を許すことができる。」と規定しています(民事調停規則10条但書)。
「相当であると認める者」とは、具体的事案にもよりますが、民事調停に非常に密接に関係している者、当事者の精神的な支えである者等が当たります。
したがって、たとえば、紛争当事者が、成年とはいえ21歳との若年であり、冷静に話合いを行うために、両親の存在が必要であるような場合には、民事調停の調停委員会により、この息子の両親の立会が許される可能性があります。
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裁判所の関与

民事調停法は、「裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立の趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な決定をすることができる。この決定においては、金銭支払い、物の引渡しその他の財産上の給付を命ずることができる。」と規定しています(民事調停法17条)。
上記制度は、調停に代わる決定と呼ばれるものです。
したがって、民事調停において、紛争がまとまりそうもない場合で、調停に代わる決定をすることが相当であると裁判所が判断した場合には、調停に代わる決定をすることがあります。
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調停に代わる決定への不服申立方法

民事調停において、裁判所が調停に代わる決定をした場合でも、その告知の日より2週間以内に異議を申立てることにより、その決定の効力を失わせることができます。
異議の申立は書面でも口頭でも可能ですが、口頭で異議の申立をする場合には、その事件の担当の裁判所書記官の面前で異議を申立て、調書を作成してもらう必要があります。

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