相続税軽減の基本と目的、 目標

相続税軽減マニュアル

第1 相続税軽減のすすめ方

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1 相続税軽減の基本と目的、 目標

(1)相続税軽減の基本

(イ)相続税軽減の目的

相続税軽減の目的は、次の世代に、質の高い良い財産をより多く承継させ、次の世代の繁栄、幸福を図ることにあります。このためには、相続税を軽減することと同時に、財産をふやすことが必要であり、しかも、質の高い良い財産をふやすことが重要です。

(ロ)相続税軽減の目的達成のための基本方針

この明確な目的を達成するために、基本的な方針としておさえておくべき項目は(a)相続税額の軽減、(b)財産の運用効率の向上、(c)キャッシュフローの計画と改善、(d)安全性、(e)合法性の五つです。

(a)相続税額の軽減

相続税軽減の目的である質の高い財産をより多く承継させるためには、負の財産である相続税を軽減することが必須です。
相続税額算出の基になる財産の評価額は、相続税法、財産評価基本通達、相続税財産評価関係個別通達に従って評価されます。 相続税額を減らすということは、この評価方法を活用し、同じ財産価値のあるものを、相続税評価のより低い財産に組み替えることを意味します。

(b)財産の運用効率の向上

相続税軽減の目的の一つである質の高い財産をふやすためには、個々の財産の運用効率を高めることが重要となります。
相続税軽減は、時間の経過を概念として含むものですので、所有財産の同一種類のままでの運用効率の向上を図るとともに、財産の他の種類への組み替えを行うことでの運用効率の向上も可能です。 低収益の貸地や貸家を売却し、高収益のマンションに買換を行うことなどがその例です。
財産の運用効率を高めておくことは、納税対策としても重要です。 相続財産が十分な収益を生んでおり、その蓄積の結果としての金融資産での現金納付や、又は収益による延納が可能であれば、相続税納税はクリアーできます。

(c)キャッシュフローの計画と改善

相続税軽減の一側面は、企業経営と同一と把えられます。 企業も経営状態をキャッシュフローで把え、キャッシュフローをより円滑で効率的なものにすることが求められていますが、資産家の方々の相続税軽減も同様と考えられます。
現状での毎年の収入と費用、借入金の返済、税金などを差引いた資金余剰がどれだけあり、これを改善するにはどうしたらよいかを検討し、計画し、今後予想される大きな支出を予想し、これに備えることを時系列で検討することが重要です。 このなかで最大の支出が相続税の納税と予想されますので、その金額を予想するとともに、キャッシュフロー計画の中で解決の方法を検討しておくことが重要です。

(d)安全性

相続税軽減は、安全性を十分に検討して実行することが重要です。できる限りリスクの予想される方法は避けるべきですが、万一リスクのある方法を採る場合でも、損害額等を試算し、全体の財産や収益で吸収できる許容範囲内で行うべきと考えられます。

(e)合法性

相続税軽減は、相続税法をはじめとする諸法令に違反することなく、合法的に行うことが必要です。 脱税行為を行うと、加算税、延滞税などの追徴課税が生じますし、刑事上の問題になることもあります。 国税当局の調査能力は非常に高いので、決して違法性を有する対策を採用すべきではありません。 あくまでも法制度に認められた範囲内での対策を行うべきです。
合法的な相続税対策を検討する上で、納税者に有利な項目に着目し、積極的にそれを取り入れてゆくことも重要なポイントといえます。

(2)相続税軽減の目標

相続税軽減の目的が、次の世代に質の高い良い財産をより多く承継させることにありますので、その目的を達成するために必要な相続税軽減の目標は下記の四つに集約されることとなります。

(イ)相続税額の軽減を図る
(ロ)相続財産の質を高める
(ハ)相続税が容易に納税できるようにする
(ニ)円滑な遺産分割が可能となるようにする

(イ)相続税額の軽減を図る

持ち続けて残したい質の高い財産を増やしつつ、なお且つ、相続税額を軽減することが重要です。
また、生前に財産を相続人に移転し、相続財産としない工夫も重要です。

(ロ)相続財産の質を高める

各種の財産のうち、通常持ち続けて残したい財産の例としては、次のようなものがあります。

・金融資産
・自宅
・同族会社株式
・有効活用された不動産
・有効活用可能な不動産

逆に、持ち続けたくない財産の例としては、次のようなものがあります。

・低収益の貸地
・低収益の貸家建付地
・土地の形状、面積、接道、立地の関係で有効活用が難しい不動産

相続財産の質を高めるとは、持ち続けて残したい財産をさらに増やし、持ち続けたくない財産を極力減らすことということができます。

(ハ)相続税が容易に納税できるようにする

金融資産で相続税を納税できる状態がベストです。 又、物納制度の活用も図ります。 このための方法として、キャッシュフローの計画をたて、相続財産が十分な収益を生み、その蓄積の結果としての金融資産で現金納付が可能となるよう、対策をすすめてゆくことが重要です。 この他、生命保険を活用することや、貸地等の物納が可能となるよう、その条件整備を行うことも重要です。

(ニ)円滑な遺産分割が可能となるようにする

財産は、相続により次の世代に移転されますが、相続人のそれぞれ立場や経済状況、被相続人との過去の関係、相続人間の過去の関係、価値観の違いがあり、円滑な遺産分割が必ずしも相続人間で出来るとは限りません。
このため、被相続人が生前に、最終的な遺産分割の内容を予め定めておき、その考えに沿った対策を実行し、遺言書を作成することが大切です。
財産の種類によっては、自宅敷地のように収益は生まないが、相続税がかかる財産や、同族会社株式のように、相続税がかかるが、第三者への処分ができない財産もありますので、納税方法も十分に考慮したうえで遺言を作成することが重要です。