土地の明け渡しができる場合と明け渡しの方法4

貸地・貸家明け渡しガイド

土地の明け渡しができる場合と明け渡しの方法

(2)

借地法の適用がある貸地の明け渡しとその方法(続き)

(ロ)

借地契約の存続期間が満了した場合の貸地の明け渡しとその方法(続き)

(c)
更新拒絶 (借地法4条) または異議 (借地法6条) のために 「正当事由」 が存在すること
1)
平成4年7月31日までに設定された借地権には、借地法4条、同法6条の規定が適用されます。
借地法4条、同法6条によると、貸主の更新拒絶または異議は、「土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由」 に基づくことが必要であるとされています。
2)
ところで、借地借家法 (平成4年8月1日から施行) 5条1項、2項では、
「借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、 建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。」 (1項)
「借地権の存続間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、 建物がある場合に限り、前項と同様とする。」 (2項)
と規定され、同法6条では、
「前条の異議は、借地権設定者及び借地権者 (転借地権者を含む。以下この条において同じ。) が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明け渡しの条件として又は土地の明け渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合における申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、 述べることができない。」
と規定されています。
イ.
「借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情」
ロ.
「借地に関する従前の経過」
ハ.
「土地の利用状況」
ニ.
「借地権設定者が土地明渡後の条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出」 等
正当事由の有無を判断するにあたって考慮すべき事項が明文化されました。
この規定は、平成4年7月31日以前に成立した借地権には適用されないものとされています。しかし、前記借地借家法6条で列挙されているイ.ないしニ.の事由は、これまでの裁判例で採用されてきた正当事由の判断基準を明文化したものです。したがって借地借家法6条の規定は、平成4年7月31日以前に契約された借地につき、その明け渡しの正当事由の有無の判断に際し、実務上大きな影響を与えるものとなっています。
3)
借地法の適用を受ける借地につき、その明け渡しの正当事由要素としては、 以下のものがあります。
イ.
土地使用の必要性
貸主の使用の必要性が高いのに対し、借地人の使用の必要性が低い場合には、 明渡料の提供なしに正当事由が認められる可能性は極めて高いといえます。
また、 借地人が借地上の建物を使用していない場合や借地の一部を空き地としている場合にその空き地部分について、いずれも正当事由が認められる可能性は極めて高いといえます。
ロ.
土地の有効利用の必要性と有効利用の具体的計画
有効利用の必要性と有効利用の具体的計画がある場合においては、下記ハ.ないしヘ.の正当事由要素 (とくに明渡料の提供) によって正当事由が認められる可能性は高いといえます。
対象土地が都市計画上容積率500%の防火地域内にあって、その周辺では近時土地利用の高度化が進み、中高層のマンション等が建てられているという状況で、貸主は対象土地を利用して五階建マンションの建築を計画し、 また、対象土地上の建物は使用に耐えないというほどではないが、全体として相当に疲弊した状態にあるというケースで、裁判所は、「原告側の本件土地のより高度な利用を図りたいとの事情は、その地域性からしても社会経済上の利益に合致するものというべきところ、被告側には現状を維持することにそう大きな利益があるとは言い難い情況にあるものといわざるを得ず、右双方の事情を彼此勘案するときは、老境にある被告の本件建物から離れ難いとの心境はそれとして理解し得ないではないが、原告側の社会経済上の利益にその座を譲らざるを得ないものというべき」 として、地域性を重視して土地の高度な利用を優先させて明渡請求を認容した判例 (東京地判昭61.1.28判時1208号95頁) など、有効利用の必要性を理由に明渡請求を認めた判例は多数あります。
福岡高裁昭和54年12月20日判決 (判時960号58頁) も、借地周辺の開発や市街化に伴い老朽建物を近代的な高層建築物に建て替えるため、借地契約の期間満了を待って土地明け渡しを請求したケースで、対象土地の利用度の低い借主には無条件で、利用度の高い借主に対しては200万円あるいは180万円の明渡料の提供を条件に明渡請求を認めました。
ハ.
土地の利用状況
a.
借地上の建物の種類、用途 (居住用建物か事業用建物か等)
b.
借地上の建物の構造、規模 (建物が低層か高層か)
c.
借地上の建物の面積 (土地面積のなかで建物の建て坪がどの位占めているか)
なども正当事由の要素となります。
ニ.
建物の老朽度
借地上の建物が老朽化している場合には正当事由が認められることが多いと言えます。
例えば、借地上に木造の建物が存在しており、その建物は木造バラック造 りで当初賃貸期限の終了するころには朽廃する程度のものであったというケースで、裁判所は 「被告は借地の始めにおいてその期間を20年と予想していたものであり、然も借地期間中の増改築を別にして考えると、地上の建物は当初の借地期限のころに概ね朽廃する運命にあるとして、明渡料として借地権価格の約1.5割に相当する金150万円の支払いを条件に正当事由を認めました (大阪地判昭50.3.28判時785号90頁)。
ホ.
従前の経過
a.
権利金、更新料等の支払いの有無
権利金の支払いがなかったことは、正当事由のプラス要素として考慮されます。
b.
借地権設定時から現在までの期間の長短
借地人が長期間借地を利用していることは、正当事由のマイナス要素と評価する判例があります。
c.
借地権設定時の事情
不法占拠が先行したり、借地人の懇願を断りきれずに貸したという事情は、正当事由のプラス要素となります。
d.
賃料額の相当性
賃料額が長期間低廉に推移したことは、正当事由のプラス要素となります。e.貸主に対する嫌がらせ等の不信行為
これらの行為は、正当事由のプラス要素になります。
e.
貸主に対する嫌がらせ等の不信行為
これらの行為は、正当事由のプラス要素になります。
ヘ.
財産上の給付
a.
明渡料の提供
b.
代替土地、 建物の提供
借地人が対象物件を明け渡しても、他に移転先が存在しているという場合や、賃貸人の方から明渡請求に際して対象物件に代わる代替不動産を提供した場合には、正当事由が認められやすくなります。