土地賃貸借契約の終了1

貸地・貸家明け渡しガイド

貸地・貸家明け渡しの疑問を解決するQ&Aをご紹介します。このページでは、土地賃貸借契約の終了に関する質問を集めました。ぜひ参考にしてください。

土地賃貸借契約の終了

(1)

土地賃貸借契約の終了事由

Q:
土地賃貸借契約の終了事由としては、どのような事由があるのでしょうか?
A:
土地賃貸借契約が終了する場合としては、下記(1)から(4)があります。
(1)
賃貸借契約の合意解約
合意解約とは、貸主と借主の話し合いにより、土地の賃貸借契約を終了させることをいいます。
(2)
賃貸借契約の解除
解除とは、賃貸借契約の一方当事者が契約又は法律の規定によって、既に有効に成立した賃貸借契約の効力を将来に向かって消滅させることをいいます。解除権には、大別して二つの種類があり、契約によって生ずる解除権(約定解除権)と法律の規定によって生ずる解除権(法定解除権)があります。
法定解除権には、すべての契約関係に適用される債務不履行による解除権 (民法541条以下)と個々の規定で定められている個別的な解除権があります。
(3)
賃貸借契約の更新拒絶
更新拒絶とは、土地の賃貸借契約で期間の定めがある場合に、期間が満了したときに貸主が借主に対し賃貸借契約の更新をしない旨の意思表示をすることによって、契約を終了させるものです。
(4)
賃貸借契約の解約申入れ
解約申入れとは、土地の賃貸借契約で期間の定めがない場合に、賃貸借契約の一方当事者が意思表示により賃貸借契約を終了させるものです。
(2)

法定解除

(イ)

法定解除とは

Q:
土地賃貸借契約の終了事由としては、どのような事由があるのでしょうか?借地に賃貸借契約上の義務に違反がある場合の賃貸借契約の終了方法について教えてください。
A:
民法は、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」と規定しています(民法541条)。
したがって、賃料不払い、用法違反、保管義務違反等の債務不履行ないし契約上の義務違反があれば、民法541条により貸主は賃貸借契約を解除することができます。 ただし、判例は、賃借人の債務不履行ないし契約上の義務違反が貸主と借主の「信頼関係」の破壊にある場合に限って解除を認めるとの理論で解除権に一定の制約を加えています。
(ロ)

地代不払い

Q:
土地賃貸借契約において、地代不払いがあった場合には、賃貸借契約を解除することができますか?
A:
借地人が地代を滞納しているときは、貸主は賃貸借契約を解除できます。
ただし、1回の賃料不払いによりすぐさま賃貸借契約を解除することができるわけではなく、賃料不払いによって賃貸人との間の信頼関係を破壊するに至った場合でなければ、解除は認められません。
いかなる場合に信頼関係を破壊するといえるかどうかについては、賃料不払いの回数だけでなく、不払いの額、賃借人側の態度、賃貸人側の態度などの諸事情が判断の資料となります。
6か月程度の賃料の滞納があれば、よほど特殊な事情でもない限り解除は認められます。なお、2か月分の不払いでも解除を認めた判例もあります。
(ハ)

地代不払いの場合の解除手続

Q:
賃貸借契約を地代不払いにより解除する場合の手続きを教えてください。
A:
賃借人に信頼関係を破壊するに足る地代の不払いがある場合、賃貸人は相当の期間を定めて滞納した地代を支払うよう催告したうえで、賃借人がその期間内に地代を支払わない場合に契約を解除することができます。
履行の催告には相当の期間を定めて行なう必要がありますが、地代不払いでは1週間ないし10日もあれば社会通念上相当な催告期間ということがいえます。
なお、不相当な期間または期間の定めのない催告でも、催告後相当期間が経過すれば契約を解除することができます。
(ニ)

賃借権の無断転貸・譲渡

Q:
賃貸人に無断で賃借権の譲渡や転貸がなされた場合、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができますか?
A:
民法上の規定
民法は、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と規定し(民法612条1項)、この規定に「違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」と規定しています(同条2項)。
したがって、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに第三者に賃借権を譲渡したり、賃借物を転貸した場合には、賃貸人は賃貸借契約を解除することができます。
背信行為
無断譲渡・転貸にあたる場合であっても、賃貸人に特に不利益を与えることもない一定の場合、つまり背信行為(信頼関係を破壊する行為)と認めるに足らない特別の事情がある場合には解除は認められません。
判例上、背信行為に当たらないとされた事例としては、
(1)
建物とその敷地の賃借権の共同相続人の一部が他の共同相続人からそれらの持分の譲渡を受けた場合
(2)
土地賃借人がその所有建物を子供との共有にしたのに伴って、賃借権の持分の譲渡が生じた場合
(3)
土地賃借人の内縁の妻が夫の死亡後その相続人から建物の譲渡とともに賃借権の譲渡を受けた場合
(4)
土地賃借人が借地上に所有する建物と建物の敷地賃借権を同居の孫に贈与した場合
等があります。
(ホ)

賃借権の無断転貸・譲渡の場合の解除手続

Q:
賃貸人に無断で賃借権の譲渡や転貸を原因として、賃貸借契約を解除する場合の手続きを教えてください。
A:
解除の方法については、地代の不払いの場合とは異なり、催告を要することなく直ちに解除の意思表示をすることができます。この場合、後の紛争を防止するために、解除の意思表示は内容証明郵便によるべきです。
なお、この解除権については、民法167条1項 (債権の消滅時効の規定)が適用され、無断譲渡・無断転貸による当該土地の使用収益が開始されたときから10年を経過したときは時効によって消滅します。
したがって、無断譲渡・無断転貸の事実に気づかずに10年間経過してしまうと、もはや解除ができなくなりますので注意して下さい。
(ヘ)

無断増改築

Q:
借地人が建物を無断増改築した場合、賃貸人は土地賃貸借契約を解除することができますか?
A:
借地人が借地上の建物を増改築しても、借地人が所有する建物に対する変更ですから、無断増改築禁止の特約がないかぎり、適法な行為といえます。この点では、借家人が借家を無断で増改築することは、貸主の所有家屋に変更を加える行為ですから、当然に用法違反・保管義務違反の違法行為になるのと対照的であるといえます。
借地契約において無断増改築禁止の特約がある場合に、借地人が無断で増改築の行為をすれば、特約違反として借地契約の解除原因になります。
なお、無断増改築禁止の特約の効力について、最高裁判所は、「増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、賃貸人が無断増改築禁止特約に基づき解除権を行使することは、信義則上許されない」(最判昭41.4.21民集20巻4号720頁)と判示しています。したがって、借主が無断増改築禁止特約に違反したとしても、常に解除できるとは限りません。
(ト)

用法違反

Q:
土地の賃借人が、賃貸借契約で定めた目的以外の目的で土地を利用している場合、賃貸人は土地賃貸借契約を解除することができますか?
A:
賃借人の用法違反
賃借人は賃貸借契約で定められた用法にしたがって借地を使用収益すべき義務があります(民法616条、同法594条1項)。
したがって、賃借人に用法違反があれば、これを理由に賃貸人は賃貸借契約を解除することができます。
用法違反の具体例
賃借人の用法違反により、賃貸借契約の解除が認められた具体例として、下記(1)から(4)があります。
(1)
非堅固建物所有目的の土地賃貸借契約において、賃借人が軽量鉄骨造プレハブ建築の建物を建築する特約に反して堅固建物を建築した場合(東京地判平元.12.27判時1361号64頁)
(2)
非堅固建物所有を目的とする土地賃貸借において木造建物の基礎をなす鉄筋コンクリート製地下室を築造した場合(東京高判昭51.3.30判時813号38頁)
(3)
用法がバラック等の仮建築物を所有する目的であるにもかかわらず、本建築した場合
(4)
土地賃借人が借地に隣接する賃貸人所有地に越境建築した場合(最判昭38.9.27民集17巻8号1069頁)
(チ)

保管義務違反

Q:
借地人が賃借物(土地)の保管義務に違反した場合、賃貸人は土地賃貸借契約を解除することができますか?
A:
借地人は賃借物の引渡を受けた後、返還をなすまで賃借物を善良な管理者の注意をもって保管する義務があります (民法400条)。
したがって、賃借人が上記保管義務に違反した場合には、賃貸人は契約を解除することができます。
例えば、土地を掘削するなどして土地の形状を著しく変更する場合には、保管義務違反を理由に契約を解除することができます。
(リ)

信頼関係破壊

Q:
賃貸借契約において、賃借人に直接の契約違反はないものの、賃借人との関係から賃貸借契約を継続することが困難な場合、賃貸借契約を解除することはできないでしょうか?
A:
信頼関係破壊
借地人の賃借物に関する直接の契約違反はないが、賃貸人に対する円満な関係に破綻が生じた場合にも契約の解除が認められるケースがあります。
信頼関係破壊の具体例
賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたことを理由として、賃貸借契約の解除が認められた具体例として、下記(1)から(4)があります。
(1)
借地人が賃貸人に対し侮辱的言動をした場合(東京地判昭37.4.26判時312号31頁)
(2)
借地人が土地賃貸借契約書を偽造した場合(東京地判昭47.3.23判時675号62頁)
(3)
借地人が賃貸人の所有地を先代から買い受けたとして取得登記をなし所有権取得を仮装した場合(福岡地小倉支判昭50.7.30判タ332号328頁)
(4)
賃料増額請求に対し借地人として信義に従い誠実に対処しなかった場合(東京地判昭52.10.31判時893号55頁)
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